43話
いきなり声をかけられて驚くと、ぐいぐいち迫ってきていた。
マイクを持った女性の方は胸元の大きく開いた服でわざと見
せるかのように近づいてきた。
「あのっ、霧島雅人さんですよね?あの有名企業の御曹司で
若いながらに会社を継いだって聞きました。ぜひ取材をさ
さてください!」
「あ……あの……そういう事は……」
「大丈夫です!許可は取ってます!ですからね?」
チラッと胸を見せてくるあたり確信犯だろう。
顔を逸らすと、怖いと感じてしまった。
人と話す事を苦手とする雅人にとって、上田なしで誰かと話
す事は滅多になかった。
上田の前なら、普通通りに堂々としていられる。
でも、一人だと、不安で仕方がない。
それに、こう言ったいきなりの訪問はどうしても苦手だった。
「いえ……あの……」
「そうですね、自己紹介がまだでしたね。ラッキーテレビの
視界をしてます、安堂美樹です!それでですね〜、奇跡の
相続と題して特番を組む事に………」
ガシャンッ。
いきなりカメラが地面に落ちると、振り返った。
何もないはずなのに、カメラを持っていたはずの男が居なく
なっていたのだった。
地面い落ちたカメラは粉々に割れていた。
「えっ……住吉さん?」
「あの、僕はこれで……」
「待ってくださいよ〜!これ、決まった事なんですから〜」
いきなりどうなったのか、不思議だった。
今日はそのまま引き下がっていったが、ラッキーテレビの制
作陣は、すでにコンセプトを決めていた。
若い年齢で後を継いだやり手若社長!そこに迫るいきなりの
カメラマン失踪。
残されたカメラの謎。
そして、隠された会社の秘話!
「いいね、いいね!好み出しで、制作を進むようか!美樹ちゃ
ん。もう一回突撃取材行ってきて貰っていい?」
「嫌ですよ〜、なんかあの社長、気持ち悪いもん」
「何言ってんの?それも取っちゃえば視聴率じゃない〜!どん
どん取っちゃいましょ」
「でも、あの後、住吉さん、見つかったんですか?」
「知らないわよ。あの日から休みっぱなしよ」
ちゃんとした判断がつく人なら、おかしさに気づくはずだった。
が、そんな事は視聴率の前では大した事には思えなかったらし
い。
再び代わりのカメラマンを引き連れて霧島邸を張る事にした。
「まだ帰ってきませんね〜、今日は遅いんですかね〜」
「ねーカメラマンさん。いきなり居なくならないでください
よ〜」
「それって住吉の事言ってる?大丈夫だって、俺は美樹ちゃ
んを置いていったりしないって、この後おわってからいい
場所知ってるから一緒に行かない?」
「嫌ですよ〜、私私情は仕事に挟まないので……」
そう言って待つこと数時間。
中の2階の灯りが灯ったのだった。




