表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄してきた元婚約者の姉と婚約することになった  作者: 夕凪 瓊紗.com


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/26

【11】ローサ男爵家



――――ローサ男爵家の謀反の疑い。その噂は瞬く間に社交界の話題の中心となっていることだろう。


「さて、目ぼしいものが見つかるかねえ」

「だといいけどね、隊長」

闇夜に紛れてヴィーが躍り出る。


「既に邸宅捜索が行われ屋敷のものたちも集められて拘束されているよ」

「ふむ、上出来だ」


「だけど逃げ出そうとしたものが数名。捕らえて別室で尋問中」

「ふぅん?どうせ男爵家が落ち目になる前に金目のものだけでも持ち出そうとしたんだろうが」

「だねぇ。そんなことしなければ罪が重くなることもなかったろうにねぇ」


「ま、自業自得だ。とは言え男爵家にそこまでの財があるはずがない」

「あるとすればファウストがアニエーゼに貢いだものくらいだろうね」

「ああ。それに関しては王家の財だから全部返してもらう。それを盗んだのだとしたらそれだけ重罪だ」

「知っていたにしろ、知らなかったにしろ……ね?」

「まぁな」

次々と差し押さえられ証拠物品が引きずり出される中、部下が何かを持って駆けてくる。


「隊長、奇妙なものを見付けました」

「うん……?日記か」

他者の日記を見るなど下品かもしれないが捜査ならば仕方がないよな。これも大切な証拠物品だ。


「へぇ……何語かなぁ、これ」

ヴィーが不思議そうに覗き込む。


「ああ、妖精さんの国の言葉だ」

「へ?読めるの?アルド」

「まぁな」

「いつの間に妖精なんかと知り合ったの?俺知らないけど」

「やめろ、その目」

マジの病んでるヤツの目だろ。つーかこれ、日本語だし。妖精さんの国とかじゃねぇから。


「ウソだって。これも俺の特殊な闇能力だ」

「ふ――――――……ん」

ドキッ。同じ闇魔力の使い手としては懐疑的に聴こえたろうか。やはりだまくらかせないか……?


「ま、いいや。そう言うことにしておくよ」

「……うむ、分かったのならいい」

せ……セーフ。何とか納得したらしい。はぁ……心臓に悪いわっ!


「さて、日記の中身はどれどれ……?」

ペラペラとページをめくっていく。

「ふぅん?」

中身は完全にお花畑である。自分のことをさながら乙女ゲームのヒロインのように捉え、攻略対象に見立てた令息に目を付けた。


たまたまファウストに手を出したら上手く行ったからリタを悪役令嬢に見立てて婚約破棄までさせたのか。


「どう?アルド」

「今までの凶行のシナリオが書いてある」

「へぇ……計画的犯行だったってことね。ファウスト殿下とのことや婚約破棄も?」

「そうだ。あの女、そんなことまで妄想してやりやがったんだ」

「信じがたいけど……実際やらかしたんだものねぇ」

前世ならテンプレとしてよくあること。しかしこの世界の生粋の住民からしたら考えがたいことだろうな。


「その後のことも書いてあるのかな?」

「ああ。リヴィオを攻略して二股する気だったようだ」

その上目指すはまさに逆ハールート。第1王子と第2王子がどちらも攻略対象だなんて夢踊る展開かもしれんが。現実的にみたら……無理だろ。


「ふーん。常軌を逸してない?」

さらには常軌を逸したヤツにも言われるとは……相当だな。


「そんな計画まで露になって……どうなるかねぇ」

「とりま、陛下に対しあのような失礼な態度を取ったんだ。ただじゃぁ済まないさ」

「ふふっ、また楽しい駒が手に入るなら俺はいいんだけど」

「お前なぁ……」

このヤンデレに捕まるとろくなことにならないな。


※※※


大理石の床を素通りし、音もなく進めば。俺たちしか知らないルートで素知らぬ顔で傍らに降り立つ。


「ローサ男爵夫妻はどうです?兄上」

「ああ。現在取り調べ中でな。憔悴しきっているようだ」

兄上が嘆息する。


「ま、夫妻は寝耳に水だったろうが……自分らの娘が王子に言い寄って婚約破棄までさせたのに、知らぬ存ぜぬでパーティーに来るなんてどんな面の皮の厚さだ」

「確かにそうですね。普通ならば令嬢を謹慎させて教育でもしそうなものですが」


「そうだ。さらには恥ずかしくて社交界になど顔を出せんだろう」

「違いないですね。それともファウストといい仲になったから許されたとか思っていたのでしょうか」


「さてなぁ。普通に考えて男爵令嬢と王子は身分が離れすぎている」

「それ相応の功績をたてたのならともかく。打ち立てたのは王族に不名誉な婚約破棄ですものね」

「……全く。私の顔に泥を塗ったと分からんのか」

「兄上が命じた婚約を破棄させて婚約者を気取ったわけですしね」

実際、パーティーではアニエーゼが婚約者を自称していたのだ。


「ところで令嬢の方はどうなりました?」

「取り調べを行った近衛騎士から報告があった。そちらは意味の分からないことを叫んでいる。だがお前の解読してくれた日記に沿った内容のようだな」

「でしょう?」

しかし根っからの異世界人には相変わらず理解しがたいものらしい。


「しかしやったことはやったこと。さらには謀反の疑いがかけられている」

「ですよね」


「厳罰に処さねばまた同じことの繰り返しだ」

「しかし彼女らが他のものを王として崇める証拠や王権を打倒しようとする証拠はございませんでした」

「ううむ……」

「あるのはお花畑令嬢の妄想のみ」


「そうであるならば……男爵夫妻は臣下でありながら令嬢教育を怠ったとして貴族籍から抜き平民とする」

「でしょうね。王への忠誠心をしっかりと叩き込まなかったのですから」

「その上国外追放だ」

「ま、そうなりますよね」

彼らは国民である資格すら剥奪される。


「男爵令嬢はどうされます?」

「それが困っている」

「単なる国外追放では済ませられませんしね。ファウスト殿下も誘惑され騙された」

「そう言う体にしなければ私は息子を処断せねばなるまい」

「しかし事実ではあるかと」

「どういうことだ?」


「『強制力』。彼女の『ヒロイン理論』には強制力と言う一種の暗示、もしくは魅了の類いが含まれていた」

「まるで闇魔法ではないか」

「ええ。しかし彼女の属性は陛下の足元にも及びませんが光」

「足元にもって……まぁ彼女は妄想の中で『光の乙女』を騙っていたがそんな大層な魔力ではない」

「しかし光魔力を持っていたことで彼女の妄想は悲劇のヒロインへと駆り立てた」

男爵家に生まれ苦労しているヒロインが王子さまや高位貴族令息に溺愛されハッピーエンドを迎える物語。


「実際、彼女は普通の男爵令嬢です。対して努力もせず夢見がちなだけの」

「その上貴族令嬢としての一般常識もない」

「陛下や王位継承権保持者への態度もなってないですしね」

こちとら王位継承権第3位である。それを知らずに喧嘩を売るとは対したものだ。知っていて喧嘩を売った女もいたがな。


「しかし彼女は光属性で暗示、魅了の類いを使った稀有な存在」

彼女は自らの妄想通り『特別』になれるのだ。


「表向きは平民かつ国家反逆の疑いで永年投獄」

「裏向きは光属性での暗示や魅了の魔法が行使できるのか……その実験」

「それがよかろう」

「では彼女の身はこちらで拘束、実験材料にいたします」

「ああ」

これで……リタに散々なことをしてくれた報いを受けさせられるだろう。しかしながら彼女がファウストに婚約破棄をさせたお陰で俺はリタと出会えたのも事実。


「特別サービスで自我は残しておいてやろう」

本人にとってそれが幸福かは……俺は知らないがな。


「了解した」

闇夜に紛れてヴィーの声がふっと湧き出、そこには元々何もなかったかのように静寂が訪れる。


※※※


扉を潜ればいつものように駆けてくる姿を見てホッと安心する。

「お帰りなさいませ、アルドさま」

「ただいま、リタ」


「今日はプチケーキを作ってみたのです。早速お茶にされますか?」

「ああ、そうしよう」

仕事終わりには願っても見ないご褒美だな。


リタお手製のプチケーキは色が様々で、色々と挑戦したようである。


「こちらがチョコレート、イチゴ、チーズ、それから料理長のアイディアでオレンジです」

「どれも旨そうだ」

「はい!召し上がれ」

「それじゃぁ早速、いただきます」

プチケーキは一口口に含めば蕩けるようで美味しい。さらにはオレンジも。


「ん……オレンジの酸味がちょうどよくて最高だな」

「わぁ……っ!良かったです!」

リタの満面の笑み。それだけで何かが浄化されるような感覚に陥る。


やはりこれは……単なる偶然じゃないか。ずっと気になっていたことがある。


今夜にでもリタに話してみよう。


※※※


シャワーを終えて戻れば、この頃はすっかり悪夢を見なくなったことを思い出す。


「お待たせ、リタ」

全てはこの少女との邂逅から始まった。


「はい、アルドさま」

「リタ、これから話すことはリタにも関わることだから伝えておく」

「ええと……はい」

「ローサ男爵夫妻は国外追放となり、令嬢アニエーゼも平民降下の上永年投獄となった。国家反逆罪の疑いをかけられるようなことをしたのだ。これは当然の裁定だ」

「ええ……残念ですね」

リタが瞼に影を落とす。

自分にあんなことをした令嬢だと言うのに、この子は優しすぎるのだ。


「でも彼女がファウストさまに婚約破棄をさせたから私はアルドさまと出会うことが出来ました」

「それも事実だな。ファウストのことは……」

リタはどう思っているのだろうか。思えば聞いたことがなかった。


「も、もちろん未練などありません!むしろ……その。ファウストさまも婚約した当初はお優しかったのです」

意外だな。婚約破棄までしたのはアニエーゼの影響だろうが、それにしてもリタに向ける目に愛情があったようには思えなかった。


「ですが私のスキルや魔力がいつになっても発現せず、私は無能と蔑まれました」

「……っ」

やっぱり第6隊の権力を乱用して一発殴っとくべきだったか……?


「だから……私が無能でも関係ないと言ってくれたアルドさまが私にとっては最愛の御方なのです」

「リタ……っ!その通りだ。スキルも魔力も関係ない。俺はリタだから妻になってくれて嬉しいんだ」

「アルドさま……!」

「それにな……もしかしたらリタは無能ではないかもしれない」

「え……っ」

「だがまだ確証がないんだ。確証を得るためには……そうだな。少々厄介なヤツを相手にしないといけない」

「その方は……」

「心配ない。任せておけ」

「アルドさまが仰るのでしたら」

リタが薄く微笑む。


リタの寝息を見守りながらふと奇妙な感覚に気が付く。


「何だ?」


気配を追ってベッドを抜け出せば、バルコニーに目当ての人影を見付ける。


「ヴィー?」

いつもはべったり張り付いているくせにどうした?まさか夫婦だからと気を遣って……コイツがそんなタマだろうか。


「何をしている?通信か?」

「ん……?ああ、アルド。何でもないよ」

何でもないって……。


「どうしたの?俺の視線がなくて寂しくなった?」

「バカ、そんなはずあるか。ちょっと気になっただけだ」

「それを寂しくなったって言うんじゃん。俺も戻るよ」

「……そうか」

しかし何故だろうか。その日のヴィーの様子がどこか気にかかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ