日常と非日常の境目
この作品は、作者がこのサイトで初めて書いた小説です。
また、作者の頭の中で考えていることが描かれています。苦手な方はご注意ください
私は生まれつき妙な力を持っていた。自分で意識して手に入れたものじゃないことは、幼い自分でも理解することができていた。
そのために私は各地を転々としてきた。私の能力がばれたら、気味悪がられるから。父や母に迷惑がかかってしまう。
そして数え切れなかった引っ越しも終わった。
「夢か」
そう呟いたのは日のすっかり昇った午前9時。誰もいない部屋の中で一人、私、平泉麻琴は布団の上。
少し悪い夢を見てしまったようで、私は台所へ水を飲みに行った。
この地域では見れる番組は限られていて大半はニュースや教育番組だ。そのテレビを見ているのは中学生の妹、璃久だった。
「姉ちゃんまた寝坊?母さん呆れてたよ」
「いいじゃん休みだし。たまにはゆっくりしないと」
「またそんなこと言って。バイトしなよ、バーイート」
「喫茶店でバイトしてるじゃん…」
他愛もない話。バイトは11時からなので1時間とちょっとはゆっくりしていられる。私の暮らしているところからバス、電車を使って15分というところだろうか。家は父は単身赴任で仕事の内容は知らない。母はほとんど女手一つで私たち姉妹を育ててくれた。
感謝の意も込め、学校へ行くためにも私はバイトをしている。璃久は毎朝4時に起きて新聞配達をしている。
『続いて次のニュースです。今朝、○○県××市にて異獣人が現れた模様。××市では避難警報が発令されており…』
「ね…姉ちゃん、××市ってさ…」
「知ってる、私のバイト先の近くでしょ?」
璃久は異獣人に目の前で友達を殺されたことがあった。璃久か友達のかわからない血で服は汚れ、保安官に保護されて帰ってきた。私はまだあったことがなかった。
1時間とちょっとが経って私は家を出た。
電車に揺らされ、やや荒廃した自分の街を抜けるとだいぶ栄えた街へ出る。ここも2年前までは荒れ狂っており、無法地帯そのものだった。あんなだった街がここまで成長したのは、やはり、あの軍人たちのおかげなのだろう。電車で15分、駅を出てすぐに喫茶店はある
「マコ!また遅刻?いい加減にしてよね~」
「仕方ないでしょ、私だって忙しいし。」
「別に麻琴がいなくても俺たちは働けるけどな」
「マコが居ないと私らグダグダなのによく言えるわね!この単細胞バカが」
「杏梨、朔也、喧嘩はやめろっての。麻琴ちん困ってるだろ?」
杏梨、朔也は私と同じ年のアルバイト。ちなみに二卵性の双子である。
喧嘩を止めたのは一応この店の店長である彰人さんだ。みんな私とおんなじような「妙な力」の持ち主だ。大体そんな人たちがここで働いているのだが、私含めて個性的な人が多い。
今日は幸い人も少ないし、いつもみたいにここで喧騒が起こることもないだろう。たまに変な人たちが来ることもあるが…。
しかし、私たちはまだ予測もしていなかった。あんなことがもうすぐ起こるなんて…。