No002 アイリの野望、誕生編 「記憶と転生」前世の記憶とスキルを持つ私。0歳~
転生に至る前の前世の話になります。
小野田信子、そうこれが私の名前。
平成生まれなのに、何故か昭和臭い名前を付けられた。
小さいころは、腹を立ててよく親に文句を言っていた。
ノブコではなくて、シンコと読むのも、いかにもダサくて嫌だった。
信子は、頭の出来が良く小学・中学・高校・大学を通して、
学生時代は常に上位の成績であった。
本人曰く「頭がいいのではなくて、記憶するのが好きだから」なんだそうだ。
そんな彼女は、高校に入るまでは、いつもほぼ一人で本を読んだりしていた。
名前のことで、虐にあっていたからかもしれないし、
そういう性格だったのかもしれない。
いつもボッチの信子にも、
高校入学時にやっと、同性の友達と数人の仲間ができた。
友達はゲームマニアで、信子の知らない世界の話をたくさんしてくれた。
信子は、友達の彼女に汚染されていった。
親友とまではいかなかったが、一緒にいて話を聞くのが楽しかったようだ。
友達をはじめ、仲間はみんなオタクだった。
オタク仲間に、信子がスカウトされた。というのが正しい。
パソコン、ゲーム、アニメ、ラノベから始まり、
オタク道に染まっていくのは、そう時間がかからなかった。
ただ、どうしてもBLの良さは,
理解不能だった・・
おかげで腐女子には、ならなかった。
オタクにもいろいろ方向性があるのだが、信子が最終的に辿り着いたのは、
歴女だった。
それからの信子は、オタク歴女として、黒歴史を構築していくことになる。
大学を選択するとき、担当教員から一流大学を目指せるのに
何故そんな大学に行くのかと親を呼ばれて進路会議までされたのだが、
持ち前の頑固さで自分の行く大学を決めた。
歴女というオタクが高じて、
歴史学科のある近所の大学へ進む道を、誰もが危ぶんだ。
信子は、頑として周囲の意見を聞かず、そのまま希望大学へ進学してしまった。
大学在学中、好き放題できる状態になると、オタク歴女の能力は更に覚醒していった。
大学卒業になる頃。両親は就職に困ると思っていたのだが
信子は持ち前の成績の良さもあり、何の問題もなく県立図書館の司書に収まった。
司書になってすぐ、優しい同性の先輩に仕事を教えてもらった。
本が読みまくれると思ったのに、大間違いだと気付いたのは今更かもしれない。
仕事は意外に大変だった。
先輩には、仕事だけでなくお酒も教えられた。
30歳一歩手前の独身女性が、お酒が入ると怖いことを知った。
日頃優しい人が、お酒で豹変するのは聞いたことがあるが、絡み癖が酷かった。
やがて信子は、家を出て、一人住まいをすることを決心する。
先輩が一人住まいをしていたから、その影響があったかもしれない。
オタク歴女としての独身生活を謳歌していく。
信子の進む道を阻害するものは何もなく、猪武者のように黒歴史は積み上がる。
時は流れ、やがて年号は令和になっていた。
信子はオタク歴女としての趣味に没頭し、着実に計画的に、様々な経験を積んでいた。
気が付くと、最初にお酒を飲んだ時の先輩と同じ年齢になっていた。
充実した生活に、大変満足していた。
・・・はずだった。
いつ、何故、自分が転生することになったのか、全く知らない。
転生だから、死んだのだろう。と思うのだが、記憶がない。
ただ、前世の記憶が多少残っていて、大人になっていたことを、示していた。
幸い、学校で学んだことは、結構覚えていた。
オタク歴女として学んだことも、結構覚えている。
いろいろやってきた黒歴史は、あまり忘れていないようだ。
とても懐かしく感じ、大切な気がするが
両親の顔は覚えていない、友達やオタク仲間は、存在しか覚えていない。
司書になった時に、優しく怖い先輩がいた気がするが、その程度しか覚えていない。
忘れたことは、もっと沢山あるのだと思う。
きっと自分にとって、どうでもいいことは、全部忘れてしまったのだろう。
残された記憶に、意味があるのかもしれない。
不思議なことに「この世界を助けてください」と光の中で聞いた記憶がある。
転生・・・それは、新しい自分との出会いから始まる。
私は生まれた時、既に加護を持っていたようだ。
加護を持つ存在は、とても珍しく、生まれた瞬間わずかに光り輝くという。
自分が生まれた瞬間、わずかに光が漏れたという話を聞いた。
他者から見れば、それも私の神秘性を引き立たせた要因でもあろう。
誕生から幾日か過ぎ、目を開いて視点が定まるようになった。
この瞬間、英知の加護と2つのスキルを持っていること、前世の記憶があることを理解した。
それと、転生したという自覚。
その後、初めて顔を見た女性に口を開いた。
何故か、できるだけ丁寧に話そう思った。
言葉は前世の記憶にある日本語だが、通じたようだった。
相手の女性は、かなり驚いたようだった。
できるだけ愛想よく、丁寧な言葉を心掛けたつもりだ。
本能的に最弱者である自分。
できるだけ大切に保護してほしい、という思いがあったのかもしれない。
転生後の世界を早く知りたい、というオタク的な好奇心があったのかもしれない。
たぶん、両方なのだろう。
生後20日に満たない赤ん坊が、口をきいたから騒動になったのは言うまでもない。
ちゃんと普通に会話できてしまったのだから、さらに驚かれた。
会話相手は、両親だとすぐにわかった。
日本じゃないと本能が言っているのに、日本語が通じる世界。
周囲の人だけじゃなく、自分も困惑していた。
母親という人を見て、少し安心した・・優しそうな人でよかった。
父親は強そうな態度だったが、何故か温かみを感じた。
だから、会話ができてすぐに、両親に加護持ちであることを話した。
スキルや前世の記憶のことは、話していない。
変に危険視されるのは、怖くて避けたかった。
英知の加護によって、赤ん坊でも会話ができたのと
両親が勝手に解釈してくれたおかげで、この時の騒動は収まった。
私は、
英知の加護、そして世界事典と鑑定というスキル能力を持っている。
この世界には、魔力的な何かがあるのだろう・・最初、そう思っていた。
しかし・・
残念ながらこの世界には、異世界小説にありがちな魔法はない。
鑑定スキルを持っているが、ステータスやレベルの存在もなかった。
これを知った時には、すごく残念な気がした。
「せっかくの異世界転生なのに魔法がバンバン使えないとか・・ふぅ」
溜息が漏れた、
私は、この世界では、カザマ(風間)家 領主の娘
名前は、アイリ(愛里)
異世界転生したようだが、そこは日本の戦国時代のようなところだった。