忘却
いつも笑顔で話しかけてくれたあなた。
でも昨日は、首を傾げて言った。
あなた、誰?
その時、確信したよ。
記憶の1ページ1ページを燃やしているんだと。
それを糧に、命の灯を輝かせているんだと。
あなたは私のことを忘れてしまった。
私はあなたとの思い出が沢山ある。
記憶にも。
胸の奥にも。
そんなパラドックスを垣間見ると勘違いをしてしまう。
ここは私のいない世界なんだ。
どこでどうしようが、所詮赤の他人なんだ。
こんなつらい思いをするならば、私の記憶も燃やしてしまいたい。
でも、あなたが庭先を見ているときの笑顔のせいで、できないってことを痛感する。