37話
一緒に家に着くと、まずキッチンで出来立ての食事を
いただく。
上田はそのままシャワーを使うと、部屋に入る。
雅人は湯船に浸かる派なのか、時間が長かった。
パジャマに着替えると勉強道具を持って部屋にやって
きた。
「そういえばもうすぐテスト期間だったな…」
「迷惑だったか?」
「いや、そんな事ないよ。一緒にやろうか?」
「うん……綾がいるとはかどるから……」
信用してくれているのだろう。
昔もそうだった。
今日の分の復習を終えると、やっと布団に入った。
枕は持ってきたのか、横に並べた。
客間のベッドだが、結構広いので男が二人で寝ても問題
ない大きさだった。
「そうだ……俺に聞きたい事があるんだろ?」
「うん……兄さんが捕まった日……綾の後ろにいたのって
僕………だよね?」
「………」
やっぱり見えていた。
そう考えるとべきだった。
ならあの日から見えているのだろうか?
「それから……父さんを殺したのって……」
「違うっ!それは違う!あれは雅人じゃない!」
ものすごい勢いで否定すると、雅人は驚いたように上田
を見上げた。
「雅人が産まれた時の事を聞いた事があるか?」
「うん……本当は双子だったって……でも、一人は死産し
ちゃったから……」
「死産しても、いつも側にいるって感じはなかったか?」
「それってどう言う……」
「多分だが……雅人の周りの不可解な事件は……ァッ……」
「綾っ!」
いきなり苦しみ出す上田に驚くと、何が起きているのか
分からなかった。
横にいるはずの上田がいきなりもがき苦しみ出したのだ。
誰かがいるわけでもない。
どうしたらいいのか分からず、ただ見守ることしかでき
ない不甲斐ない自分に雅人は焦り、上田の方に手を伸ば
す。
すると、上田の上にのしかかるように首を絞める自分そ
っくりな姿が見えたのだった。
「やめてっ!やめてよ!離せったら〜〜〜」
必死に引き剥がそうとしても剥がれない。
このままでは本当に死んでしまう。
大事な親友なのに、たった一人の家族よりも大事な友な
のに…
力ではどうにもならないのならと、近場にあったシャー
プペンを握りしめる。
「それ以上やったら死んでやるからなっ!」
『………ダメだ』
自分の首筋に当てると、ピタリと止まった。
「げほっ、げほっ………ま……まさと……」
「それ以上綾に危害を加えたら死んでやる!お前は俺を
生かしたいのか?それとも苦しめたいのかどっちだよ!」
究極の選択だっただろう。
影は常に雅人を案じていた。
危害を加える者には容赦なく。
そんな影が、迷っているのだ。
「だから言っただろ?俺を殺せば、悔やむのはお前だって…」
上田が起きがあると、雅人に向けた言う。
「これが雅人の知りたかった事だ!常に側にいて危害を加え
ようものなら殺す。そう言う奴だ。」
「僕に……そっくり……」
「そうだな…だが目は違う。そうだろう?」
雅人と目が合うと、ドキリと心臓が高鳴った。
白目の部分が黒いのだった。
人間なのかと疑ってしまうほどに奇妙だった。
「君は誰なんだ……どうして僕を助けるの?」
『オレハ………オマエダ……』
そう告げるとスッと消えてしまったのだった。




