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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

抵抗あります

作者: 赤川ココ
掲載日:2026/04/29

手慰み、第数弾でごさいます。

今回、虫が出ます(ネタバレ)。

内容も、中々不味いです。

読まれる方は、ご覚悟を。

 人間との婚姻を望んだのは、一族の長の息子だった。

 一族の中で一番逞しく、知性があるはずの、長男だ。

 一族の者が、人間を伴侶にした前例がなく、血を存続させる事が最前提で、跡継ぎである長男は、同族との婚姻が望ましいと、幼い頃から言い含められていた。

 自分たちの種族は多産型で、同時期に誕生した兄弟姉妹が数十人いるから、長男は勘当覚悟で父親に告白した。

 父親である一族の長は、本来の姿も惚れ惚れする程逞しく、強い男だ。

 血筋を残す嫡男の軟派な願いを、真っ向から拒否されかねないと、長男は身構えていたのだが、決死の告白を受けた父親は、真面目な顔で重々しく頷いた。

「分かった。だが、人間の女は見た目以上に弱い生き物だ。子が出来たら、それ相応の心遣いが必要となる。何せ、誕生の仕方が、変わっているそうだからな」

「はい。存じています。ですがっ、あの人には絶対に、私の思いを受け止めて貰います」

 父親は、満足げに頷き、言い切った。

「では早々に、その人間を迎えに行って来い。邪魔者は今後の為に、蹴散らしておけ」

 許された。

 緊張が解け、喜びで顔を輝かせた長男は、元気な声で父親の意に答え、その勢いのまま人間の住む里へと、飛び出して行った。


 よし。

 これで、前の人生程の不幸は、免れる。

 族長は内心、安堵していた。

 前の人生では、散々だった。

 前例がない人間との婚姻を、取り付く島なく反対した事が、一族全体の悲劇を産んでしまったのだ。

 この国の住民の殆どは、手足合わせて六本あるのが平常で、二本足で歩く生き物は、人間だけだ。

 他国にいる毛むくじゃらの四つ足の生き物に似ているが、皮膚は柔らかく、力も弱い。

 生まれ方も、自分たちが卵から、幼虫で大量に生まれるのに対し、人間は殆ど大人の小型版で、腹の中から生まれてくる。

 前の人生では知らなかったが、その違いを受け入れられる人間は、極僅からしかった。

 長の反対に里を飛び出した長男は、近くの人間の里に向かい、目当ての人間を連れて、駆け落ちした。

 そして、冬が来る前に、戻って来た。

 その腕の中には、人間が産み落としたと言う、大量の小さな卵を抱えていた。

 聞くと、情を交わして直ぐに身籠り、やがて卵を産み落としたが、人間は自分が産んだ卵を見て発狂し、止める間も無く水に飛び込んでしまったと言う。

「助ける間が、ありませんでした」

 長男は、伴侶がいなくなり、悲痛な気持ちで里を頼って来たのだ。

 その意を汲んで、族長率いる里の全員が、彼の愚行を許し、珍しい種族との子供の誕生を、心待ちにしていたのだが、いざ誕生した子供たちを見た全員が、その悍ましい姿に恐怖した。

 子供たちは全員、幼虫の姿だった。

 体は。

 だが頭の形が、人間の物だった。

 それを見た長男は、完全に壊れた。

 混乱する長男を隔離し、悍ましい子供たちは、直ぐに首を落としたが、里全体がその記憶を深く刻んでしまった。

 そうした騒動の直後、里はある一族の襲撃を受けた。

 力の弱い人間たちと共存関係にある、無数の種族からなる一団で、リーダーは一族と同種だが、比べ物にならないくらい、小さな個体だ。

 烏合の衆とも見えるその一団に遅れを取ったのは、先の衝撃のせい、のはずだ。

 強靭さで知られる一族は、一夜にして滅ぼされてしまった。

 死屍累々の中引きづり出された長は、自分よりも二周りは小さい同種を、信じられない気持ちで見上げた。

 自分を見下ろす同種が、冷静に問う。

「お前の息子が連れ去った女が、産み落とした子は? 引き渡してくれるなら、これ以上お前たちを減らさないでやる」

 生存者の、絶望の声が、背後で響く。

 それを目の前で見た同種が、怒りで声を籠らせた。

「嫌がる人間を連れ去り、子を身籠らたのも許せぬのに、誕生した子らすら、死なせたのかっ」

「仕方がないだろうっ。まさか人間との子が、あんなに悍ましい生き物とはっ」

「黙れっ」

 同種は目を見開いて怒鳴り、次いで隣に立つ者を見た。

 それを受けた更に小柄な種が、静かに言う。

「人間との混血は、蛹から羽化する時に、化ける」

「は?」

「知能は人間の物を受け継いで、我が里では、大事な懐刀だ」

 勿論、人間と番う者は、殆どいない。

「人間は元々、この世界に追放されて来たからな。我らも、協力関係になるまで、番う相手と言う認識は、なかった」

「番いたいと願っても、人間たちの方に、抵抗がある場合が多いからな。お前の息子が拐かした女のように」

「っ」

「あのな、あの女には、人間の旦那がいた。そいつは、樹液を管理、維持してくれる、貴重な奴だ」

 彼の頼みを受けて女を探したが、山奥の湖に浮かんでいるのが発見され、里としても許す範囲を超えてしまった。

「だが、当事者の願いが叶うなら、我々が我慢しようと、代表たちとも話して決定したと言うのにっ」

「本当に、愚かで悍ましいのは、お前らの方なのにな。……カブトの、もう、いいか?」

 同種の隣で確認したある種の女は、他の種族たちが蹂躙した、巨大な一族たちを見回した。

 その目は、既に生き物を見る目ではない。

 自分たちの巣に持ち帰る、兄弟たちへの土産を見る目だった。

 その後、大量の蟻に群がられ息絶えた、らしい。

 死を覚悟した途端、妻が卵を産み落とした時期に、巻き戻っていた。

 巻き戻った時、その時の最期を覚えていなかった事を、心から感謝した。

 四つ足の生き物が多く住む国の獣神が、種族の滅亡を憂う話を、彼らにくっついて旅している種族に聞いたことがある。

 ああ、本当に、そう言う奇跡があるのだなと、族長は感じ入り、今度は判断を間違わないと誓った。

 そして今、長男を送り出した長は、同じく巻き戻った里の男衆と共に、万全の体制で人間を迎え入れる準備を始めていた。

 成長した混血は、里の繁栄のために、一役かってくれると、その日を楽しみに、長男の帰りを心待ちにしていたのだが…..

 ある世界では、一番大きなカブト虫として知られる、里の者たちは知らない。

 巻き戻ったのが、自分たちだけではなかった事を。

 同じ時期に巻き戻った、女の関係者たちが、連れ去りに来た長男を逆に捕らえ、腹に穴を開けて送り返して来る未来が、もうすぐそこまで来ている事を、彼らは全く、予想すらしていなかった。



 

 

 


猫を拾った頃、悪夢を見ました。

足に、カマキリのような昆虫が、チクチクと群がり、払っても払っても、すぐに群がってくる、酷い夢でした。

きっと、猫飼いあるあるです、よね?

ちなみに、黒いカサカサの虫と、でかい無数の足付きの虫以外は、平気な方です。

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