閃光の教員、その名を行動で示す
「今のは一体――魔法陣の暴走、そして暴走時特有の傷。しかしそれが一瞬で」
アッシュランスとミアベリルもまた、魔法陣の暴走に焦りを見せていた。しかしノアたちと同じように所持していた魔石が割れると同時に傷も消え、2人は足を止めていた。
アッシュランスはシェリルが設置した魔石を回収している途中であり、改めてミアベリルの案内の下近くにあった魔石に手を伸ばした。
「この魔石が発動して魔法陣が現れたようだが――ヴァンガルド?」
「……」
ミアベリルが両耳を押さえてうずくまっており、アッシュランスがすぐに彼女に駆け寄った。
「音、が……」
「音?」
アッシュランスは首を傾げて耳を澄ませてみるのだが、確かにその耳に入る微かな音。その音の発生源を探ろうと耳をあちこちに立てるのだが、どうにもその音は2人から互いに流れており、暫くするとその音が消えていった。
「これか。しかし一体、何が起きたんだ」
「……小さいほう、の、魔石から、変な感じが、して、私の、魔法陣に干渉、制御、出来なくなって、そうしたら、大きな魔石が私たちに干渉、音を出して、小さい魔石が、広げた空間? を、壊して」
「領域系統の魔法で魔法陣を誤作動させたのか。シェリル=ノーブルラントめ、とんでもない魔法を使いおって――しかし真に恐ろしいのはアリア=ダンテミリオか。空間、領域系統の効果範囲などたかが知れている。なにを基準に発生させたのかはわからないが、連続して発生する音を魔石から広げ、ノーブルラントの領域魔法を打ち消したのか」
アッシュランスの言うように、アリアはこの事件への対策としてアリスの遺体ということ騙り、学園と街のあちこちに魔石を設置していた。
それはシェリルがおよそ仕掛けるだろう魔法を予想し、広域で発生するアンチスペル――所謂対消滅魔法を音にして発生させた。
「ほかの生徒は――ダメか。なぜ俺たちだけ立っている?」
「ん……多分、魔石を持っていた、私たちが音の発生源。音を出している、から、魂を、通っていない」
「すでにダンテミリア姉に細工されていたというわけか。準備を怠らないのは良いが、一言声をかけておいてほしかったな」
「ん――怖か、った」
アッシュランスが安堵の息を吐くと、突然ミアベリルが彼の前に躍り出て、八重歯をむきだしにして唸り声を上げた。
「どうした――」
「『――』『――――』障壁、武装変換、爪を立て、牙を研げ――『獣建・一鳴』」
牙と爪を出現させたミアベリルが眼前を睨みつけると、そこに現れたローブの人々、ローブの人々はアッシュランスたちに殺気を放ち、魔法陣を展開した。
「これは――ノーブルラントか。ヴァンガルド、君は引きなさい。ここにいては巻き込まれる」
「駄目、先生がやられたら、私も、殺されちゃう。だから」
「……生徒を前に立たせるなど――」
「アッシュ先生、喧嘩、弱い。私の方が、得意。だから、前は、私、後ろは、先生」
アッシュランスは頭を抱えたが、すぐに魔法陣を展開、指を構え、戦闘姿勢をとった。
「君の言う通り、俺は前線に立つ魔法使いではない。だが――『――』『――――』『――』光速、瞬光、指撃『穿つ閃光、影を捉える』」
魔法陣から放たれるいくつもの閃光、それはローブのノーブルラントたちを打ち抜き、その地に這わせた。
「閃光の名は伊達ではないのだよ」
「ん――私が、先生を守る、から」
「ああ、任せた」
アッシュランスとミアベリルの両名もこうして戦闘を開始するのだった。




