31話
学年も代わり、二年へと進級を果たした。
あの日から、上田は住み込みで勉強やら、会社経営の事
やらを、一緒に勉強してくれるようになった。
「綾……あのさ、いっそ共同経営って形にした方が良く
ないか?」
「それはダメだ、役員達の間に派閥ができて、会社内で
の分裂を招いてしまう。上が仲良いうちはいいが、ギ
クシャクし出すと、あっという間に会社が潰れるぞ?」
「そう……なんだ」
「あぁ、だから雅人は自分の事だけを考えるんだ。」
「うん、いつもありがとう」
素直で純粋なままでいてほしい。
そう思うのだが、世間はそうはさせてくれない。
家の周りを警戒していたが、ある人物がわざわざ通りか
かったのを見かけてからというもの、警戒を強めていた。
それから記者らしい人と、もう一人。
あの八橋という派遣会社の秘書だった男を見かけた。
何もないはずはないだろう。
何かを探っている?
それとも……。
調べさせた結果、意外な事実がわかった。
『
八橋 健二 27歳。
早稲田大学出身。
中学時にテコンドーの大会にて優勝経験有り。
兄弟揃って優秀だったと……。
』
「兄弟?この資料には兄弟についてはないようですが?」
「年の離れた弟がいまして……その弟は飛び降り自殺をし
たと」
「飛び降り自殺?……ですか」
「それが、遺書があったと当時騒がれていたんです。で
すが結局見つからずに……」
弟の名前は颯斗。
事故の現場は高校の屋上から……。
当時そこには霧島雅人がいたという事がわかっていた。
本人は否定していたが、屋上に向かう霧島を見た人がいる
という。
その逆に、中庭で一人食事をしているのをグラウンドにい
た生徒が目撃している。
そして、落ちる瞬間もそこにいたという証言もあって、結
局証拠不十分になったとなっている。
「雅人が関わっているという事ですか?」
「いえ、そういうわけでは……。ですが、目撃者の証言が…」
言われてみれば屋上に上がっていくのを見たという証言が
怪しい。
わざとなすりつけるつもりで証言されたものだろう。
なら、誰がこんな事を?
考えられるのは兄の永人だった。
今、永人は少年院にいる。
年齢がギリギリ未成年という事で、普通の刑務所には入れ
られなかったらしい。
監視カメラを増やし、しっかり見張っておく必要があるよ
うだった。




