怪奇事変 呪われた樹
遅れました、すみません!
第四十三怪 呪われた樹
数年前の話だ、これはネットの噂話を追って友人たちと出かけた時の話。
ある地域にある森林では自殺名所として呼ばれた森があった、そこには沢山の亡くなった方の遺品などが放置されており、一目瞭然だとか。
何故なら警察もその地域に入ると方向感覚を失うため捜査の手があまり進まないとのことだ。
警察犬でさえ同じ場所をグルグルと周ってしまう、そういう場所だ。
当然、携帯の電波も通らない完全な未開の地となり、通称“呪われた森林”と呼ばれている。
「って噂話なんだけど行かないか?」
それが切り出しだった。
当時の彼らは暇を持て余していた、端的に言えば刺激が足りてなかったのだ。
当然会社に勤務もしてたし、それなりにお金をもらえていた、だがそれでも日常に退屈していたのは事実だ。
何かこの退屈を覆す刺激が必要になり、ネットサーフィンをして見つけた投稿がそれにあたったのだ。
——夜間——
車を使って地元の人間でさえあまり通過したいと言われない例の森林に訪れたのは、友人2人と自分だけだった。
「ビニールテープじゃない頑丈なやつ買ってきたから大丈夫だろ?」
「ああ、これを目印にすれば戻れる。所詮噂程度なんだから軽い気持ちで楽しもうぜ」
「そうだな、行こう」
浮かれた3人はそのまま用意周到と言わんばかりに、道具を持って森に足を踏み入れる。
流石に森林と言うこともあって、昼間ですら日の光を通さないほどの暗がりらしく、夜は視界がほとんど見えなかった。
周囲を満面なく照らす光源を作り出すライトでさえ、辛うじて前が見えるだけで、足元も時折照らさなければ分からないレベルであった。
「自殺の名所と言われる理由が分かるね」
「つうか此処で本当に自殺した人物の遺品を見つけたなんて投稿マジかよ?」
「俺等と同じ手段を使って森に入ったんじゃないか?案外奥深くじゃなくて近くに遺品、又は遺体がある可能性だってあるぜ?」
談笑しながら森を進む、徐々に方向感覚を失っていく感覚はあったが、彼らを此処まで余裕にさせているのは予め用意された千切るのも難しいテープが命綱のように「
付いているからだろう。
「今何キロぐらい進んだ?」
「さぁ?まだ数キロも進んでないんじゃね?」
「なんだよ、もうビビッて動けなくなったのか?」
「ち、ちげーよ!成果がなくて退屈なだけだ!」
声を張り上げて言う友人に苦笑しつつ進んで行くと、やがて広間のような場所に出る。
広間と言うか、そこだけ不自然に広がっていると言った方が良いのかもしれない。
だがそこには彼らの求めていた刺激が確かにあった。
吊るされたロープ、傍らには身に羽織っていた衣服、或いは鞄などと言った所有物から何まで…。
興味を注がれた彼らは一目散にそれらを躊躇なく触り中に何か入っていないか確かめる。
「……なーんもない」
「まぁ死ぬ間際だったから残す物もなかったんだろうな」
「呪いの手紙とかあれば面白かったんだけどな……」
「クソ気味が悪いだけじゃん、有り金だけで良いよ、少しはそう言うギャンブル的な期待とかさせてくれよな」
そんな人の死すら馬鹿にする言動を続ける2人の談笑を傍らに1人はある樹の方向を見ていた。
「どうした?」
1人が声をかけると、彼は震える様な声でこう伝えた。
「今、人の顔が映った」
「おいおい、恐怖でチビったみたいな表情すんのやめれ。そんな顔何処にも付いてねーぞ」
照らされた方角を見てもそんな顔は何処にも映っていない。
念のために上の方を見てロープらしきものが吊るされていないか確認をするも、それもなし、完全に彼の見間違いである。
「ちゃんとしろよな、名所って呼ばれてるだけで確証がなきゃただの噂話なんだからなー」
そう言って戻ろうするもう1人が当然止まる。
不思議そうに見つめると、持っていたテープが力なく垂れていることに気づいた。
「お前、テープは?」
「い、いや、此処にくるまでちゃんと持ってたし、時折力を入れて伸ばしてたから問題なかったはず……」
「伸ばしすぎて切れたんじゃ?」
「んなことはねーよ!本当数秒前に確認したんだ!」
焦る友人を傍らに2人はパニックに陥ってた。
落ち着かせるために俺はこう発言した。
「待て待て、仮にテープが緩んだとしても地面に落ちてるならそれを辿って出口に向かえば良いだろう?」
「そ、そうだな」
「お前も、何時までも見たって言う樹に惑わされるな、遺品らしいものも見つけたし、此処で遭難する方が危険だ、さっさと引き上げよう」
「お、おう」
それでも2人はまだ自分たちに起きた問題が気がかりなのか、樹を見つめる友人と、テープを見つめる友人にため息を付きながら、先導して帰り道に付く。
そう、所詮ただの噂話……本当にそんなことがあれば大事件へとつながっているはず。
此処にくる途中見つけた看板もそうだが、警察が不用意に近づかない警告もきっと冗談にすぎない。
人間なのだからある程度、ビビらせておけばそれで問題が片付くと思ったただの意地悪な警告だ。
そう考えてテープを頼りに進むも——その考えが甘かったことに気づくのは直ぐだった。
「お、おい!俺達さっきから……」
「お、同じ所グルグル周ってねーか?」
「そ、そんなはず…テープはだって——」
そう。テープを頼りに出口に出るはずだったのに、先ほどから広間を何往復かしている状態になっていた。
つまり、あり得ない話だが、出口から此処に至るまでの道は完全になくなり、何時間にかテープはこの広間に辿り着くように落ちている現象に見舞われているのだ。
信じがたいことだが、それでも今身に起きていることは事実、いや、それを否定するかのように小走りになる。
当然、先導している自分が走りだせば後ろの2人も走り出すようにして後を追って来る、でも何故かその後を追われる音が不快で、それから逃げる様に走ると——途端に
その音が止んだ。
「お、おい?」
後ろを振り返ると2人が居なかった。
先ほどまで近くに居たはずの2人が音もなく消えてしまったのだ。
自分だけポツンっと取り残された状況下で広間の中心に居ると、急に風が吹き始める。
まるで森そのものが今の状況をあざ笑っているような感覚にさえ陥る。
再びテープを頼りに走り出すも、決まって目的地はいつもこの広間で終わってしまう。
冷汗をかきながら樹を背も足りにした瞬間——まるで樹の硬さではない感覚に驚いて反射的にライトを照らすと、そこには——人の顔が張り付いていた。
「うわぁぁぁぁぁぁ!?」
ライトを放りだして駆け出す。
だが、既に彼の周りにある樹からは視線のようなものを感じ取り、それを追うと——不気味な笑みを浮かべている無数の顔が目印の代わりと言わんばかりに点在していた。
これが最初に友人が見た顔の正体、じゃ足元に触れているこれはなんなのか?
時折、自分の足に絡みついて来るこの樹の根のような感覚ではないこれはなんなのか?
確認しなくても分かる、これは——人の手だ。
『えー続きましてのニュースです。昨夜未明、3人の男性が消息を絶ったことで警察は——』
第四十三怪 人面樹の誘い
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