レシピ4
…お前ら…。静粛に…
っていっても、すでに閑散としてるか…。ははは…。
…ああああ~!全くもってなんたることだ!!!
「首都壊滅大作戦」なんて、決行するんじゃなかった…。
…わがはいは悔しい…!ホントにあと少しだったのに…。
王を捉えようとしたその瞬間に、例によって勇者が現れちゃうんだもんな~!
しかもカジノの景品、ドラゴンランスを片手に持ってさ!手に入れるの早すぎるよ!
金持ちでイケメンで彼女がいて、強くて不死身で、超絶運がよくてギャンブルにも強いってか!!!…ふざけるな…ふざけるなよ!!
そんな存在がいるなんて、わがはいは断じて認めんぞ…!
…いかん…。
こんな時こそ冷静に、状況判断をしなくては…。
…えーと…。じゃあ出席を取ります。生きてる魔物は手を挙げて。
ひー、ふー、みー、よー、いつ…。
…いつ…。
…これでお終いか?どっかの隅でゴースト系の魔物が透明になってたりしてない?
…そうかあ。いないかぁ…。
作戦前は50はいた上級魔物が、5しかいないかあ…。
四天王も、もう1体しか残ってないし…。しかも彼、瀕死の重傷負ってるし…。
……。
…すまなかったな。みんな。
勇者の力を侮った、わがはいのミスだ。
間もなくこの城にも、勇者が乗り込んでくるだろう。
…無論わがはいは、魔王として勇者と対峙する。
…だがお前らは、その前に城を脱出しろ。
いいか。これは魔王としての命令だ。決定事項ゆえ、意見は許さん。
…なにをしみったれた顔をしておる!
いいか。勘違いするなよ。
わがはいは唯、勇者から搾り取るとろける蜜のような不幸を、自分だけで食べちゃおうと思っているだけだからね!お前らなんかにわけてやらないよーだ!わははははは…。
…わかったらさっさと荷物をまとめ、逃げる準備を始めるがいい。
…え?料理?
おいおい…。さすがに魔界一の料理人かつ食通であるわがはいだって、こんな事態に料理を語るほどのんき者じゃあないぞ。
…え、どうしても…?
お前ら、いつもめんどくさそうな顔してたくせに…。
…わはははははは!!お前らもとんだグルメに育ったものだな!
よろしい。きさまらに最高の魔王のレシピを見せてやろう!
今日はわがはいの大好きな、ホワイトシチューのレシピを伝授してやる!
時間がないから手短に言うぞ!
材料!
人間の魂1玉!人間の怒り2本!
人間の傲慢3個!人間の欲望100グラム!
人間の不幸2さじ!
小麦粉5さじ!オリーブオイル4さじ!牛乳500ml!
ちなみにこれは2~3体で食べる分だ!
まずは下ごしらえとして、魂は串切りに、怒りと傲慢は乱切りにするんだ。
それを800 ml程水を張った鍋にぶち込み、中火でくつくつと煮る!
その間に別のフライパンで小麦粉、オリーブオイル、牛乳をゴムベラでしっかり混ぜ合わせながら弱火にかける。…ぽってりとゴムベラに吸い付くようになったらホワイトソースの出来上がりだ!
そしてこのホワイトソースを、先ほどの鍋の中に入れて15分程ことこと煮込む。
隠し味として人の不幸を2さじ入れれば…魔王特製ホワイトシチューの完成だ!
…実は完成品がもうそこにある。
いつもわがはいばっかり食べてるから、偶にはみんなに振る舞おうと思ってな。いっぱい作ってきた。…わがはいも入れて6体じゃあ、多分余るからいっぱいおかわりしていいぞ。
…うまいか?
…そーだよなあ!うまいよな!
人間の負の感情が溶け合って、クリーミーな蟻地獄に落ちていくような旨さがあるよな!
…そうさ。この世に負の感情が無い人間など存在しない!完璧超人、聖人君主など人間の創った愚かな幻想にすぎぬ。勇者もしかり!
人間の負の感情を味わいつくたわがはいが、人間の愚かな欲によって形作られた小僧如きに負けるはずがない!
では皆、さらばだ。…解散!