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しまのう〜作業着と青い夏〜  作者: じゅうたん
8/9

ドリームランド

明日からいよいよ実習スタート。






感想等お待ちしております。


吾輩は、とても憂鬱だ。

有名な吾輩と猫の話を国語の授業で教師の志田 慶人が解説しているが、作者の気持ちや文章の表現など、今の将太には頭に入って来ない。

「パトカー通ります」

窓の外を走るパトカーを眺め、将太は思わず溜め息をもらした。

「はい、どうもー」

道を譲った車にお礼を言いながら猛スピードで走り去ったパトカーは、あっという間に、その姿とサイレンは小さくなった。

あのパトカーに、さらって行って欲しい。

将太は、再び溜め息をもらした。

明日から、例の実習が始まる。将太は、これから、手荷物をまとめなくてはならない。

「明日から頑張ってな。今日は、午前で学校終わるけど、これから、名前と住所が違うドリームランドに行って遊ぶことがないように」

いつの間に、黒板を綺麗にした志田が、にやけながら言う。

将太は、例のドリームランドに行って、実習をサボりたい気分だ。

「みんな早く帰って準備したいだろうから、授業早めに終わらせるよ。朝田先生から、授業終わり次第帰っていいって、許可もらておいたから、早く帰れよ」

志田の自慢気な顔に少しムカつく将太に対し、クラスメイトのボルテージは急上昇。

「早く帰ろう」

「先生サンキュー」

笑顔ではしゃぐ周りのクラスメイトと将太のテンションの差は、激しすぎる。

「早く帰れよ」

教科書を持って志田が教室を出て行くのと同時に、クラスメイトはミサイルの様に教室を飛び出して行く。

「将太、帰るぞ」

宗介が黄昏る将太の肩を笑顔で揺する。

「おう」

短く答えた将太は、教科書をリュックに入れて立ち上がる。

いつもは、教科書の向きを必ず揃えて入れる。そう、いつもは…。

廊下を歩くクラスメイトは皆が笑顔だった。

「将太、元気出せよ。研修乗り越えたら、どっか旅行に行って気分転換しようぜ」

「その旅行に私もついて行ってもいい?」

新島が笑顔で会話に加わる。

正直、旅行なら新島と二人がいいけど。

男二人に対し女の子一人は、何か変な組み合わせだし。

「全然いいよ。せっかくなら、将太の実習の相棒の白石さんも誘ってさ。そうすれば、二対二だから丁度いいや」

「みんなで旅行に行こー」

はしゃぐ新島は、可愛い。

その姿に、思わず将太は笑顔がこぼれる。

友達に恵まれたな。そう思う。

「明日から頑張りましょー!」

新島の笑顔は、将太に元気を分けてくれる。

新島と実習行きたかったなぁ。

「実習中も連絡取り合ってさ。お互い励まし合おうな」

「旅行の行き先もそこで決めるか」

将太は、旅行の行き先が気になって仕方ない。

関東平野に佇むこの校舎。関東平野からは出て、他の地方にでも行きたい。

「例のドリームランドにでも行くか?」

「えー。関西のやつがいい」

すぐに宗介のドリームランド案は、新島によって棄却された。

恐らく、旅行先は新島の希望が通る形になりそうだ。

「午前で学校終わったし、昼寝でもして明日に備えるか」

欠伸をした宗介が言う。

確かにエネルギーチャージをして置かなければ、実習は乗り越えられない。

「そうだね。少しお昼寝してから準備しよ」

宗介の欠伸がうつり、新島も欠伸をする。

俺もお昼寝をするか…。

「ちょっとトイレ寄って行くから、先に駐輪場行ってて」

宗介がトイレに消えていく。

自転車を漕いでいる時にトイレに行きたくなると、面倒だ。

将太と新島は、二人でざわつきも落ち着いた廊下を並んで歩く。

「旅行どこ行きたい?」

「新島さんに合わせるよ」

「本当?優しいなぁ。小野君は」

今、新島の将太に対する株価は上昇したのを、確かに感じた。

それから、泊りをするのか関東か関西か。二人で話しながら廊下を歩く。

「俺だったら、温泉かアウトレットだなぁ」

聞き覚えのある声に、虫唾が走る。

慌てて振り返ると、朝田の満面の笑みで立っている。

何で居るんだよ。

「まぁ、とりあえずは実習乗り越えてちょうだいよ。ラブラブ旅行はその後さ」

長い両手で将太と新島の肩に手をかけると、二人の距離をグッと近づけた。将太の肩と新島の肩が当たる程距離が近い。

「先生、痛い」

「すまんすまん」

慌てて新島を解放する朝田だが、将太は解放しない。

「アウトレット行ってからの温泉が俺のオススメルートな。例のドリームランドは、行くなよ」

朝田の小声の提案を聞き流し、将太は意味もなくうなづく。

笑顔で将太を解放した朝田は、小走りで去って行く。

だが、突然、朝田は止まって振り返る。

「とにかく、お二人さん頑張って。帰りは、二人で並んで自転車で走るなよ。お巡りさんに止められてムード壊れるからな」

言い終わるとまた、小走りで去って行く。

「そこのカップル止まって」

外から聞こえてきたマイクの声と明るい赤色灯に、なぜか冷や汗をかいた将太だった。



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