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レシピ5



…黙れ。勇者よ。

きさまのそのお綺麗な理想論は聞き飽きた。さっさとかかって来るがいい。


…そのドラゴンランスでな!


言っておくが、そのドラゴンランスは罠だったんだからな!

首都侵攻時、きさまらの注意をカジノに引き付けておくためのエサだったのだ!


わははは、驚いただろう。きさまが後生大事に抱えているその武器に、魔王の息がかかっていたのだから!

しかし、コイン500万枚必要なそれを一瞬で手に入れられたわがはいの方が、驚いた自信がある!首都でそれを持ったお前が背後に現れた時は、マジで心臓が止まるかと思った!


…全くお前は、何というか…。

…本当に人間なのか?

普通の人間なら、わがはいが発する瘴気に当てられれば、そこで倒れているお前の仲間らのように、戦闘不能状態になるのが普通だ。

…万が一倒れなくても、圧倒的な力に対する恐怖や畏怖、もしくは仲間を傷つけられた怒りや憎しみという負の感情が、一挙にあふれ出て来るはずだ。

…しかし、お前には全くそういった感情が現れない。表情にも、さざ波程度の変化も無い。

相も変わらず面白くもないイケメン顔だ。


…それが勇者というものなのか?

だとすれば、勇者の不幸なんてまずそうだな。味に深みがないんだもん。

とろけるように甘いなんて、先代魔王の野郎嘘言いやがって…。


まあ無駄話が過ぎたな。

ごめん、ごめん。わがはい、料理としゃべくりが人間虐殺より好きだから…。

…さあ、お前が動かぬならこちらから行くぞ!


…おいっ!

お前!どこ行くんだ!このたたかいからはにげられないぞ!


…あああ!それはわがはいのレシピノート!

ちょっ、何で隠してある場所知ってるんだよ!見るなよ!返せよ!お前勇者だろうが!


…え?え?何?


……食ってみたいの?


…おい、勇者よ…。…戦闘中だぞ?

…しかもラスボス戦だよ…?


…まあよい。

美味しいものが好きな奴に、魔王も勇者もあるものか!

…でも食べ終わったらちゃんと決着つけるんだぞ!それから、お前がスーパー襲撃したせいで材料なくて、ちょっとしたもんしか作れないけど、文句言うなよ!


…えーと、まず昨日シチュー作る時に余った人間の欲望をこうして切…。

…あ、包丁ないや。わがはい何もそうびしてないし。お前と違って素手で勝負してるし。

ちょっと勇者、お前のドラゴンランス貸せ。それ、もともとわがはいのだから。

…うーん、やっぱりこれじゃあちょっと切りにくいな…。よいしょっと!

…まあ、かなりいびつだがこれでいいか。

これをわがはいの口から出る地獄の炎で、消し炭にならないように注意して焼きながら、人間の不幸を5さじほど垂らすと…。

…ほらよ。人間の欲望焼きの出来上がりだ。冥土の土産に味わっていくがいい。


……。

…うまいか?そうか…。

………。

…よし。じゃあ勝負を…。


…え?何?

…え?え?帰っちゃうの?食べるだけ食べて?

そりゃないよ。さすがに魔王として勇者を見逃すわけにはいかないよ。

勇者がいたら魔物はやられちゃうし、スーパーは潰されちゃうし、わがはいの劣等感も掻き立てられるし…。


…え?


…ゆ、勇者をやめるって!?


…何考えてるんだお前…。


そりゃわがはいだって、チートかってぐらい強いお前が勇者じゃなくなったら、すんごい助かるんだけど…。

…でもいくらお前がやめようと思っても、周囲が許さんだろうさ。

そこに倒れてる可愛い妹も、綺麗な彼女も、ガチムチの戦士も許さんだろう。

それだけじゃないぞ。勇者を育て上げることによって国民の支持を得た王様も。

お前の為に高額な税金を投入し続けた国民も。

欲望。傲慢。怒り。悲しみ…。人間の持つ、負の感情を舐めるなよ。

…ま、お前には解らんだろうがな。運命と思って諦めろ。


…おや。お前がそんな表情をするなんてな。

刷り込まれた理想論を振りかざす、戦闘マシンじゃなかったのか。


…ははあ、多分さっき負のエネルギーがつまった料理を食ったから、抑えてた負の感情が解放されたんだな…。ゴロンゴロンとすげえ勢いで出てきた…。

…お前…。相当溜めこんでたんだな…。


…?

…おや。何だこれは。見たことない。黄金色でとろんとしていて、まるで蜜だな…。

…!!!

…あ、甘いぞ!


…そ、そうか!これが所謂勇者の不幸と言う奴か。

うわ、めっちゃドロドロ出てくるじゃん!

…やった!…こんだけの量があれば、甘いものパーティも夢じゃない!

こうしてはおられん!早速レシピを作成しなければ…。


…おい、そこのお前。

何をポカンとした顔をしておる。わがはいはレシピ制作で忙しいのだ。お前も帰りたければ、不幸を絞り尽くした後にさっさと帰ってしまえ! 料理は食わせてやっても、甘いものは一切分け与えんからな!この黄金色したトロトロは、我々、魔物たちの悲願なのだ!


…なあに。そんな心配そうな顔をするな。お前はその気になれば、人間界を征服できるくらいの能力を持っているではないか?

そんなお前が、どうして人間たちの言うなりに感情を抑え込んだまま勇者を続ける必要がある?

…ま、人間らしくうじうじ悩んで、どうとでも勝手にするがいいさ。

ただし、魔物にはもう手を出すなよ。


それではわがはいはレシピ制作に入る!では、さらばだ!…戦友よ!





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