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君は死なない  作者: 秋元智也
32/53

32話

どうしてだろう。

いつからか胸騒ぎがした後は、何かが起こっていた。


あの日、倒れる前に見たのは確かに自分の姿だった。

雅人自身が、上田の後ろからこちらを見つめていた

のだ。


信じがたいかもしれない事だった。


最初は忘れようと思った。

だが、忘れられない事が起こった。


それは自分が何か別のものになって外を歩いている

事だった。


家に向かって、父の書斎に入った。

見知らぬ地下へと続く階段を降りると、そこには家

族の調査報告が無造作に置かれていた。


「どうして……」


聞こえてくる父の声に、兄の始末と雅人の利用価値

について話されていた。


一瞬、何か別の感情に突き動かされて、気づいたら

目の前には父親だった者が横たわっていた。


あの後上田が見つけてくれて、自分の身体に戻れた。


もし、あのままだったらと思うといつも不安になる。


上田はどこまで知っているのだろう。

きっと、もう一人の自分の事も知っているだろうか。


もし。知っているのなら詳しく聞きたい。

雅人は自分の事なのに、自分自身の事が一番わから

ない。

いや、今までわかろうとしなかった。


最近は上田のおかげか心にも余裕が出てきた。


高校でも上田がいれば普通に話しかけてくる生徒も

いる。

最近は一人ぼっちになる事も無くなった気がする。


その代わりずっとなにか視線を感じる気がした。

それが何かは、今はまだ、わからなかった。


「あのさ……綾は最近なにかおかしい事ってある?」


「どうした?雅人がそんな事いうのは珍しいな〜。

 おかしい事?別にないかな〜」


「そっか………」


「何か気になる事でもあった?なんでも話してみて

 よ」


「それが……気にしずぎかもしれないけど……」


そう言って話してきたのは最近妙な視線を感じる

事と、後をつけられている気がする事。


そして……自分そっくりな自分の事だった。


「そっか……そうだね、俺も気をつけておくよ。

 それと、 帰りも一人になっちゃだめだよ」


「うん、いつもありがと」


まだはっきりした事は話せないけど、八橋颯斗の

死に雅人が関わっているようには思えなかった。



「そういえば、颯斗って名前聞き覚えあるか?」


「颯斗?………それって一年の入学して早々に自殺

 した?」


「知ってたんだ?」


「うん。あの時屋上に向かう僕をみたって証言があ

 ったらしくて……」


散々事情聴取をされたらしい。

だが。校庭にいた生徒から中庭にずっといた事が

アリバイとなって屋上には居ないとなったのだっ

た。

それ以外にも中庭には校長室からのカメラ範囲に

入っていたおかげか、確実なアリバイを手に入れ

たのだった。


「雅人がそんな事するわけないもんな〜」


「でも、あの時はずっと人殺しって言われ続けたっ

 け……証拠があっても、結局はそれを信じるかど

 うかだし……」


そうやって人を避け続けてきたという事だった。



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