34話
普通なら害そうとしても、何も起きない。
それは一般的な場合だった。
だが、彼は違う。
彼を護ろうしている存在によって消されてしまう。
それが、どんな理由があろうと関係ない。
彼を害そうとした。
その理由だけで十分殺すにあたいするのだ。
もしも、それがずっと続いていたと考えるなら、死んだ
颯斗の方が、実は雅人を殺そうとしていたという事にな
る。
それならば、辻褄があう。
死ぬつもりはなくとも、殺されても仕方がない。
それに目撃者が居ない事にも、納得がいく。
「彼…いや、颯斗くんは本当に善人でしたか?」
「はぁ?一体何を……」
「もしかしたらですが………雅人に危害を加えるつもり
だったんじゃないかと思うんです。」
「それだったら死んでも仕方がないとかいうつもりか!」
「はい、その通りです」
上田ははっきりと答えてやる。
そう、危害を加えようとしていたのなら、仕方がないのだ。
影が動いてしまうのだから……。
「バカバカしい、だったらなんであいつはピンピンしてる
んだ?」
「だから言ったでしょ?誰も彼を傷つけられないって…」
「それは返り討ちに合うって事か?だったら、奴が犯人
なんじゃないか!」
「それは違う……。彼を害する存在をあいつは許さない…」
「あいつ?」
「では、本題です。もし雅人さんに手を出すと言う事は死
を意味します。ですが、それは手を下す前に会う事にな
るでしょう。ただ、それを見た時には全てが遅いんです」
にっこり笑って見せると、八橋は怪訝な視線を向けてきた。
「それはあいつを守る為に誰かが動いてるって事か?」
「そうですねー、半分あってます」
「そうか……なら家で今頃殺人が起きてるって事か?」
「ん…?家で?……まさかっ……」
八橋の余裕そうな表情を見て、すぐに家に駆け戻ったのだっ
た。
八橋の方に手を下さないので、少し気を抜いていた。
まさか雅人に直接危害を加えるとは考えていなかった。
家に戻るとすぐに階段を駆け上がる。
今は部屋にいるはず…。
そして部屋のドアを思いっきり開けたのだった。
そこにいたのは、見覚えのない女の姿だった。
「誰だ!」
「綾……どうしたの?」
「どうしたじゃない、そいつに何かされなかったか?
雅人大丈夫か?」
「え、何もないけど、どうしたの?」
不思議そうに眺める雅人の視線にやられたと感じた。
「ちょっと、その言い方気に入らないわね〜」
いきなり入ってきて早々に侮辱されたと抗議してくる女
を無視し追い出しにかかる。
「まずは出て行ってくれ、それから雅人に近づくな!い
いな?」
締め出すと、やっと落ち着くのだった。




