下校
説明を聞いた後の出来事…。
ブックマーク二人目ありがとうございます。
城島にたくさんの質問を浴びせた将太は、城島が部屋を出てからしばらく時間をおいてから、白石と二人で応接室を出た。
「とにかく頑張ろ」
手を差し出して来た白石。真っ白な肌が綺麗だ。
「俺が死にそうになったら、今度は白石が助けてよ」
「任せて、救急車呼ぶ時のコツをネットで調べておいたから」
自信に満ち溢れている白石だが、どこか一般人と感覚がずれている。
「救急車は心配なさそうだ」
思わず将太は笑ってしまう。将太も手を差し出して握手する。
あたたかなその手は、しっかりと将太の手を握っていた。
「おっ!小白友好条約締結か?教科書で見たことある絵面だな」
教科書片手に朝田が言う。面倒なところを面倒な人に見られたな。
慌てて将太は、白石の手を離す。
「とにかく、頑張ってちょうだい。お二人さんは、いい研修先だよな。おめっとさん。あと、説明終わったところから帰っていいから。お疲れ様」
にやけながら朝田は、階段を登って行った。
全てはヤツが仕組んだことだ。
「帰りますか…」
白石が呟いて腰を叩いてから、背伸びをする。
可愛い。
新島とは違う可愛さだ。
白石がトコトコと歩き出す。
将太は、白石のあとに続き始める。
そこまでは覚えている。
「白石って、おっちょこちょいなの?それとも天然なの?」
気付いた時には、その言葉を将太は発していたのに加え、手を握り、階段で躓き転びかけた白石を助けていた。この状況に自分自身が一番驚いている。
「ありがとう」
照れながら体勢を整えた白石が言う。
「青春だなぁ。お二人さん」
両手で双眼鏡の形を作った朝田がこっちを見ている。
だから、何でいるんだよ、ここに。
「次回から、しまのうラブストーリーは、録画しないとだな」
にやけながら朝田は去って行く。
しまのうラブストーリーって何だよ。もっと、いい名前あるとおもうけど。
どこか聞き覚えのある歌を口ずさみ朝田は廊下を歩く。
「早く帰って寝よ」
白石は、そう言うとすぐに階段を駆け登った。
「すげー不安なんだけど」
思わず将太は不満を口にした。宗介となら、深川林業の実習でも乗り越えられる自信はある。
だが、相棒はクラスで一番不器用な白石だ。
将太は、一段一段ゆっくりと階段を上がる。
「あれ?小野君も終わったんだ」
階段を下りてきた新島と踊場で出くわす。
「うん。新島さん早いね」
「でしょ。ちなみに、篠原君は、まだまだ時間がかかりそうだったよ」
「そうなんだ。先に帰っちゃおうかな」
実習が不安でたまらない将太は、なぜかここ最近、疲れが溜まりやすい。早く帰って寝よう。
「じゃあ、一緒に帰ろ。私、暇だし」
なんだこの展開。
「別にいいけど。先、駐輪場行ってて」
冷静を装い心の中で、はしゃぐ自分を押さえつける。
「ラジャー」
新島は敬礼をすると、笑顔でスカートをひらつかせ階段を下っていく。
可愛い。とても可愛い。
新島と二人で帰れるなんて、なんだか今日はついている。
史上最速の帰宅準備を行い、駐輪場を目指す。
こんなにも学校の廊下が長いと感じたのは初めてだ。
走って駐輪場に向かうと、新島が将太の自転車に跨って待っていた。
「早いね。自衛隊で研修してきた?」
笑顔で冗談を言う新島。
「いつも通り」
冷静を装いながら自転車の鍵を手に取る。
「新島さんって歩きだっけ?」
「自転車パンクして、修理中だから今日は歩き」
自転車を降りた新島が言う。
自転車通学の高校生にとってマイ自転車のパンクは死活問題だ。
「じゃあ、行きますか」
自転車の鍵を解錠し、自転車を押しながら新島と歩く。
「気を付けて帰れよ」
聞き覚えのある声に、警戒レーダーが反応する。
この声は、朝田だ。
なんでこんなに絶妙に、朝田が将太をバカにしやすい場面に朝田が出てくるのか。
「朝田先生だ」
新島が朝田を見つけ駆け寄る。
「先生、御勤めご苦労様でした」
「おう。新島、気を付けて帰れよ」
朝田が笑顔で言う姿を横目に、ステレスモードの将太は、静かに校門を出ようとする。
「私、小野君と一緒に帰るんで。先生、ご心配なさらずに」
新島のその言葉が将太の耳に届いた瞬間に、将太の警戒レーダーは朝田を感知した。
「小野。何しれっと帰ろうとしてるんだよ」
朝田が笑いながら叫んだ。
朝田という人間は、なぜそこまで絶妙な瞬間に現れ、こんなにもに面倒なのか。
透明マントは、どこに売っているのだろうか…。
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