プロローグ
年末。
相変わらず俺は外に出ない。
毎年同じ。
家族と過ごすわけでもなく、友人と集まるでもなく、年が明けるのを家でひっそりと待つのだ。
いつだったか『年の1番初めにした行動を、その1年中ずっとすることになる』と聞いたことがある。
例えば新年明けて一日目にダラけていると、結局その一年ずっとダラけて過ごすようになるんだとか。
それはまさしか俺のことで、そんな日々をもう何年も過ごしている。
軽く家の掃除をして、それからネットサーフィンに耽る。掃除といっても普段からあまり散らかす方ではないから特別やりがいもない。
大学が始まれば、ふらっと授業に出て、ふらっと帰ってくる。
そうして、なんとなく、ただぼんやりと時間だけが過ぎていく。
「腹減ったな・・・。」
12月31日の今日は朝から何も口にしていない。体が怠けモードに入ってなかなかやる気のスイッチが入らないのだ。
生放送のテレビ番組ではもうすぐ除夜の鐘が鳴りだす頃。これも例年と同じ。
沢山の人で埋め尽くされたテレビ画面に、俺は心底あの場にいなくて良かったという顔をして蕎麦を茹で始めるのだ。
来年はどんな年になるだろう。
きっと今年と何も変わらない。
変わらなくていいじゃないか。
新しいことに挑戦して失敗するより、不変の毎日を一定に保って行けたらそれで充分だ。
そう思ったのも束の間。
現実とは、そう上手くいかないものだ。
新年を迎えるまであと10分。
「蕎麦、美味そう。」
「・・茹でただけ。」
「天ぷら、」
「盛り付けただけ。」
俺の部屋には、彼がいた。