遭遇
隆太は、街道に出られたことにほっとしながらも、まだ町や村といったものは見えないため、地面に表示された矢印に従い少し早いペースで森の中の街道を進んでいった。
陽が傾き始めたころ、少し先の森の中から悲鳴が聞こえた為、音をたてないように悲鳴の聞こえて来た方へ進むと、ゴブリンと表示された緑色の肌の小汚い生き物が4匹、ゲヒャヒャヒャと不気味に笑いながらボロボロの斧や剣を構えながら、女性を囲んでいた。
女性は、ゴブリンが近づいてこないように、折れた剣を振り回しているが、かなり疲労しているらしく、今にも倒れそうだった。
隆太は、助けに入りたいが、相手は刃物を持っている為、どうしようか考えていると、魂武器を顕現させますかとナビゲーションから表示されたので、即座にYESと答える。
その瞬間、手に熱を感じ刀が現れ使い方が体に浸み込むように伝わってくる。
刀を数回振ると、隆太は、雄叫びを上げながら、ゴブリンたちの中心にいた女性をかばうように飛び込み、一瞬で4匹のゴブリンの首を刎ねるのだった。
ゴブリンたちは、何が起きたのかわからないのか、目を見開いたまま空気に溶けるように粒子になって消えていった。
消えた後には、1000円硬貨4枚のお金と、ゴブリンのイラストの入ったカードが4枚、身に着けていた武器や防具が残っていた。
女性は、気が抜けたのかゴブリンが消えていくのを見て、気を失ってしまった。
隆太は、とりあえず女性を木の陰に移し、状態を確認すると、左の二の腕に斬られた痕があり、まだ出血しているようだったので、持っていた肩掛けバッグからタオルを出し、止血をしておいた。
そのあと、ゴブリンが消えた際に落ちていたドロップ品を回収し、周囲の確認をしていると、女性のものなのかテントを畳んで括り付けられた大きめのリュックが落ちていたのでそれも回収しておいた。
陽が完全に落ちそうな時間まで、目が覚めるのを待っていたが、目覚めないため、先ほどのテントを組み立て中に女性を寝かせ、外で枯れ枝を集め焚火をしながら、付近に敵がいないか考えると、今のところいないと表示されたので、ほっと一息つきながら、他の疑問を確認し始めた。