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その姉とわんこ系後輩妹

「えっとベリルちゃん?」



「……」



 アリアはギルド学園支店に話を聞きに行ったのだが、依頼主であるミアベリル=ヴァンガルドが依頼受注者と一対一で話したいとのことで、彼女の指示で学園の最上階にある屋上に通じる階段の踊り場にてミアベリルと見つめあっていた。



(本当、ベルは言葉少ない子だよ~)



「……ね、ねえベリルちゃん? その、あたしに課題を手伝ってほしいって」



「ん」



「え~っと、人違いじゃなくて?」



「ん」



 表情を変えずに、ただただ頷くミアベリルにアリアはそっと視線をアリスに向ける。

 しかしアリスは親気取りにうんうん頷いているだけで、終いには成長したな。などと口走っていた。



 アリアが呆れたようにため息を吐くと、ミアベリルがポケットから飴玉を取り出し、それをアリアの手をつかんで握らせると、満足げにうなずいた。



「――?」



「……課題」



「え?」



「研究テーマ、見つける」



「あ、ああ、えっと、1期生のこの時期は確か、学園卒業までに研究するテーマを決めなくちゃならない。だったかな? アリスは――」



(魔法が体にもたらす影響。だよ)



「あの子は最初の内に決めてたけれど、ベリルちゃん、もしかしてまだ」



「ん、なんにも」



「……なんにもって、その課題、そろそろ決めないとまずい奴だよね?」



「ん。アリスと一緒に探す予定、だった」



(そういえばそうだった。ベルったらまったく研究テーマ探してなかったから、一緒に研究テーマを探しに行こうって約束してたんだっけ)



「あ~……そんな約束してたのか。じゃあお姉ちゃんとして、その約束は代わりに果たさないと――」



 しかしアリアのその言葉に、ミアベリルが首を横に振った。そしてどことなく雨に濡れた子犬のような雰囲気でジッとアリアに目をやっている。



「えっと?」



(ベルったらそんな垂れ眉描かれた柴犬みたいな顔しちゃって)



「……アリスが」



(ん~?)



「アリスが、困った時はお姉ちゃんって言っていたから」



「……」



「……でも、迷惑なら、別に、うん、この話は――」



 アリアはシュンとするミアベリルに苦笑いを浮かべ、彼女の頭に手を伸ばして撫でた。



 ミアベリル=ヴァンガルド、鋭い目つきで人を寄せ付けない雰囲気の彼女なのだが、その実、人付き合いの苦手な自分で行動することが苦手な家犬タイプの女の子。

 クセっ気のある腰まで伸びた茶色の髪をポニーテールにしている吊り上がった黒い瞳の子で、身長はそれなりに高く、鍛えることが好きで腹筋も割れているがっちりとしたガタイで、アリアどころか、アリスですら平気で抱え上げることが出来る。



「――わかりました。お姉ちゃんが手伝ってあげますから、そんな顔しないの」



「……」



 パっと顔を上げ、尻尾と耳でも振っているのではないかというほどミアベリルの放つ雰囲気は軽やかなもので、わんこよろしく、彼女の瞳はキラキラと輝いていた。



 アリアはそんな彼女をもう一撫でし、頬に手を添えて明後日の方向を向いた。



「こういう子に弱いなぁ」



(知ってる。ベルのこと、お願いね)



「はいはい、お姉ちゃんは慣れてますから」

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