都の角
全27部分です。お付き合いよろしくお願いします。
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玄将の部下は、寝処に囮の者を用意し、罠を仕掛けていた。
月が早々に沈んだ夜半、五里は村中を走り回った。
かつては都だっただけに、大きな屋敷はいくつもあった。
しかし、どこも下人らしき者しかおらず、火も点けられていない。
その中に一つだけ、賑やかなところがあった。
遠巻きに見ると、門前には武士が二人、槍を手にして立っている。
五里は裏手の柵を越えて中に入った。
大層な庭には白石が敷き詰められ、月が無くとも黒い体でも目立ってしまう。踏めばなおさら、足音で気を引くだろう。
塀沿いを歩いて進むと、四方を武士が護っている部屋があった。
いかにも、ここにいるぞと言いたげではあるが、五里は迷い無く近づいた。
五里は一人の武士の目の前に急に現れ、殴りかかった。
山賊から聞いたとおりならば、武士を相手に手加減はできない。しかし、
「お、鬼だー!」
木刀を投げ捨てて、泣きながらその者は一目散に逃げていった。鬼の出現を想定していたとはいえ、実際に面すると、本当に怖かったのだ。
その者は武士ではなく、庶民だったが、五里にはわからなかった。
殺す気で拳を振ったのに避けられ、更には大声を出されたので、五里は少し焦った。
障子を打ち払い、部屋に入ると、布団の上で腰を抜かしている男がいた。
「お前が源玄将か?」
「い、いかにも。誰だ?」
「泣いて謝れ!」
目前まで駆け寄ったとき、勢いよく畳が跳ね上がり、五里を挟んだ。
本物の武士が現れて取り囲み、素早く縄で締め上げた。
五里は暴れることもできず、その場に倒れた。
「本当に鬼だ」
「玄将さまがどんな悪事を働かれたというのか」
武士たちは五里を畳で挟んだまま庭に出し、動けないように岩を乗せた。
見張りを二人立てて、他の者は安心して眠りについた。
五里はどうすることもできず、そのまま眠りに落ちた。
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