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ダンテミリオ姉妹の禁忌魔法〈エクリプスヴォイド〉  作者: 筆々
4章 水面下の姉と満喫する妹
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その殿下と示し合わした陰謀

「んで――」



 アリアがアッシュランスと買い物に出かけて、ノアたちがダンテミリオ宅で待っていた2日後、ノアとリュードウィス、アンメライアとアッシュランス、ミアベリルがアンメライアの研究室で頭を抱えていた。



「アリアが学園に来なくなって2日経ったのですが!」



「ついに逃げたかぁ」



「アリア姉、逃げ、る、理由、ある?」



「いやねえな。多分なんか準備してんだろ」



「……あんたね、よくそんな冷静でいられるわね?」



「お前が狼狽えすぎなんだよ。アッシュランス先生、アリアはすぐ戻ってくると言ったんですよね?」



「ああ、野暮用が出来たとかでな」



「……スピアード先生、止めてくださいよ」



「ああまで煽り散らされてはな」



「ったく、やっとちゃんと話し合う覚悟をしたのに」



 ぷくと膨れるノアが顔を伏せてしまい、普段騒がしい王族の弱弱しい態度に、沈黙が訪れてしまい妙な空気が流れたころ、アッシュランスが魔法陣を展開、2節魔法を唱えて彼の手元の空間がゆがんだ。するとそこから人の大きさほどの何かが入った麻袋をいくつか引っ張り出した。



「なんですかそれ?」



「書類上ではアリス=ダンテミリオとなっている遺体らしきものだ」



「何持ってきてんのよ!」



「……ちょい先生、死体をこんなところに――」



「いや、空間の中に入れてやっと理解できた。これは遺体ではない、魔石(・・)だ」



「はい? こんな巨大な魔石がありますか?」



 アッシュランスは首を横に振ると麻袋を開けた。袋に入っているのはどう見ても焼死体であり、匂いも質感もそれ以外にはない。しかし彼はその遺体に手を突っ込むと、それは呆気なく霧散し、1つの魔石へと姿を変えた。



「これは……受動型の魔法でしょうか? アリアさんがかけたままにしていた?」



「違うよイクノス。まったくあの小動物め、魔法使いどころか学者としてもこの学園で彼女より優れた者はいないだろう。見てみろ、魔石から魔法が発動している」



「いやいや、魔法は魔法陣から発生する。先生の専門分野だったのではないですか? 私、アッシュランス=スピアードの名前は実家にいる時から聞いていましたよ。閃光のスピアード、魔法陣研究の第一人者だと」



「今はそれは皮肉にも聞こえるな――しかしルヴィエント、君はいいことを言った。そう、魔法は魔法陣からしか発生しない。ならば聞くぞノア=ルヴィエント、ではその事実を理解したうえで改めて問う。魔石とはなんだ?」



「何って――」



 アッシュランスはアリアが残した魔石ではなく、研究室にある魔石を1つ手に取り、それをノアに手渡す。

 魔石を受け取ったノアは首を傾げて石を見渡すのだが、すぐにハッとした顔を浮かべ、アリアが置いていった遺体に目を向けた。



「魔法陣か」



「魔石は魔石だろ?」



「ああ、魔石とは魔物の持つ特殊な結晶というのが通説だ。しかしその作りや意味など魔法使いにとっての都合のいいものでしかなかった。魔石を割れば魔法を使用しても疲労感はない。ただそれだけ、私たちが見ていた魔石などその程度だ」



「……魔法使いは誰しもが魔法陣を持っている、だからわざわざ試そうとする奴なんていない。でもアリアは違う。本当にあの子は、魔法の素質だけじゃなくて、魔法陣のことまで――いや待って、というかそうなるとあれは」



「魔法の素質とは何のことだ? と、今聞く話ではないか。ルヴィエント、その反応、何か知っているのか?」



「……あの、変なことを聞きますが、アリアなんか言っていませんでしたか? 私が知っていたら。的なこと」



 ノアの問いに、アンメライアが手を上げた。



「そういえば、以前アリアさんを追って魔石の森に入ったのですが、ルヴィエントがどうとかの話をしていたような」



「魔石の森? この間アリアが消えた森か……ん、誰と?」



「独り言でしたよ。いや、誰かと会話しているようでしたが、私が見た限りそこには誰もいませんでした。学園に戻ってきてから彼女は時々、誰かと話しているようなそぶりを見せますね」



「確かに、そんな時があるわね」



「俺たちの知らない魔法でも使って、遠くの誰かとでも話してんじゃねえか?」



「そんな魔法――」



「……」



「ん? どうした後輩」



「……ん、大丈、夫」



「そうか」



 ミアベリルが思案顔を浮かべだしたのをリュードウィスが気にしているが、アッシュランスが取り出した遺体に触れて回り、それを魔石に変えるとノアやアンメライアたちに手渡した。



「ダンテミリオがこれを持っておくといいと」



「アリアが?」



「それと、品評会では気をつけろとな」



「……意味深な。もう最初から何もかも伝えてから行動しなさいよあの子はもう」



「んで、殿下はどうするんだ?」



「とりあえず魔石の森、それと水宮の湖でアリアの跡を辿るわ」



「あいよ」



「ルヴィエント、あなたは仮にも王族です。私も付き合いますから、くれぐれも単独行動はしないように」



「仮じゃなくて事実だわ!」



 こうしてダンテミリオ姉妹にかき回された者たちが動き出す。

 それは彼女の手のひらの上か、はたまた魂の進むがままか。

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