47話
上田には、昔と違い今は力があった。
肩書としては、社長秘書。
雅人から多大な信頼を得て、社員からも慕われている。
社長が出向くまでもない、小さな宴会にも顔を出すと
アピールを欠かさない。
女子社員には、よくお誘いを受けるが、それどころで
はない。
そもそも、自分は一回死んでいるはずだった。
身体を失って彷徨っている時に、母が後を追うように
死んでいくのを画面の向こう側で見ていた。
止める事もできず、ただ見ていることしかできなかっ
た。
「せめて…会いたい………あれ?俺は……誰に会いたい
んだっけ?」
死んだ時に後遺症か、はっきり思い出せない。
色々と学校を転々と見て回ると、そこで彼を見つけた。
「あの子だ……えーっと。間違いない、会いたかった」
そう思えると、自然とその場に落ちていた。
そう、存在すらなかった自分に、存在が生まれたのだ。
彼に会える。
彼と話せる。
また……彼と……。
すぐに転校生として学校に入った。
存在しているという事は、普通に見えるということでも
あったからだ。
一緒にいるうちに、彼の影を見た。
どうなっているのだろう。
自分と同じ存在?
でも、なぜ自分は普通に生きてるのだろう。
ものにも触れれるし、クラスの人とも会話できる。
そのうちに自分が死んでいる事を忘れるようになった。
そしてつい先日、影に首を絞められ気づく。
自分はもう……生きていないというのに…。
どうして苦しいのだろう……と。
寝つきの悪い雅人を毎日のように寝るまで付き添ったら、
一緒に寝ようと提案された。
雅人に触れると、存在が落ち着く。
きっと自分という不確かな存在を繋ぎ止めているのは雅人
自身なのだろう。
きっと雅人が自分を要らないと思った時、きっと自分は消
えるのだろう。
まだ一緒に居たい。
ずっと、これからも一緒に生きていたい。
雅人が結婚して。家族を作って、そしてヨボヨボになるま
で横に居たい。
今、雅人には影がいない。
雅人が自分を傷つけるならと自傷しようとしたせいで影の
存在が薄れてしまったのだ。
そして、薄れた影が生きていく為には、同じ存在と重なる
必要があった。
その場にいる上田の存在だった。
影と一緒になった事で、その活用方法を知った。
時間はかかるが、人の中に入ってしばらくだが一時的に操
れるようだった。
記者にたじろぐ彼を守る為にカメラマンを操った。
カメラを落とすとどこかに行ってしまった。
どうにも操られた人間は自殺を選ぶらしい事を知ったの
だった。




