その王女ととらえた陰謀
「あぁぁぁぁぁぃ! 結局アリア補充できなかったわぁ!」
「アリアは燃料じゃねえんだ。いい加減食べ物と水で動くようになってくれよ」
「……あなたがたは本当にいつも元気ですね」
結局、アリアがノアたちの前に姿を現すことなく、品評会の日がやってきた。
ノアとリュードウィス、そしてアンメライアはアリアを捜しに学園を歩き回っていた。
品評会、メイガル学園で年に2回行われる行事で、その日は授業はなく、自国他国問わず、あちこちから人がやってくる。
特にお祭り騒ぎという空気感ではないが、魔法が見世物にされている以上、気持ち賑やかな催しとなっている。
「スピアード先生も心配していました、あの子は約束をたがえるような生徒ではないと」
「アッシュランス先生って結構アリアに甘いですよね? そんなに絡みがあったか?」
「……スピアード先生も責任を感じているのですよ。あの日の授業を受け持っていたのは彼ですから」
リュードウィスが納得したようにうなずくのだが、ノアはその話にどこか不機嫌な顔を見せていた。
「というか、この間スピアード先生が可愛い子を抱えてたって学園で噂になっているんですけど、もしかしてアリアを抱っこしていたとかないですよね?」
「いえ、彼女はもっと食事をとったほうが良いと嘆いていましたし、抱っこしていたんではないですか」
「許さん!」
「おめぇの許可はいらねぇんだわ」
「王族に向かってお前とはなんだ!」
「クソ殿下、いいからアリアを捜してくれ」
ノアがリュードウィスに殴りかかろうとしていると、彼の肩に鳥が飛んできて脚には何かがまかれており、リュードウィスはそこから紙を取り出した。
「……ノア様、父上からの定期連絡です」
「なによ」
「一族全てが行方不明」
「ウソでしょ」
「ついでにその弟子やらなにやらの姿も数日前からないそうだ」
うな垂れるノアに、アンメライアがじっと2人に目をやっている。彼女はまだ、この一連の犯人を知らないのである。
「あの、王宮で一族、なおかつ弟子のいるとなると相当絞れるのですが、あなた方が調べているのって――」
「もうここまで来たから隠さないけれど、ノーブルラントよ」
「まさか彼女がアリスさんの件にかかわっていると?」
「確実に――というか今回の事件が初めてじゃないのよ」
「どういうことですか?」
「ああやって魔石にかかわる事件が8年ほど前にもあった。あの時はもっと雑だったけれどね」
「魔法陣の暴走、魔石と死体。その時は当時まだ可愛げのあった王族の1人が間抜けにも誘拐されて、たまたま巻き込まれた小さな魔法使いが救い出してくれたって話だぜ」
「それって――」
「あの時は私を救い出したのがノーブルラントになってるし、その功績で彼らに調査の手は伸びなかった。あの時私を助けてくれたのは、当時私と同い年にも関わらずに4節魔法を人にぶち込み、敵の首魁の両手足を氷漬けにして両手に石持って何度も顔面パンチするクッソ可愛い天使のような女の子よ」
「天使要素顔だけじゃねえか」
「4節魔法って――彼女、一体どれだけの素質を」
「少なくとも当時のノーブルラントが手を出せなかったレベルじゃないかしらね。当時のことを洗っていたら出るわ出るわ、あいつらの不正や野望その他エトセトラ」
「ならばもう捕まえられるのではないですか? 今年度1期生の代表、彼女ですよ。確実に何かするんじゃないですか」
「難しいな。当時ですらノーブルラントとの関りを見つけられなかったんだ、それにやっぱり未発見の技術って言うのが大きすぎる」
「それじゃあ……」
「せめてアリアが陛下にそれを一度でも見せていれば、まだ手っ取り早かったんだがな」
「ていうかアリア、下手したら王族もグルだと思っていたかもしれないものね。ノーブルラントが関わっている以上当然だけれど」
アンメライアが顔を伏せるのだが、リュードウィスが明るい顔で彼女に握りこぶしを見せた。
「でもそれも今回までだ。王宮とのやり取りで同じような事件が起きたら奴らを調べられるように調整した。それに今この学園にも結構な数の王宮からの人間が潜んでるからな。何かすりゃあ一発アウトだ」
「そうですか。これでやっと事件が終わるんですね」
「そううまくいけばいいけれどね。それに今回だって何をするかだってわかっていない、アリアは気をつけろって言ったみたいだけれど、何を気を付けるのかもわからないものね」
「そりゃあもう、ぶっつけ本番で対処するしかねえだろ。先生も頼りにさせてもらうぜ?」
「ええ、私もスピアード先生も協力は惜しみませんよ」
「よし、それじゃあ黒幕の顔でも拝みに行きますか」




