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婚約破棄してきた元婚約者の姉と婚約することになった  作者: 夕凪 瓊紗.com


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【10】第6隊の任務



――――多くの転生者からすると社交パーティーなど面倒なものだが。


「よく似合ってるよ」

「は……はい!ありがとうございます!」

とても可愛らしいリタを毎回見られるのなら悪くはない。


本日はアメジストのような美しいドレスにリタを象徴するような真珠のアクセサリーである。


「あの……今回のパーティーでは楽しみにしていることがあるんです!」

「うん?何だろう」

「美味しいお菓子を食べて、研究するんです!」

「そうか……それはいいな」

「はい。プロのパティシエの技には遠く及びませんが、美味しいものを食べるのも勉強になるそうです!」

「なら、陛下への挨拶を済ませたら早速見に行ってみよう」

「はい!」

彼女が勉強熱心なのが俺のためってのが嬉しいよな。


「アルドよ、先日の捕物の件、聞き及んだぞ」

「陛下、それは……っ」


「その……捕物ですか?」

「ええとなぁ、リタ。……ジョヴァンナがとある貴族邸に突撃して捕縛されると言う事件があってな……」

「まぁ……」

「しかし騎士団の捕縛とは言え既に釈放されているだろう」

「そうでしたか……ではパーティーにも……」


「それはない。出禁にしてあるからな」

「陛下……」

それはありがたいがよくもリタの前で言ってくれたなと威嚇はしておく。


「何だろう……今寒気が」

「お風邪ですか?陛下」

「何か白々しいぞ弟よ!相変わらず『兄上』呼びしてくれぬし!」

「今は臣下の身ですので。ああ義姉上もご機嫌麗しゅう」

「ええ、アルドさん、リタさん」

義姉上がにこりと微笑む横で兄上が驚愕する。


「リュシルだけずるくないか?」

「はいはい、奥が詰まってますんでね」

リタをエスコートしながら退散っと。


「そんなぁっ!アルドおおぉっ!」

次に挨拶に来た貴族が微妙な表情を浮かべているが気にしたら敗けだ、こう言うのは。


「ごきげんよう、王太子殿下」

「ええ、相変わらず手厳しいですね。叔父上」

「陛下は甘やかすと途端にだらしない顔になりますので」

「それは否定しません」

さすがは長男、分かっている。王太子であり第1王子であるリヴィオ・ソーレはダークグリーンの髪にロイヤルブルーの瞳の美青年だ。


「いつかの件では弟がリタ夫人に失礼を」

「お前が気にすることじゃない、リヴィオ。本人を見かけたら思いっきり威嚇しておくから」

「叔父上が本気で威嚇をしたらパーティー会場が恐怖一色に染まりますよ」

「ふんっ、褒めるなよ」

「……褒めてません。そこんところ、本当に兄弟ですね」

え……?そうか……?


リヴィオに不本意なひと言を言われつつもリタの前だ。自重してやろう。


「それにしても……今日は婚約者のレティツィア嬢はどうした?」

「それがその……先日どうしてかローサ男爵令嬢のアニエーゼ嬢が絡んで来まして……」

「何故?」

「さて……攻略だの次の悪役令嬢だのよく分からず」

まさかその女、ファウストを攻略したから次はリヴィオとか流行りの乙女ゲームものみたいなこと考えてないよな?


「ファウストについて王族の席にまで座ろうとしたので本日は陛下がファウストも王族用の席から追い出しております」

「ふぅん?懲りもせずアニエーゼ嬢と出席したか」

「その通り。婚約者でもないのにいい度胸をしていますよ」

「ほんとお前も苦労するな」

「声を大にしては言えませんが。どうすれば弟がまともな道に戻れるのか」

「俺たちは年齢(とし)が離れていたからなぁ。兄貴でもあり父親代わりでもあった」

父上は母上のことがあったから……俺を息子として見たことはない。


「その……失礼な話を」

リヴィオがハッとする。リヴィオはその時代を知っていたわけではなかろうが、ある程度の年齢なら俺と父上の確執も知っている。リヴィオもそんな空気を感じ取ったのだろうか。


「いいよ、別にお前なら」

あの頃の兄上にもそっくりだし。


「ファウストならひっぱたくが」

「ちょ……っ、アルドさま!?」

「驚いたリタもかわいいな」


「リタ夫人のかわいらしい顔見たさに縁起でもないことを仰らないでください、叔父上。あれでも……弟ですから」

「リヴィオ……」

全く、嫌に兄弟思いなところは遺伝したのかねぇ。


「ま、何事もないことを祈るよ」

「ええ、私もです。ではパーティーをお楽しみください、叔父上。リタ夫人」

「ああ、リヴィオ」

「ありがとうございます、王太子殿下」


※※※


パーティーとは主催への挨拶を終えれば更なる挨拶回りもよし、歓談もよし、ダンスを踊るもよしで自由だが俺たちは……。


「さて、王族への挨拶はこれで終わりだ。リタ、早速スイーツブースへ行こうか」

「はい!アルドさま!」


「お……っ。結構たくさんありそうだ」

「ええ。最初は何にしましょうか」

「食べたいものを選ぶといい。何事も勉強にはなるはずだ」

「そうですよね!それじゃぁ……このプチケーキ、美味しそうです!」

「ああ。幾つか食べてみよう」

「はい!」


「んんっ、なかなかいけるな」

「はい!どれも控えめな甘さなのに濃厚で……このイチゴのプチケーキも美味しいです」

「どれどれ」

はむっと口に含めば、爽やかな甘酸っぱさなのに濃厚な風味である。


「ひとつだけでも満足してしまいそうだ」

「さすがは王宮のお料理です!ですけど真似できると言われると……」

「いや、完璧に真似は出来ずともケーキなら料理長も祝いの席でたまに作っていた。簡単なものなら教えてもらえるんじゃないか?」

「まぁ、でしたら……!帰ったら早速チャレンジですね!」

「ああ」

「作ったらご馳走します!」

「楽しみにしてるよ」

「アルドさま……!何だか気合いが入ってきました!他にも味見してみます!」

「入るのか?」

「えと……決して食い意地が張ってるわけでは……」

「いや、昔からの格言に『スイーツはベツバラ』と言うものがある」

「聞いたことがあります!スイーツはベツバラ!まだまだいけます!」

「ははは、そうか。なら好きなものをたくさん食べてくれ」

「よし、頑張りますよ!」

普通は頑張って食べるものではないが俺のために勉強しようとしてくれているのだ。応援しないわけにもいくまい。


「こちらはチーズと……それからメロン!どれも美味しいです!」

「それは何より」

俺もリタを眺めながら満足していた……その時だった。


「ファウストさまぁっ!アニー、次はスイーツが食べたいわぁ」

「ああ、アニー。こちらのようだ」

ファウストにアニー……男爵令嬢アニエーゼ・ローザか!


そしてかち合った両パートナーは顔を合わせて制止する。


「な、何故リタがここにいる!」

「そうよぉっ!悪役令嬢は破滅したはずよ!?」


「……っ」

リタが脅えたように俺の腕にすがってくる。


「何故も何も、陛下に招待されたからだ。陛下の招待にケチをつける気か、ファウスト」

「その……それはっ」

「ちょっとファウストさま、何で黙るのよっ!大体誰よ、アンタ」

アニエーゼが俺を睨み付けてくる。


「あ゛?俺の顔も知らねえでよくもリタに喧嘩吹っ掛けたな」

しかも『悪役令嬢』だと?はっきりと本人の口から聞けばやはりと確信する。彼女はテンプレの男爵令嬢も転生者もしくは憑依の可能性が高い。


「何なのよ、そんな平凡顔引っ提げて、悪役令嬢も見下げたものね!哀れだわ!」

「アニー、ダメだ!この御方は!」

ファウストが必死にアニエーゼを止めようとするが、アニエーゼは聞く耳を持たない。


「何よファウスト!まずはこの悪役令嬢をパーティー会場から追い出して!じゃなきゃ私が安心してパーティーを楽しめないわ!」

「出ていくのはお前の方だ!馬鹿者どもが!」

「何よアンタ、私に指図する気?」

「お前こそ何様だ。たかだか男爵令嬢が」

「だから何だって言うのよ!私はファウストさまの婚約者なんだから!」


「は……?」

この場にいるほとんどの貴族がそう心の中で漏らしたろう。

「兄上がそれを認めたなどと言う話は聞かないが」

むしろ聞いていたら俺の耳に入らぬわけがない。


「は?アンタの兄が何?何でアンタみたいな平凡男の兄が認めなきゃならないの?バッカじゃない?」

「アニー!!!」

ファウストの顔が真っ青である。


「ふむ……酷いいいようだな。騒ぎを聞き付け顔を見せに来れば」

その人物にファウストが凍り付く。


「あ……王さまぁっ!この男が私に酷いことを言うのよ!その上その兄も!これは完全に謀反だわ!そうは思わないかしら!」

「ローサ男爵家では一体どんな令嬢教育をしているのだろうな?」

「え……?」


「その者は……アルドは私の弟だ」

「は……?」


「つまりその兄と言うのは私のことだが?」

「えと……どう言うことよ、ファウスト」

「こ……この御方は父上の弟で王弟殿下のアルド叔父上だ」

「は……っ!?」

ここでようやくアニエーゼが状況を悟ったようだ。


「さて……謀反だ何だと騒いでいたが……。国王である私に随分ないいようだ」

「それはそのぅ……」


「それに私が認めていないのに婚約者を名乗ろうとは。ローサ男爵令嬢は……ローサ男爵家は一体どこの王に仕えている!」

「ひ……っ」

兄上の剣幕にさすがのアニエーゼも尻込みする。


「アルド……いや、第6隊隊長アルド・オスクリタ」

「はい、陛下」

「ローサ男爵家を謀反の疑いで邸宅捜索せよ」

「は……!」


「また、令嬢及びその両親は捕縛」

瞬時に近衛騎士たちが動きその一部はアニエーゼを拘束する。


「ちょ……何なのよこれぇっ!ファウストさまぁっ、助けてぇっ」

「え……っと、その」

さすがのファウストも動けないのだ。今アニエーゼを庇えば自分も謀反の疑いで拘束されるから。


「せっかくファウストを攻略して次はリヴィオを攻略しようと思ってたのに!」

何だコイツは。やはり乙女ゲーム感覚でリヴィオにまで手を出そうとしていたのか?

さらにはリヴィオの婚約者にまで因縁をつけたと言う。


「全部全部その悪役令嬢のせいよぉっ!」

「いい加減にしろ!」

「ひ……っ」

「何でもかんでもリタのせいにするな!」


「な……何なのよぉ……私はヒロインなのにぃっ」

「貴様がヒロインだろうがなかろうが、何でもかんでも好き勝手できると思うな!」

「何なのよぉ、アンタ!」

それは俺が転生者かどうか疑っているのか?いいや、この女にはその能すらないだろう。


「お前が喧嘩を売った存在がどういうもんか……これからたっぷりと知ることになる。それから……ファウスト」

「お……叔父上」

「そろそろ身の振り方を考えろ。いつまでもそこの女に引っ付き第6隊の範疇になるか、手を切るか」

俺たち第6隊の裏の顔。それは王族ですら捕縛できる監察の一面だ。それは時に王にすら及ぶ。俺たちは王の剣であり同時に監視人。


「お前も……俺たち第6隊がいる意味を知らんわけではあるまい」

「……っ」

ファウストが青い顔で俯く。


「少しは兄のリヴィオの気持ちくらい考えてやれ」

「……」

沈黙はどんな答えを意味するのか。

それはファウストの今後の身の振り方次第である。




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