黒きに白い黒
全27部分です。お付き合いよろしくお願いします。
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隣の小屋のほうに、野犬が集まっており、その輪の中には人影があった。
「だぁあああ!!」
「うぉおおお!」
「死にたくなけりゃ去りやがれ!!」
男たちが叫びながら勢いよく走っていくと、野犬たちは二度三度吠えて逃げていった。
「おい!出るなと言っただろう」
「食われちまうぞ!」
近寄って見ると、手足を縛られ、口枷と目隠しをされた女が膝をついていた。
月明かりしかないが、女が震えているのが五里にはわかった。目もとは見えないが、泣いていることもわかった。
五里は、男の頭を後ろから力いっぱい殴り、次いでもう一人の片膝を前から後ろにへし折った。
一人は静かに、もう一人は悲鳴を挙げて崩れ落ちた。
「お、おぅい!?」
残りの一人は刀を構えたので、そのままの勢いでは飛びかからなかった。
「何するんだ、このガキ!」
五里は女と男の間に入った。女は怯えて固まっている。
「いったい何者だ。よくも俺の仲間を」
「よくも!?よくも俺のおっかさんを!!」
「ガキもしかして、ワシが売った女の倅か!?はっはっー。なんという因果か!」
男はなぜか、とても嬉しそうな顔をしている。
「刀を取れ。何年ぶりだ?楽しい、楽しいぞ!」
死んだ男の刀を拾い、五里はそれを男に投げつけた。
「うりゃー!」
刀を躱した男に向かって突進したが、簡単に避けられてしまった。
「もらった!」
男の一振りは、五里の脇腹に入った。
「なに!?」
刀は砕け落ちた。
振り返った五里は男の腕を掴み、握りしめた。
「ぎゃぁあああ!」
萎れて伸びた腕を押さえながら、男は悶え、のたうち回っている。
五里は女に近づき、足と腕を縛る縄を解いてやった。
「見ちゃいけないよ。見ちゃいけない。見たら殺すからね。まっすぐ歩いてそのまま逃げるんだぞ」
五里は女の後ろに回って、口枷と目隠しを外してやった。
「ありがとうございます。ありがとうございます」
女は泣きながら、五里の言ったとおりに逃げて行った。
二人の男は、まだ這いつくばって悶えている。
五里は男の頭を持ち上げた。
「源玄将はどこにいる?」
「知るかぁ」
「源玄将はどこにいる?」
「知るかぁ!」
五里は頭をゆっくりと握りつぶした。
もう一人の男に近づいた。
「ひぃっ!へっ!ぎゃあ」
目から鼻から滴らせ、じたばたできずに肩で息をしている。
「源玄将はどこにいる?」
「ばけもの、ばけもの」
五里は顔を近づけた。真っ黒な左目は、瞳が白く光っていた。
「都っ。京っ。京!きょーう!きょうきょうきょうきょっ」
五里は血を浴びた。
五里は来た道を戻っていった。再び京の都を目指す。
左腕を隠すことなく、浴びた血を滴らせ、何も考えずに歩いた。その足は、膝下まで黒くなっていた。
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