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婚約破棄してきた元婚約者の姉と婚約することになった  作者: 夕凪 瓊紗.com


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【25】冬の休息日



――――秋が過ぎあっという間に冬が来る。


暖房を入れていても今日の寝室はいつも以上にひんやりとしている。


「ん……うん……っ」

「アルド?」

腕の中でもぞもぞと動く妻の姿にホッとする。


「寒くはないか?」

「ちょっと寒いけどアルドが抱き締めてくれるから暖かいです!」

「それは良かった」

大切に大切に愛でようとさらに布団に潜ろうとすればメイドたちが起きる時間だと急かしてくる。


「少しくらいいいじゃないか。今日は冬の休息日なんだから」

「早く終わらせないと私たちの休息日が来ませんわ」

「……それは済まなかった」

メイドたちも順番に休息日を取るはずだが、それでも時間交代制だものな。あまり文句を言うわけにもいくまい。


「そう言えば今日は休息日ですものね」

「ああ。だから俺も今日はオフだ」

とは言え交代制だからたまたま今年は休息日に休暇がもらえたわけだが。


「休息日……と言うのは何をすればいいのでしょうか」

リタにとっては初めての休息日だろうか。実家ではまともに休息日を過ごせそうにはないからな。


「休息日は家族で家でゆっくり過ごす日だ」

前世の感覚で言えばクリスマスに近いが、こちらではプレゼント交換などはしないのだ。


「家族でゆっくり……具体的に何をすればいいのか」

「それならまずは朝食だ。朝食を終えたら早速休息日を始めよう」

「はい!張り切って頑張ります!」

いや……休む日だから張り切る日ではないのだが。しかしそんなリタもかわいらしいな。


※※※


いつもの朝食を終え向かったのは暖房の効いた部屋のソファーの元。


「ここで何をするんでしょう」

「何でもいいぞ」

ソファーに腰掛ければリタにも座るように示す。


「俺は本でも読むよ」

そのために幾らか持ってきた。


「リタも本を読んでもいいし、何でもいい。例えば……そうだな。最近は裁縫関係は……」

「はい!編み物にチャレンジしています!」

「ならうってつけだな。ここでやるといい」

「で……ですけど」

「どうした?」

何故か恥ずかしがっていないか?


「何が出来るかは……ナイショですから!」

「ああ……それくらいなら」

協力できると思うが。

早速編み棒と毛糸を持ってきたリタが隣に腰掛ける。


「ほら、リタも膝掛け」

「わぁ、あったかい!いいですね」

「だろう?こうやってただ好きに過ごせばいい。それが休息日なんだ」

「うーん……いつもよりも贅沢な休日ってことでしょうか?」

「そうそう、そんな感じ」

暫くすればメイドたちがホットドリンクを持ってきてくれる。

今日も働いてくれる彼女たちには改めて感謝だな。


「みんな交代で休息日を取ってるか?」

「もちろんですわ、旦那さま。でもリタさまの休息日当番は争奪戦なのでお気になさらず」

「え……?」

何故争奪戦なのだろう。


先程から夢中で編み物を編んでいる姿はかわいらしいが。しかし何を編んでいるのか……それは触れてはならないのだったな。


俺も久々にゆっくり本を読もう。


ペラペラとページをめくりつつも、おかわりのホットドリンクを手に取る。


「エッグノッグか?これ、旨いんだよ」

前世の日本では馴染みが薄かったが、外国では定番と聞いたことがある。こちらでも冬の休息日にはココアやホットワインと並んで人気のドリンクだ。


「エッグノッグ……ですか?」

「リタは初めてか?リタはノンアルの方をな」

「ありがとうございます、アルド。アルドの方はアルコール入りですか?」

「ん?まぁな」

「私も早く飲めるようになりたいです」

こちらでは18歳を過ぎればお酒は誰でも飲めるのだが。リタはまだまだお酒に慣れていないようだ。


「ゆっくりと慣れていくといい。慣れたら今度はホットワインなんかもおすすめだぞ」

「ホットワイン……どんな味わいななのでしょうか」

「ちょっとクセはあるが……飲みにくければ白ワインのホットも飲みやすい。今度色々と飲んでみよう。飲めなければ俺が飲むよ」

「いいのですか?」

「もちろん。これでも任務で慣らされて……と、休息日に仕事の話は野暮だった」

「そう言うものですか?」

「ああ、そう言うものなんだ」

クスクスと笑い合う穏やかな休息日。


こんな日が来るなんて、かつては思っても見なかったものな。


※※※


うとうとと……いつの間にか寝落ちていたようだ。


「ん……あぁ……リタ?」

「出来ました!」

その瞬間、隣で嬉しそうな声が響く。


「アルド!」

リタが作っていた編み物をふわりと首にかけてくる。


「アルドのために編んでいたんです」

「マフラー?」

「はい!ようやっと出来ました!」

そうか……これをずっと作っていたのか。


「ありがとう、あったかいよ」

「良かった!でも……作り終えてしまいました」

「大丈夫、この後は晩餐会だから」

「そう言えばそろそろお夕飯の……」

その時、ぐぅ……と腹の虫の音がしてハッとする。


「これはそのっ」

何だか最初に会った時のことを思い出してしまうな。


「お腹も減って来ましたし」

「ああ。早速食堂に行こうか。休息日の晩餐はいつもよりも豪華だからな」

「楽しみです!あぁでも、決して食い意地が張っているわけでは……っ」

「食い意地が張っているリタもかわいいぞ?」

「もう、アルドったら!」

リタがぷくっと頬を膨らませるさまがまたかわいらしいな。


※※※


休息日のいつもよりも豪華な晩餐にリタの表情はすぐに幸せそうに戻る。


「とても美味しいです」

「ああ。せっかくの休息日だからな。リタ、初めての休息日はどうだった?」

「その……アルドの隣にずっといられる1日がとても幸福で、大好きな日です!」

「……!そうだな。俺も1日リタの隣にいられて幸せな日だ。こんな幸せな日々がいつまでも続くことを願って」

「はい、私も願います」

差し出したグラス同士をカチリと乾杯する。リタの方はソーダだが、しかし色を揃えてくれたから雰囲気作りには文句無しだ。


「リタ、これからも幸せにする」

「私もですよ、アルド」

「ああ、ありがとう」


リタからもらった小さな幸せも大きな幸せも、ずっとずっと大切にしていけますように。


休息日はそんな細やかな一年を願う日でもあるのだから。




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