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ダンテミリオ姉妹の禁忌魔法〈エクリプスヴォイド〉  作者: 筆々
4章 水面下の姉と満喫する妹
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その姉と黒幕

(お姉ちゃん、学校に行かなくていいの?)



「行きたいのは山々なんだけれどね、そろそろノアたちが何をすべきか理解しただろうから一緒にいると根掘り葉掘りと聞かれそうで」



(聞かれて困るの?)



「あんまり聞かれてもボロが出そうなのとアリスにあんなことした彼女に関しては、もう終わったことだからもう一回事件を起こしてもらわないと捕まえられないのよ」



(お姉ちゃん酷い、ほかの人まで犠牲にするつもりだね)



「そんなことしません、そのための準備も終わらせてます」



 アリアとアリスはここ数日、ゼイアルガスの街で息をひそめていた。わざわざ街で宿をとり、学園の生徒が出歩く時間には外に出ないようにしていたのだが、呪文書が欲しくなったアリアは多少顔を隠しながら外へ繰り出し、買い物を終えて今は宿泊している宿に帰っているところだった。



(というか彼女って犯人ももうわかってるんだ?)



「当然です。魔石からの遠隔魔法にしようが、召喚系列の魔法を残してくれていたおかげでアリスがああなった日にはマーキングできてましたし」



(最初からじゃん。それさっさと訴えればよかったのに)



「それするとあたしの禁忌がばれる。誰がやったとか魔石での魔法行使とかは別に誰に知られてもいいけれど、禁忌だけはマズイの」



(あ~、そっちかぁ。でもあの時はびっくりしたけれど、あまり痛くはなかったんだよね)



「それはそうよぅ。だって肉体が死ぬ前に魂抜き取ったもの」



(え、お姉ちゃんが僕にとどめ刺したの? そういえば僕が僕の体を見てた記憶あるわ)



「とどめとは失礼な。あれが最善だった、だからアリスも今こうやって生きている(・・・・・)し、痛い思いすることもなかったでしょ」



(生き……てる? まあそう言われれば感謝しかないけどさぁ)



 アリスは深いため息をついて自身の体に目を落とした。

 アリアはアリスのことを生きていると言う。しかし肉体はなく、魔法の行使も止められている。これを生きていると言っていいのか、アリスは疑問なのか終始訝しんでいた。



(ところで、僕は何で殺されたの?)



「さあ、大きい魔石が欲しかったとかじゃない?」



(え、知らないの?)



「だって興味ないし。あたしはそれが出来る人間を捜しただけよ」



(そこは知っておこうよ)



「ん~……知ってもいいんだけれど、そうするとあたし本気(・・)になるよ? 過程も何もかもすっ飛ばして犯罪者になっちゃう」



(……ああうん、お姉ちゃんの本気は、うん、確かに)



「アリス、あたしだって可愛い妹があんな風にされたら怒るよ。だから抑えるためにこんな遠回りしているわけだし」



(妹想いのお姉ちゃんで嬉しいよ~)



 アリアはアリスの頭を撫でる。

 どのような形であれアリアにとってアリスはただ1人の妹なのである。妹が傷つけられ黙っていられるほど学園の小動物はか弱くはない。



「これであたしの出る幕もなくノアやせんせたちが解決してくれれば一番なんだけれどね~」



(いろいろ準備したんでしょ? ノアちゃんたちなら大丈夫だよ)



「そうだといいんだけれど。多分ノアは魔石の森と水宮の湖にあった人と魔石で数年前の誘拐事件を洗っていると思うから、それで王宮が出てきてくれれば楽なんだけれどね」



(……まあ被害者だしね)



「ん~?」



(このまま雲隠れしちゃうの?)



「ん~……そう思ってたんだけれどねぇ」



 するとアリアが途端に背後を気にしだし、アリスは首を傾げて宙に浮きながら姉の背後に目を向けると、そこには明らかにアリアを追っている人影が複数あり2人が早足で歩きだす。



(お姉ちゃん)



「わかってる。しかしあの格好、一族ぐるみ(・・・・・)とは思ってはいたけれど、弟子とかも駆り出してるな」



(あれって――王宮の魔法使い?)



「だよ。そして我が妹は、一族の最高傑作よりも成績がよかったってことなのかな」



 アリアは脚を止め、すでに囲まれている現状に肩を竦めた。

 すると王宮魔法使いの面々をかき分け1人の少女が前に出てきた。



「こんにちはアリア=ダンテミリオ先輩」



「……ええこんにちは。こんなところで奇遇ですね、今からお家の人と特訓ですかぁ?」



「いいえ、先輩に少し用事が出来ました」



「あたしはないんだけどね~」



 シェリル=ノーブルラント、彼女がアリアの前に立ちはだかり、王宮魔法使いに囲ませていた。



(シェリルさん――なんで?)



「先輩は不思議ですよね、成績もよくないし、生活態度もいいとは言えない。それなのに普通の人が知らないことを知っている」



「……知識だけは豊富なんですよぅ」



「その知識も魔法がなければ身につかないはずです。それもアリスさんに聞いたで通しますか?」



「事実ですから。それに現に――」



「魔法陣の素質がない。そう言いたいんですよね?」



「ええ、だからあたしに構っているより、あなたのいつかの上司へ目を光らせておいたほうが良いと思いますよ」



「あんなのが上司? 勘弁してください」



 クスクスと貴族令嬢らしく上品に笑うシェリルに、アリアは脂汗を流しながらゆっくりと後退し、そしてその指を口元に近づけようとする。

 しかし――。



「――っ」



「確かに先輩は魔法陣の素質がありませんが、念には念を、魔法陣の制限をさせてもらいますね」



 王宮魔法使いの1人がアリアの手を掴み、その両手に手錠をかけてしまう。

 しかし手錠をかけられた姉を見て、アリスが鼻を鳴らした。



(そんな手錠ごときでお姉ちゃんを止められると思うてか!)



「……」



(お姉ちゃん?)



「アリア先輩、魔法陣を起動する時に指で唇に触れますよね? あれってどうしてあんなことするんですか?」



(可愛いからに決まってんだろ!)



「……」



「私、聞いたことがあるんですよ。魔法使いの中には魔法陣を起動するのにも難儀する出来損ないがいるって」



(え、お姉ちゃん可愛いこと自覚してやってたんじゃないの?)



「魔法陣がどんなエネルギーを消費して起動するのかわからないですけれど、魔法どころか魔法陣すらまともに出せないのなら魔法使いになんてならなければいいのに――まあでも、さっき言った通り一応念には念を。その手錠は停止の魔法です、そこから一切動かないですよね?」



 シェリルの言う通り、アリアは小さく前ならえしているかのようにその場から腕を動かせないでいた。



「というわけで、一緒に来てくださいね」



「……乱暴にしないでね」



「はい、あなたが大人しくしていてくれればこちらも何もしませんよ」



 そうして、アリアは言われるがままにシェリル=ノーブルラントについていくのだった。

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