No009 アイリの野望、内政編 「新事業」 キヨス設立完了。いろんなことをやってみる。4歳3月~6月
アイリが、ここに来てからもう3か月がたった。
自由貿易郷は、アイリの独断で「キヨス郷」と命名された。
いつの間にかすでに定住者が大勢いる。
この3か月でアイリは次々と新しい政策を打ち出した。
大量の物資移動のために、この地で運搬に多く使用される牛車が行き来している。
交通院に話して休憩所や宿場、港に牛舎を併設するように指示した。
街道に、牛車が通る道の他に歩行者用の道の設置も追加依頼した。
この国は、馬の用途は少なく、人の移動に使われる程度だったりする。
農耕も運搬も牛を使う、牛は走り回る必要がないから狭い牛舎でも問題ない。
さらに、牛は皮にも肉にもなるから非常に多く飼われている。
海路や川を使った水路を作る指示をして、船での運搬が便利になるようにした。
アイリは、運搬の支援事業として運輸公舎を作った。
牛、牛車、船の貸し出しを行い、管理する。アイリの直営企業だ。
もちろん賃借料を取るのだが、便利だと言って利用が増加している。
牛、牛車、船の貸し出し場所を北区に作った。
申し訳ない程度に馬と馬車の用意もしてある。
北区まで水路が引かれ、川を利用して木材が運ばれるようになった。
これによって、更に運搬量が増えて資材の大量投入が可能になるはずだ。
造船業も活発になり、船大工なども移住してきた。
南の海港は、かなり大きな船でも就航できるように拡張しておく。
漁業の人の迷惑にならないように、漁港と分けておくようにした。
キヨス中心街への移住者だけでなく港や宿場にも人が生活できるようになった。
港町や宿場町など、まるで衛星都市である。
あちらこちらに宿屋が作られ、旅人もやってくるようになった。
アイリは、北区と南区の居住区に公舎住宅を設営する。
公舎住宅は平屋の長屋仕様だ。アイリ曰く「ワンルームマンション」である。
1戸建ての貸家も作った。これらは土地込みで建物ごと賃借する。
貸家公舎を作り、家の貸し出しや公舎住宅を管理させる。
また、湯屋公舎を設営し、居住区に湯屋を建設した。
個室の貸し出し風呂屋だ。
お湯を入れるのは重労働なので、井戸と沸かし場を作り
自分でお湯を入れて入れるようにしてある。
手間がかかる割に結構割高な設定をした。
にもかかわらず
お湯につかる経験のない人々なのに、利用者にはかなり好評だった。
特に労働者の常連が多い。
これらもアイリの直営企業だ。
移動を楽にするため、地理公舎を作り、地図の作成を指示した。
人が集まれば、人材も豊富になる。地図を作って販売する。
現時点では赤字覚悟だが、将来はなんとか稼げるだろう。
これもアイリの地理情報取得を兼ねた直営企業とした。
アイリの鑑定と人物事典コンボは人材活用には、無敵に等しい。
優秀な人材をどんどん採用して仕事を割り振っていった。
郡内だけでお金が回るから、資金の投入もしやすかった。
アイリは、
「経済の活性化は人を集め、お金を回すこと」だと部下に言っている。
アイリ直営公舎は、経済の潤滑剤でもあるようだ。
懸案だった絣織の布製品も完成した。
東区に工舎を作り、力仕事に向かない女性を登用した。
紡績工舎、染色工舎、織物工舎、縫製工舎
これらはいわゆる工場である。
絹のほうも進めないと・・・桑畑はいくらでもあるけど蚕が大変なんだよね。
この工舎は、すべてアイリの直営工場である。
「新しい事業を打ち出し、雇用を生むことは大切」だそうだ。
生産に女性雇用が生まれることで、家族揃って稼ぐ人が増えた。
建設ラッシュが一段落したら木材を使って紙の工舎を作ろう。
本もほしいけど、最終的に目指すのは紙幣だ。
紙幣管理するなら銀行も作らなきゃ。
アイリの野望は大きい。
忙しい日々の中、やがて目標の6か月目が来ようとしていた。
その間でもアイリの政策は続いていた。
野菜市場、魚市場、家畜市場、食肉市場、材木市場、石材市場など
市場の作成を行い開放した。
商人は遠くまで行かなくてもこの市場で仕入れて自分の商店や露店で販売できる。
生産業者は、ここに持ってくるだけでお金になる。
行商のスタイルから定置売買のスタイルに大きく変わっていった。
ここなら大量に持ち込んでも売れ残る心配もほとんどない。
自分で売り込み歩く面倒もないし、生産者側にもかなり好評だった。
市場ができてしばらくすると質の向上が図られた。
より価値の高いものは高く売れるからだ。
アイリの直轄領内にお金が回りだしたことにより
より良いものを買おうとする風潮が出始めたのもある。
これにより、それぞれの業者がより一層考え、努力する傾向になるだろう。
アイリはこの傾向を読み取ると
農林水産省である生産院に研究部署を作った。
より大量に、より質の良いものを作るためにどうしたらいいのか研究し
それを生産業者に学ばせるためでもある。
品種改良の先駆けにもなるだろう。
使用する道具の技術を上げることで可能になることもある。
技術院に農業、林業、漁業、製材業者の道具の改善を命じた。
同時に、居住区内の生活道具も改善してもらう。
もちろんアイリの持つ知識を導入した。
技術院に職人ギルド的な役割を持たせて、東区の鍛冶職人に依頼を出させた。
これで鍛冶職人の技術力向上にもつながるだろう。
「付加価値を覚え始めたということは嗜好品にもブームが来るかな。」
絣織もそうだけど、装飾品とかも考えてみようかな。
前オタク歴女、現幼女と言っても、やはり女性視点はある。
女性にお金を稼がせる工舎をもっと増やせば女性の消費者が増える。
服飾産業だけでなく装飾産業にも手を広げよう。
後は、女性職場と言えば子供対策だよね。
子持ちの女性も仕事に使っちゃおう。
託児所と幼年教室を工舎脇に設営しよう。
アイリは思いつくと即実行するタイプだ。
これは直ちに実行され、女性が働く職場が増え、働く女性も増えた。
託児所は保育園で3歳以下の子を預かる。
幼年教室は4歳から7歳を対象として預かり基礎教育をする。
この国は、7歳を超えると親の手伝いをして実務を学び、
10歳以上は奉公に出る。
7歳までは家庭で親から文字や算術を学ぶという仕組みを考慮した。
これにより、子持ち女性も気兼ねなく働けるだろう。
託児所や幼年教室自体が女性職場でもある。
幼年教室は、そのうち学校にしていきたい。
ただ、現時点では親の代わりに文字と簡単な算術を教えるだけにした。
それは、教本がないこと、教育者の教育がないことなどがあるからだ。
まだ時間はかかるだろう。
「とりあえず、教育院でも作っておきましょ。」
これは、文部科学省だ。6個目の行政管轄院を作ることにした。
教育制度の確立、教員の教育、教材の確保などなど課題は多い。
「うーん、やっぱり紙はいるよね。早く紙工舎作らないと・・ふぅ」
内心焦り気味のアイリであった。
予想より人が多く集まる。開発途中なので労働者が多い。
子供たちの様子も見た。気になる点が目立つ。怪我人が多い・・。
アイリは、病院である治療院を設立した。
今のところ病気の心配はしていないが、人が増えれば疫病は危険だ。
ここは間違いなく人口密度が高くなる。
治療院は、今までの医療の概念を破る。
アイリの前世記憶を総動員した治療術を医療技術として定着させる。
医者の教育、薬の概念と適応量、薬材の流通など
思いつくすべての支援も行った。
これもアイリ直轄公舎が運営する。
そして、目標の6か月目となり、キヨス郷の設立完了宣言が出された。
国内各地にいる諜報院メンバーの手も借りて、領外にも宣伝される。
単に噂を広げただけだが・・。
周辺だけでなく遠くの地からも人はやってくるようになるだろう。
他領では戦争しているところもある。
隣には反カザマ家勢力の豪族も残っている。
アイリは一区切りついでに技術院を通して鍛冶職人に依頼を出す。
「武器、防具の試作をお願いします。」
依頼を出すと同時に防衛院の設立の宣言をした。
これは防衛省である。7つ目の行政管轄院となる。
これから先は、もっと資材と人材が集まる場所ができて、お金も回るようになる。
準備はしておくに限る。
「この領地の平和を守るためにも・・・。」
内政政策の完了予定は、2年だと想定している。
残り1年半。
既に成果が見えているとはいえ、まだ始まったばかりだ。
課題も多くある。
今のところこの領に対する不穏な情報は諜報院からきていない。
しかし、内政政策と並行して強兵政策にも手を打っておこう。
アイリ、今だ4歳
夏が始まろうとするこの時期、梅雨になる。