表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しまのう〜作業着と青い夏〜  作者: じゅうたん
3/9

放課後

発表後のお話。






感想お待ちしています。

 発表後のざわつきもひと段落し、将太は、箒を持ちながら校庭を眺める。何もやる気にならない。

 まさか、一番厳しいとの噂の深川林業とは。そして、希望通りではないのに加え、白石と一緒とは…。

 何もかもが想定外だ。

「将太、元気だせよ。一番厳しいところで、結果出せば、将太の株価上昇間違いなしだぞ」

 将太の肩を叩き、宗介が励ましてくれた。

 だが、立ち直れる気がしない。

 校庭掃除の新島を見つけると、再び意味もなく眺める。

 スタイルいいよなぁ。

 発表からぼんやりとすることが増えた。

「小野っち。ちりとりとって」

 クラスメイトの小谷 健吾が箒でゴミをまとめてから言う。ロッカーからちりとりを取り出すと、床を滑らせる。

「サンキュー」

 ちりとりを受け取った小谷が笑顔を見せる。小谷は確か希望通りの研修先になったはず。

 このクラスで希望通りにならなかったのは、将太と白石と西園 玲奈だけだ。

「そう言えば、そのちゃん。どこ希望してたんだっけ?」

 掃除中の西園に宗介が話しかける。宗介は、西園と仲が良く、そのちゃんと呼ぶ。

「農業希望したけど、造園業になったの」

 少しにやけながら西園は答えた。

「ほら、将太の他に希望通りにならないのは、いるぞ」

 そんなことは分かってるけど。

 視線を西園から校庭に戻す。

 電車が街を駆け抜け、国道を消防車が走り、何気ない日常が窓の外には広がっている。

「研修っていつからだっけ?」

「一週間後」

 宗介の回答に大きな溜息が零れる。てっきり、庚申園芸になると思っていた将太は、会社の場所などを事前にリサーチしていた。

 しかし、その努力は水の泡。山間部の深川林業のことは何も知らない。

 将太の持つ深川林業の唯一の情報は、研修先で一番厳しいところと言うことだけ。

「早く掃除終わらせて、部活行くか帰れよ」

 朝田が教室に顔を出す。

 もし、将太が部活に所属していたら、今日は大きな怪我をしそうだ。サッカー部にでも所属していたら、足を折りそうだ。

 今の将太にとっては、研修を休めるなら骨の一本くらい、骨折をしても構わない。

「なぁ、宗介。今日暇か?」

「暇だけど」

 宗介の返事を聞き、校庭から視線を戻す。

「研修先で死ぬかもしれないから、やり残したことやってから、研修行こう。ちょっと手伝って」

「大袈裟なぁ。将太は、何がしたい?更衣室覗きか?それとも、誰かに告白か?」

 宗介は本当に考えが少し幼稚と言うか、幼く一緒にいて面白い。

「更衣室覗きもそうだけど、もっといっぱいあるよ」

「とことん付き合うぞ」

 宗介が笑顔で肩を組んでくる。

「まったく。男子は…」

 会話を聞いていた西園が呟く。

「覗きのこと、先生に言うなよ」

 宗介が人差し指を口元に近づける。

「はいはい。先生にも他の女子にも言いません。私は奥で着替えるので…。他の女子に覗きのこと言うと宗介達が覗けなくなって、他に変なことやり始めても困るし…」

 西園は、男子のことを理解してくれているのか、それとも自分だけよければそれでいい、いわゆる自己中なのかは、分からない。

 だが、覗けなくならずに済むのは男子にとっては大きなことだ。

 覗きをしなことのない将太が、覗きを出来なくならないと知って、安堵するのは、おかしなことだけど。

「サンキュー。そのちゃん」

「はいはい」

 呆れた西園が箒をロッカーに片付ける。

 チャイムが清掃終了を告げると、校庭の新島も片付けを始めた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ