44話
会社帰りにいつものようにタクシーの乗り込むと、上田と
一緒に家に帰ってきた。
「すいません、ちょっと手前で降ろしてもらえますか?」
「はい、構いませんよ」
家の少し手前でタクシーを降りると、上田に手を引かれて、
裏口から家に入った。
真裏にある裏口はお手伝いさん達が使っているくらいだった。
「どうしたの?」
「うーん。ちょっとね…前にラッキーテレビの取材を何度も断
ってるんだけど、家に突撃してきたでしょ?今日ももしかし
たらって思ってね、早く入ろう」
「うん。でも…綾がいてくれれば僕は平気だよ?」
「そうだね、でも、だーめ!テレビ局は面白おかしく放送した
いだけだから……きっと、お兄さんの永人くんの話も出して
くるだろうね……刑務所入ってから面会にも行っていない薄
情な弟だってね」
「そんな……」
「そんな奴らなんだよ。待ってて、雅人はあんな奴らを相手
にしちゃダメ。いいね!分かった?」
「うん。綾が側にいてくれてよかった……」
「いい子だから、家から出ないでいて…」
それだけ言うと、わざわざ裏から回ると、表から堂々と入っ
てくる。
上田の行動に雅人はカーテン越しに見守ることしかできなか
った。
上田の言った通り、門の前でシャッターとカメラ光が見える。
カメラマンとビデオを回して、前にきた安堂美樹と言っていた
キャスターの人もいる。
今回は吉住というカメラマンは居ないらしい。
前来た時に急にカメラを置いて帰ってしまったらしく、居なく
なった人だった。
今日は別のカメラマンがついてきているけど、なんだったのだ
ろう……。
普通はキャスターを置いて帰る事なんてあるのだろうか?
静かに眺めると、何か話している。
ここからでは聞こえないが、少し揉めているようにも見える。
そして、いきなり背を向けて帰っていく。
「よかった……帰ってくれた……」
すぐに上田が戻ってくると、何事もなかったかのように、食事
の席に座った。
「何してるの?雅人、早く食べよう」
「うん、大丈夫だったの?しつこく言われなかった?」
「あぁ、平気だよ。丁重に帰って貰った。もう来ないと思うけ
ど用心はした方がいいかな。暫くは一人で帰らないでね?」
「うん。秘書の仕事多くない?何か手伝おうか?」
「大丈夫。雅人は心配しなくていいから、ほら、さっき温めた
から冷めないうちに食べよ」
レンジで温めてくれたおかずに、茶碗に盛られたご飯。
火を入れた汁物を啜ると、温かいご飯が美味しく感じた。
やっぱり一人で食べるより、誰かと一緒に食べた方が美味しい。
いつも一人飯が多かったせいか、上田が来てくれて本当によか
った。
部屋は客間を使って貰っているが、最近は雅人の部屋で寝て貰
っている。
この前から雅人が寝つきが悪いせいもあった。
上田が心配して寝付くまでいるせいで、一緒に寝ようと提案し
たのだ。




