No006 アイリの野望、内政編 「行政改革」 新組織を作り、行政改革を始める。3歳10月
ここから内政のターンになります。
さてアイリの政策とは・・。
新政策を実行するためには、まずは行政改革から始まる。
アイリは、ポシェットを肩にかけてお出かけスタイルになる。
気を引き締めて仮の住まいからカンドウと共に出かける。
アイリは、直轄郡の郡役所に来た。
行政改革を円滑に行うためには、
役人の見直しを行うところから始めなければならない。
次に、私の意向に沿った行政組織を構築する。
何でも屋的な体質を打破するため、思い切って旧組織を解体する。
直轄4郡内の関所や郡役場の組織解体を行うとき
鑑定スキルで、性格や経歴、技能を優先に、適合・不適合を割り出す。
才能があれば領民からも、家格性別問わず採用した。
能力もないのに伝手コネで成り上がったものや、
私腹を凝らす輩など組織の膿は排除だ。
人物事典で、黄色や赤色は、すべて罷免し財産没収の上、追放か逮捕する。
それだけでも業務は円滑になり、省人化が進んだ。
付帯効果として、直轄郡の財政は潤った。財産没収のおかげかも知れない。
組織改革と共に新しく官吏院を設定した。
官吏院とはアイリ直轄の内政組織だ。実は雑用係なのだが・・。
日本で言う総務省と法務省の他、内閣府のような役割を持つ位置づけとなる。
官吏院の組織の下に4つの実務管轄院をおく。
これはたぶん今後も増えていくだろう。
財務院、産業院、交通院、生産院、これらを統括するのが官吏院となる。
日本で言えば、財務省、経済産業省、国土交通省、農林水産省のような
役割を持つ。
サイトク(斎徳)25歳
この領は、専門文官がいなくて武官が内務も行っている。
ほんの4年前まで戦争ばかりしていたこともあり、
文官制度が行き渡っていないのが実情だった。
彼は武才がないため、「下級役人どまりでもいいや」といつも通り
内務仕事をしていたのだ。
突然目の前に現れた幼女に「うーん、あなたに決めた。・・・ふふふ」
と言われた。
驚いて見ると、片手を腰に当てもう片手を自分に向けて伸ばし
人指し指を向けてビシッとポーズを決めるアイリ姫だった。
肩からウサギのような何かがぶら下がっている。
隣には困った顔をしたカンドウ氏がいた。
サイトクは、アイリが作った官吏院の長官職に収まることになる。
アイリの鑑定、人物事典によると
サイトクは非常に珍しい「監査」というスキルを持っていた。
アイリ曰く「埋まらせておくには惜しい人材」だそうな。
これで、組織の不正や腐敗は無くなるはず・・ふふふ
サイトクの下には、4人の上級文官を配置した。
4つの実務管轄院をまとめるため、管理技能の高い者を選択した。
4人を各実務管轄院の長菅職に任命し、こうして組織改革は収まった。
技能的には問題ないと思う、その下の文官も優秀なものを選んだつもりだし・・。
交通院と生産院は忙しい。土地の区画整理やら測量やら大わらわだ。
アイリの「はじめの一歩は、土地の管理と道の整備から」
というよくわからない命令のためだ。
決してボクシングをしろ、というわけではない。
産業院の規格基準が決まると更に忙しくなった。
直轄地は、すべて領主のもの・・
であるから、任されている自分がすべて管理する。
というアイリの考え方は間違っていないと思うが、
すべて実務は部下に丸投げだ。
産業院では、量、重、長、に関しての規格基準の作成を命じられた。
規格を統一するための基準器の作成などがあげられる。
アイリ曰く「これを元にして取引量や土地の広さなどを決めるのです。」
次に価値基準の作成、
今まで個人の気持ちだったり目分量だったりしたものが明確にされる。
価値基準を決めれば、貨幣制度が安定するという。
財務院では、土地の広さを元にして、徴収額を決めろと命じられた。
税金ではなく借地料という形で徴税するのだという。
農民を含めた領民や行商人、職人に土地、場所を貸し出す。
財務院では、この借地料回収や土地借地権の管理を任される。
例えば農民から米を借地料として支払われる場合、
どれだけの量でいくら分になるのかを決める必要があるから大変だ。
規格基準を決める産業院との二人三脚になる。
アイリは、従来の徴税方法に代わり、土地借地料にすることは利点が多いという。
「同じ借地料で米の取れ高を増やす工夫をすれば自分が得をする。」
「農民も頑張る気が出るでしょう。土地生産高が上がれば皆も潤います。」
「行商人や職人も場所代以上稼げば自分が得をする。」
「商売に頑張るし、移動するより得になるならここに定着するはずです。」
これを聞いたサイトクとカンドウは、
返す言葉も忘れ、アイリの得意顔を見つめるのみだった。
そう、従来のやり方では努力があまり報われなかった。
このやり方なら、努力すればするほど自分に還元されることになる。
個人が潤えば消費が伸びて、周りも潤う。
この後、アイリはカンドウにサイトクの支援をお願いした。
「しばらくの間、忙しいよ・・・ふふふ」
サイトクとカンドウは、アイリの政策に感動し、傾倒していくことになる。
官吏院を通じ、またたく間にアイリ直轄4郡に通達が出される。
郡役場や関所、郷役場に連絡が行き渡り、人を集め説明が行われる。
「領民は、従来の税金の代わりに使用する土地の広さ分を土地借地料として
納めることとする。」
「人頭税、出来高税、移動税、売上税など税金はすべて廃止。」
「使用する土地を広げたい者は、広げたい分の土地借地料を納めればよい。」
「また、その土地で収穫、収入が増えても土地借地料は変わらない。」
また、アイリが目をかけていた自由貿易郷についての説明もされる。
「西川郡南部に商業地区として自由貿易郷を設置する。」郷とは市だ。
「行商人や職人などは、この郷内で自由に商売をしてよい。」
「税金は取らず。使用する場所の広さに応じた借地料を支払うだけでよい。」
「ただし取引をする場合には、必ず基準器を使用すること。」
「これは、取引の際の混乱をなくし、円滑に商売を進めるためでもある。」
あちらこちらで、同様の説明がされる。
情報をばらまいて、この政策が得だと宣伝するのが目的だったりもする。
プロパガンダの始まりだ。
これを聞いた領民は大騒動になった。
アイリ自らが、領民の前で説明をすることもある。
幼女が説明するという物珍しさも手伝って人が大勢集まる。
通常の政策説明の後に、アイリの言葉が追加される。
「生産量が増えただけ、商売が儲かっただけ自分たちが得する仕組みです。」
「皆さん頑張って努力、研鑽してみてください。必ず以前より良くなります。」
アイリは続ける。
「それと、優秀な人は農民であっても商人や職人でも私の部下に採用します。」
「家格、権力、財力とは関係なく、個人の努力と能力を評価します。」
「自由意思は尊重しますので、私の政策に賛同するなら是非協力してください。」
アイリは頭をぺこりと下げでから、皆の顔を見てにっこり微笑む。
今までと違いすぎる制度に混乱する者や幼女が流暢に話したことに驚く者。
領主の娘が頭を下げたことに感動する者。様々な人がいる。
しかしながら夢を感じた人々が多くいたのは言うまでもない。
この話を聞き、西部4郡以外からも人が集まった。
領外からもたくさんの人が来る。
人が集まれば、行商人や職人が混じっていることは珍しくない。
アイリは鑑定で、容易に個人情報を知ることができる。
何の予備動作もなく、単に見るだけでいい。
鑑定した情報は、次々と人物事典のページを埋める。