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ダンテミリオ姉妹の禁忌魔法〈エクリプスヴォイド〉  作者: 筆々
5章 決着をつける姉と懇願する妹
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その獣後輩は鼻を鳴らす

「先生、これ、ここでい、い?」



「ああ、手伝ってもらってすまないな。ありがとうヴァンガルド」



「ん」



 この品評会、1期生、2期生は毎年1人だが、3期生に限ってはそれなりに数がおり、彼らはこの学園に通っていた成果をここで発揮することが出来る。

 毎年この品評会を通して学園卒業後に声がかかりそのまま就職。ということも数多くあり、その年に卒業する3期生にとってはこの機会はまたとないチャンスなのである。



 故に真面目に、真剣に取り組んでいる生徒が多く、アッシュランスはそんな生徒たちの力になろうと丁寧に準備を手伝っている。

 そんな彼に手伝いを頼まれたのがミアベリルであった。



「この品評会にかけている生徒はそれなりにいる。学園に通って魔法にばかり没頭し、その後のコネをまったく作れなかった者や研究成果もあまり上げられず、しかし志は高い者、そういう者たちにとって自身の研究を世の目にさらす機会なんだ」



「……」



「そんな将来をかける生徒のいるこのイベントで、何かが起こるかもしれないというのを黙って待つことになるとはな」



「先生、は、いい先生」



「……どうだろうな。少なくとも私は、1人の生徒の未来を守れなかった」



「それ、は――先生の、せいじゃない、でしょ?」



「そうではないんだよヴァンガルド、君も思ったはずだ。どうして先生はダンテミリオに頼んだのだろう。とね。私は実行犯ではない、でも確かに私があの子に頼んだんだ、私が、ダンテミリオを助けてやれなかったんだ」



「……」



 顔を伏せて手を止めるミアベリルが黙々と作業を続けるアッシュランスを見つめていた。

 彼のせいではない。と、慰めるのは簡単だろう。しかしそこに罪の意識がある以上、罪を押し付ける視線がある以上、彼は罰から解放されることはないのだろう。



「ねえ、先生」



「なんだ?」



「アリスを、殺したの、って」



「……わからない。君は知らなくていい。だ」



 ミアベリルは頬を膨らませてアッシュランスに抗議の目を向けた。

 彼女もまた、親友を失った1人なのだ。しかしその教員にとっては守るべき生徒の1人でもある。関わらずに大人しくしていてほしいと願うのは当然だろう。



「あれに関しては姉の方が何とかするだろう」



「でも、アリア姉、いない」



「……そうだな、何かあったのかもしれん。それでも君が動く理由にはならんがね」



「むっ」



「そうむくれるな。それより私が渡した魔石は持っているか?」



 ミアベリルは頷き、アリアからアッシュランスに指示があった魔石を取り出した。



「それはちゃんと持っておきなさい。ダンテミリア姉が無駄なものを渡すわけがない。きっと君を守ってくれるだろう」



「私は、のけ者?」



「わざわざ危険に首を突っ込むこともないだろう。それに君が危険にさらされるのをあの姉妹も望んでいないはずだ、大人しくしていなさい」



 アッシュランスはそう言って窓から外を眺め、シェリル=ノーブルラントが準備を進めている一角に目をやった。

 本当なら今すぐにでも止めに行きたいのだろう。しかしそれをしてはアリス=ダンテミリオが報われないことを知っている。故にこの閃光は耐えるのだった。



 そんなアッシュランスを知ってか知らずか、ミアベリルが首を傾げた。



「先生、今日、学園が変。知らない、気配」



「……ああ、君は魔法の探知を姉の方から教えてもらったんだったか。ぜひ私にも指導してほしいが、この件が終わってからだろうな。それで変というのは?」



「わからな、い。ただ、学園のいたるところ、から――そう、この魔石、みたいな、気配」



「なに?」



「大きい、のはこれ、だけど、同じくらい大きいのが8個、あとは小さな、魔法? がたくさん」



「――」



 ミアベリルが自身の持っているアリアからの魔石を指差し、大きいのと言った。では残りの小さいのとは――アッシュランスはハッとした顔を浮かべ、彼女の手を掴んで駆けだした。



「ヴァンガルド、その気配がどこにあるのかわかるか?」



「う、うん」



「魔石に魔法――遠隔発動だとばかり考えていたが、そうかこれは魔法陣、ならば遠くから発動させるのではなく、魔石に魔法を込める。設置型の魔法陣か!」



「せ、先生!」



「目についた魔石は回収した、しかし彼女も馬鹿ではない。私が探っていることなど気が付いていただろう。別の場所に動かすだけでは意味がない。すべて破壊しなければならない」



 刻々と近づく運命の分岐――その小動物を騙る彼女から繋がった彼ら彼女ら、その企みを打ち砕くために脚を前に、駆けだしていくのだった。

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