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レシピ2



みんな、静粛に…。

お前ら、今日は悲しいお知らせがある…。

ほらそこ。そこに座っていたトロルくんが、勇者との激闘の末、お亡くなりになりました…。

「一口でもいいから、甘いものを食べてみたかった…。」それが奴の最後の言葉だ。

わがはい、涙を禁じ得ない。

みんな、まずは勇敢に戦ったトロルくんに盛大な拍手を!


ぱちぱちぱちぱち


それにしても今回の勇者はかなり強いな。

おまけに血筋がよくて、金持ちで、イケメンで…かわいい妹と彼女もち。

…許されざる存在だな。うん。

奴のことを考えるだけで、わがはいの不幸ゲージが満杯になる恐ろしいスペックだ。


…いかん、暗くなってしまったな。

まあよい…。いまのうちにのうのうと幸せを噛みしめているがよい。

それでこそ、絶望の底に叩き落とした時の、搾り取った不幸の甘さが際立つというものよ。


さあ、気を取り直して今日のレシピを紹介しよう。

今日のレシピは、トロルくんの追悼の意味もこめ、プリンにしようと思う!


…おや、みんなできるわけがないって顔してるな?


うんうん、その気持ちはわかる。

魔界にはほぼ甘いものないし、人間からぶんどろうと思っても、砂糖をはじめ甘いものには魔物よけの超強力な結界がはってあるもんな。

いや実際、人間たちの食い物に対する意地汚さは異常だよ。時々自分の魂より大事なんじゃないかって思うもんね。


…そこで、わがはいは考えた。

甘いものがないなら、作っちゃえばいいんじゃない?ってね。

そこで登場するのが…みんなも気になってるだろう。そこで縛られて猿轡されて、うーうー唸ってる人間だ。

今日はこいつから不幸を搾り取って、甘いエキスを抽出しようと思う!


え?そんなことできるわけがないって?

…もちろん、みんなも知っての通り、一般的な人間の不幸はしょうゆ味だ。

しかし、人間であるはずの勇者の不幸はとろけるように甘いと伝えられているではないか!


それならば勇者の如く勇気があり、勇者の如く強い人間だったら、砂糖といわずともレンゲの花びらのはじっこくらいの甘さは抽出できるかもしれないだろ?

この人間、こう見えても格闘大会の世界チャンピオンだから。

そこそこ勇気もあるし強いよ?

まあ、わがはいにかかればワンパンだったけどね。

さすがわがはい!


さあはりきってプリン作るか。

まず、縛ってある世界チャンピオンが懐に忍ばせていたポエムノートを取り出します。


チャンピオンがこのように、「…やめろ!見るなあああ!」みたいな顔をしたら準備オーケー。大声でそれを朗読します。

この時、涙目でやめてくれと懇願されても手を抜かない事。

むしろますます声を大きくするか、ポエムの一節ごとに冷めた目でチラリと一瞥するのが効果的。

全部読み終わったら、「痛ええ~。だからモテないんだよ。」と言う。

これはあんまり大声でなくていい。極めて冷静に耳元で囁くように。

その人間の一番触れられたくない所を狙うんだ。大事だからメモとっとけ。


…お、不幸がふよふよとあふれでてきたな。

これに溶き卵と牛乳をよーく混ぜて、こし器でこす。

あとは蒸し器で一時間ほど蒸すだけ。簡単だろ?

待ってる間、みんなトロルくんの思い出話でもしようではないか。


…よし。できたようだな。

見てくれ!このふんわりとした蒸しあがりを。

おまけにつるっとしてぷりっぷり!

それでは早速…いっただきまーす!



…。

………。

…これは、あれだな…。

所謂、茶碗蒸しというやつだな。

やはり勇者の不幸でないと甘い味は出せないか…。

…。


…だがまあこれはこれで旨いからいいか!

おいしい茶碗蒸しの完成だ!

これをもって今日の「魔王の料理教室兼、トロル君の追悼集会」を終了する!以上だ!解散!




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