その姉と湖で合流
(お姉ちゃんが休みの日にお外に出てくれて僕もうれしいよ)
「……しょうがないじゃん。生活費もかつかつだし、稼げるときに稼いでおかないと」
翌日、学園も休みで普段なら一日中本を読んで休日を過ごすアリアだったが、いよいよ生活費も少なくなってきたことで休日も開いているギルド学園支店で依頼を受け、ダンテミリオ姉妹は街から馬車で1時間半ほどの湖まで、徒歩で2時間以上かけてやってきた。
「もう歩きたくないよぅ」
(馬車代ケチるから)
「お金がないのぅ」
(生活費を詰めて呪文書なんて買うからそうなるんだよ)
「呪文なんて知っていれば知っているだけ役に立つんだから、生活よりも優先すべきでしょ~」
(まともな生活を送ったうえで知識は役に立つんだよ。生活もままならないなら魔法使いをやめるべきだね)
アリスの小言にアリアは頬をぷっくりと膨らませて、今回受けた採取依頼の対象植物をプチプチと千切っていた。
(採取物はクスリになる植物。だっけ?)
「そっ、聖水にもなる水月草があればそれで十分なんだけれど、まあこの辺りならヨモギが精いっぱいかな――って思ってたんだけれど」
アリアが辺りを訝しんだ顔で見渡した。
「生態系が変わってる。魔石の森でもそうだったんだけれど、なんか妙なことになってる」
(そんなに変?)
アリスの言葉にアリアは草を1つ千切りそれを見せた。
その葉はギザギザとした、いわゆるヨモギなのだがどういうわけか光を反射する結晶が所々に付着しており、葉自体が煌めいていた。
(これって――)
「魔石が大地に溶けた土壌で発生する結晶植物。植物がこうなっちゃうと魔法陣が機能しなくなるから薬を作るのもままならない。完全な無駄足だよぅ」
(え~、どういうことなのさ?)
「わかんない。誰かが時間をかけてこの辺りに魔石をばらまいたとか、もしくはこの辺りで魔法の実験をしている奴がいるかのどれか。まあ後者だと魔物も集まってきちゃうから環境を維持できなくなっちゃうからやるメリットはないけど」
(じゃあ誰かが魔石撒いたの? それこそやる意味なくない?)
「ううん、量を間違えなければ魔石は植物にはいいんだよ。生命力の塊だから植物がよく育つし、獣除けにもなるからね。でもここはちょっと違うかな、結晶植物が出来ちゃっているし、多分魔物の生態も変わってる」
(誰かが実験してるってこと)
「多分ね――みゅ?」
(お姉ちゃん?)
アリアが突然、街道と繋がっている林道に目をやった。
すると数人が歩いてきて、その面々にダンテミリオ姉妹は驚いていた。
「アリア?」
「ノアとリュウくん、アンせんせ、それに――」
(ベルじゃん。珍しい面々だね)
ノアとリュードウィス、アンメライア、そしてミアベリル=ヴァンガルドと眼鏡をかけた女生徒1人がダンテミリオ姉妹の前に現れたのだった。




