No003 アイリの野望、誕生編 「スキル能力」 スキルを使ってみる。そして決断しちゃった。3歳10月
主人公アイリの持つ能力のお話。
世界事典と鑑定スキル
さて、英知の加護とセットになっていたこのスキルなのだが
ユニークスキルであることを、最初の頃は知らなかった。
この世界でのユニークスキルとは、スキル自体が自己成長したり、
拡張機能を持つ特殊スキルだ。
この世界のスキルとは、単に技能の上位である。
普通の技能スキルでも、最初から取得している者は少ない。
アイリの持つスキルとはかなり異なる。
世界事典の記録範囲は、あくまでもアイリからの知覚情報が基になる。
この世界の全ての情報が網羅されていて、それを見れば、何でもわかる。
・・・というスキルではないことが、残念だった。
「つかえないスキルね・・ウィキのような感じだったら良かったのに。」
だからアイリは、そう思っていた。
逆に鑑定スキルは、結構使い勝手がいいと評価した。
鑑定スキルは、アイリが視覚しただけでなく、知覚したものすべてを含む。
要するに、聞いた話でも内容に間違いがなければ、鑑定スキルは知覚認識する。
応用として、嘘や冗談は鑑定スキルが知覚反応しないから通じない。
アイリ曰く、「うそ発見器」でもある。
世界辞典には、鑑定内容を補完する程度の追加情報が記載される。
鑑定スキルで、取得される情報が濃いほど、補完される情報の詳細は多くなる。
結果、視覚鑑定のほうが情報は濃い。
面倒でもアイリ自身が行動して、直接視覚するのが一番良いことになる。
いわゆる百聞は一見に如かずだ。
鑑定と世界事典はリンクしており、鑑定するほど世界事典のページが増える。
頭の中で本を作るかのように・・・。
だが、人間だから普通に頭で記憶できる。
よって、情報をサポートする役目だとアイリは思った。
転生して自己意識が芽生えてすぐの頃は、
スキルを所持しているはずなのに、使えなかった。
それがアイリ1歳の時。
今まで使用できなかったスキルが、急に使用可能になった。
見たものが、頭の中に補完情報とともに記憶されだしたのだ。
視覚すると知覚し、世界事典に記憶される。
それが鑑定スキルと世界事典の能力だと知った。
二つのスキルは、リンクしていることを理解した。
要するに、鑑定スキルは入力端子で、世界事典は記憶装置だ。
部屋の中にある無機物の情報取得には、すぐに飽きた。
早速、人物鑑定をしてみようと思った。
視覚とは、単に視点を対象者に合わせるだけでいいのだ。
見るだけで済むのである。
アイリが最初に人物鑑定したのが、乳母のお姉さんメイドだ。
驚いたことに彼女は、12歳だった。
乳母の名前は、サヤカ(沙耶香) アイリ曰く、お姉さんメイドだ。
アイリが生まれる前、
サヤカが10歳の時に、この屋敷へ奉公に入った。
そしてサヤカが11歳の時、アイリが生まれた。
母の側仕えは、シキノ(志紀乃)27歳
サヤカに乳母としての教育を行ったのが、シキノだ。
今でも時々、サヤカはシキノに相談をしているらしい。
二人は、親子みたいに仲が良いようだ。
ちなみに、アイリ1歳時の鑑定で
母は、アヤノ(彩乃)16歳
父は、マサツグ(昌嗣)20歳 カザマ(風間)家当主
だと知った。
15歳で自分を産んだ母を見て、鑑定時に「まじかよー」と独り言を言った。
こっそり父に「ロリコン認定」をしたのは、言うまでもない。
逆算すればわかるが、14歳女子に「お手つきしちゃった」結果なのだから・・。
15歳で成人してから、結婚するこの国において、完全なフライングである。
スキルというのは、技能の発展形だと置き換えることができる。
生まれたときからのスキル持ちは、先天的にその技能能力が高いといえる。
生まれながらの天才というわけだ。
しかし、鑑定スキルがなければ、所持スキルを認識することができない。
宝の持ち腐れ的な人も多くいるだろうし、野に埋もれる人もいるかもしれない。
残念ながら、ステータスがないこの世界では、自覚不可能なのだ。
スキルとは、技能の経験や努力などによって後発でも発生する。
スキル発生の条件、アイリ曰く「トリガー」なるものがあるようだ。
技能を磨けば発生条件が高くなり、後発スキルとなって、更に能力の底上げがされる。
生まれながらでなく、努力でも天才になる。
得意分野を伸ばすことで評価される人物とは、こういうことだろう。
では、加護とは何か・・・。
自分のもつ、英知の加護と前世の記憶
ひょっとして英知の加護があるから、前世の記憶が残っているのかな。
今のところ、自分以外に加護を持っている存在はいない。
結論は、後回しになった。
アイリは、2歳を過ぎたころから
世界事典の中に、人物事典のページを作っている。
鑑定で世界事典に、人物情報を登録していったところ
人物以外の情報とページが混在してしまった。
鑑定順にページが追加される仕様では、やがて見にくくなるのは当たり前だ。
いっそパソコンのように
並べ替えや抽出して整理できないかという、そんな思い付きで試してみた。
頭の中で、「ソート、カット&ペースト、抽出、整理」などど
いろいろ念じてみたら なんと世界事典の付録のように人物事典が出来上がってしまった。
実は、ユニークスキルの特殊能力である。
世界事典はユニークスキルだから、条件が合えば成長するのだ。
人物事典とは、アイリの趣味でもある。
英雄や有名人の記録を見ることは、オタク歴女最大の夢だ。
きっと、思い入れの強さもあったのだと思う。
人物事典がうれしくて、更に周囲にいる人物を鑑定しまくった。
この世界には、ステータスやレベルがない。
しかし、本名、年齢、所属、所在地、経験や知識の履歴、技能やスキルがわかる。
要するに、履歴書と経歴書だ。就職活動には、便利かもしれない。
ちなみに、スキルの特性や効果なども世界事典で参照可能となる。
技能の特性については、経歴で想定できるのだが世界事典で調べたほうが早い。
それと面白いことに
悪人か善人かの区別がつく。要注意危険人物はページが黄色になるし、
自分に対して悪意や敵意があれば、その人物のページは赤くなる。
経歴などを見れば、何故そうなのかも想定できる。
友好的な人は、ページの縁取りだけが青くなる。
ちなみに死亡した人は、ページが黒めの灰色になる。
一応記録は残るようだ。ページが消えて、なくなるわけではなかった。
しかし、記載欄の一番下に死亡原因が記載されるのは辛い。
他殺の場合は、犯人名が記載されるから犯人逮捕に使える。
気味の悪いことに、死体でも鑑定できてしまう。
見るだけで済むから、科学警察も真っ青だろう。
死体を見る趣味はないのだが・・・。
人物事典には、他にも特殊な機能がある。
自分が気に入った人物のページに、花丸マークが付けられる。
花丸マークは、透かしのようにページに登録される。
お気に入り度が高いほどページ全体に花丸マークの透かしが増える。
乳母のサヤカのページは、花丸マークがたくさんある。
これはいろいろ試した結果でもある。
しかも、アイリがメイド押しなのだから仕方がない。
その次に花丸マークが多いのは、母のアヤノのページだ。
他にはページ端に5つの枠欄があり、その中に星マークが付けられるようだ。
成績表のような感じで、5段階評価でもするのだろうか。
何故か知らないが、アイリにとっては便利なお気に入り機能だ。
たまに「ほしみっつー!」とか言って、微笑む幼女の姿を見かけた人もいるらしい。
あと、メモ書きなるものも存在する。
アイリが追加記載できる仕様だったりする。
父、マサツグのページのメモ書きには「ロリコン」と書いてある。
加護持ちは、今まで自分以外は見たことはないが、スキル持ちは時々見かける。
父も母もスキル持ちだ。
父が持つのは、威圧スキルで、母が持つのは、慈愛スキルだったりする。
面白いのは、母の威圧で父が怯む姿は見かけるのだが
逆に母には、父の威圧は全く通用しない。
アイリは、スキルが及ばない何か上下関係があるのだろうと予測する。
尻にひかれているだけ、というわけではない。・・・たぶん。
ちなみに、父の威圧はアイリにも通用はしないが、それは内緒だ。
母の慈愛スキルは、父の威圧スキルの天敵でもある。
スキルの相性が悪い、威圧しても微笑まれて終わってしまうだけだ。
父の部下の武官連中は、それなりに戦闘系の技能スキルが見られる。
武術の努力や戦争の経験から発生した後発スキルではないかと思う。
剣術や槍術の技能度とかは、鑑定しなくても稽古を見れば充分わかる。
人物事典が有効活用できると知って、鑑定しまくったのは言うまでもない。
「真田幸村みたいな人いないかな・・ふふふ」
歴女のアイリとしての一押し武将なのだ。
一応モデルがいるが、架空の人物だということは、彼女はちゃんと理解している。
しかしオタク歴女だから仕方ないのだ。
架空であっても、かっこよければそれが正義なのだ。
実在したらそれなりのスキルや技能を持っていたであろう。
他にも、独眼竜の伊達政宗やら、傾奇者の前田慶次郎など。
この国にも、そういった人物がいるかもしれない。
どこかに埋もれているかもしれない。
自分が持つ、鑑定スキルがあれば見つけられる可能性がある。
この地の英雄を求めて、自分の足で動く決心をする。
「もっと広い世界を見てみたい・・ふぅ」
「事典のページも増やしたいし、前世の知識も活かしてみたい。」
アイリ3歳、あと2か月ほどで4歳になる頃
領主館での、引きこもり生活をやめることにしたのだ。
「父上、今日は話を聞いてください!」
アイリは、決断から行動が早かった。