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翌朝、風呂に入り、早めに着替えて家を出る。食卓には一人分の朝食と書き置きを残しておいた。
俺は朝から学校、夕方からはバイトに行かなくてはならないので、家に到着するのは早くて23時。その頃にはもうあの男はいなくなっているだろう。
これでいいのだ。
眠れずにいた昨夜一晩中、考えていた。無理に忘れようと思っても、忘れることができないのであれば、物理的に距離をとって心をじっくりと引き離していくしか方法はないのだ。既に自分の力では引き返せない位置まできてしまっている。時間に解決してもらう他に道はない。
予測通り、帰路につけたのは22時半。ここからトボトボと歩いて家に着くのは23時ちょうどくらい。帰りにコンビニでも寄って行こうか。出来合いの惣菜を買って、インスタントのスープと、白米を盛ればそれなりの食事ができる。一人暮らしの大学生というよりは、独身のサラリーマンといった生活だが、存外嫌いじゃない。
イカげその唐揚げとチキンカツを1パックずつ買って、またトボトボと歩く。予定より10分遅く家に着き、覗くと部屋の明かりは消えていた。これでいいんだ、と誰にいうでもなく呟く。
「・・ただいま。」
玄関のライトをつけると少し大きめの靴があった。まさか。