42話
正式に雅人が社長に就任した。
社会人になって早々社長をやる人は、数少ないだろう。
同期の中でも数人知り合いがいたので人事の方で地方へと
飛ばした。
流石に顔を合わせるのは気まずい。
見習い秘書として上田が側にいてくれる事も決まった。
たまに研修でいなくなる日はあるが、普段は側にいて助言
くれる事が多い。
別に一人で決めれないわけではない。
ただ、少し自信がないだけ……。
決定的な後押しが欲しいのだ。
派遣された秘書は可もなく不可もなくという程度で、信頼
はしていない。
毎日が追われるように過ぎていく。
3年が経つと、だいぶんと会社も波に乗ってきていた。
「はい、それは……いえ、そういう事は困ります。社長は
そう言った事をあまり得意となさらないので、はい……
そうですね、お断りさせてもらいます。はい、失礼しま
す」
「なんだったの?」
上田が電話を切ると、後ろを振り返った。
「会社が大きくなってきたから、テレビでドキュメンタリー
を取りたいって依頼だって……テレビに関わる人間は信用
できないですからね〜。プライベートに図々しく入ってく
るような奴らが多いですから」
「それで断ったの?」
「えぇ、受けたかったですか?テレビである事にない事言わ
れるかもしれませんよ?」
「それは……嫌かな……」
「そうだろうと思って断っておきました。雅人は何も考えな
くていいですよ?ただ、自分の事を精一杯やってる事が大
事なんです。余計な気苦労はしない方がいい」
「うん。今日はこの後どうする?人事で飲み会あるって言っ
てたけど……顔出す?」
「そうですね〜、少しだけ顔出してから戻ります」
「分かった。家で待ってる」
社長自ら飲み会へは参加しない代わりに、秘書の上田が顔を
出す。
一応社員の労いも意味もある。
年一回、職場での飲み会費用は会社持ちだった。
人数と課の把握は上田がしていた。
何人かは上田狙いで飲み会をして、きっかけを待っていると
いう噂があるが、全く見向きもされない事からお相手がすで
にいると噂されてさえいた。
上田が飲み会に顔を出している間、雅人はタクシーで家に向
かう。
どこかによる事もなく、真っ直ぐに家に帰ってくる。
食事の用意はお手伝いさんがしてくれていた。
温めて食べるだけになっている。
「やっぱり一人の時間は寂しいかな……」
「霧島雅人さんですよね?」
家の前で降りると中に入ろうとして声をかけられた。
振り向くとそこにはカメラを構えた男性とマイクを持った
女性が立っていたのだった。




