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しまのう〜作業着と青い夏〜  作者: じゅうたん
2/9

発表

しまのう恒例行事の配属先の発表です。

将太は、どこへ?



感想お願いします。

 屋外の実習を終えて、校舎に戻る。制服への着替えを済ませ、教室のいつもの席に座る。去年の建て替えにより、エアコンという現代装備を整えた教室で、時間が経つのを待つ。

「今日は、大漁だったぞ」

 更衣室覗きという昭和の学園ドラマのようなことをして来たメンバーも席に戻り、今日成果を話し合う。

 周りがソワソワしているのは、更衣室覗きの成果が大きかったからではなく、休み時間が終わると、しまのう恒例行事の現場実習先の発表があるからだ。

 現場実習は、しまのう恒例行事で先輩達から、とてもキツイものだと聞いている。建設会社や農家に二週間派遣され、学校で学んだことを実践したり、仕事のお手伝いをする実習だ。実習先によって、厳しさが違うらしく、特に将太達の所属する林業科学科の実習先は、派遣先によって、厳しさが天と地の差があるらしい。

「将太、どこ希望したの?」

 後ろの席の宗介が聞いてきた。

「俺は、庚申園芸。あそこ、楽らしいから」

 先輩から、隠れて楽が出来、人気のないスポットのリサーチをしていた将太は、迷うことなく、庚申園芸を希望した。

「いいとこ希望したね。」

 宗介は、確か青山土木を希望したはず。この辺りでは一番大きな会社であり、実習も様々出来、楽な、まるで天国のようなところだ。

「はいはい。席ついて、これから実習先発表するぞ。天国に行く奴も地獄に行く奴も、とにかく頑張れよ」

 教師の中でも、実習先によって厳しさの差があることは知っているらしい。

 全員が席についたことを確認してから、朝田は口を開いた。

「まず、発表順は何がいい?出席番号だといつも横山が最後だから、違う順番で発表しようよ」

 朝田の提案にクラスが盛り上がる。

 成績順やクジ引きなどたくさんの案が出たが、結局、席順となった。出席番号順ではないが、少しつまらない発表順のような気がする。

「まず、新井、田城工務店」

「マジかよ」

 一喜一憂するクラスメイト。まだ、将太の順番は来ない。

「次、白石、深川林業」

 一瞬の沈黙の後、今までで一番の動揺が広がる。

 深川林業ってあの…。一番大変なブラックリストに載るところ。

 何でそんなところにあの白石が…。

 白石本人はただ、前を向いているのみ。

「はいはい、静かに。次、八木。近藤建材」

 朝田は、淡々と発表を続けた。発表が進むに連れて、ざわつきも収まる。

「次、篠原。青山土木」

「よっしゃー」

 篠原の渾身のガッツポーズ。

 希望通りになり、羨ましい。

「次は、城島。農家の佐々木宅」

 農家の佐々木さんは、天国の中の天国の様な所。

 この流れ、イケるかも。

「お待たせ。今日のヒーロー小野っち」

 朝田の不敵な笑みにイヤな予感しかしない。

「深川林業」

「は?」

 深川林業であること、何で園芸業を希望したのに林業なのか、そして何で俺?質問が多過ぎて、「は?」しか言葉が出なかった。

「小野っち。おめっとさん。また、今日みたいに白石を助けてな。次、大木。中田建設」

 おめでとうの略語のおめっとさん。朝田の口癖であるその言葉が、今までで一番、ムカついた。

 その後も、何も無かったかの様に発表が進む。

「言い残した奴しないよな。まぁ、俺が言えるのは、頑張れよってことだけ。とにかく、いいところに派遣されたやつは、おめっとさん」

 抗議をされない様に、そそくさと教室を後にした朝田。

「元気だせよ将太。ちなみに葵は、白だったぞ」

 将太の隣に座る白石と肩を並べるマドンナの新島 葵。彼女に聞こえない様に小声で宗介は言う。

 そういえば、宗介は更衣室覗きのメンバーだったっけ…。

 力の抜けた将太は、意味もなく新島越しに窓の外を眺めた。

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