24話
多分、上田も忘れられてしまう事に恐れを感じている
のだった。
「絶対に思い出す。霧島が思い出すまで付きまとう
からなっ!」
「……」
秘書が睨みつけるのを無視すると、今日は諦めて帰る
事にした。
まだいくらでもチャンスはある。
そう、考えていたのだった。
学校でも、しつこいくらいに休み時間は話し続けた。
「そういえば、今日は何をどこまで覚えるんだ?」
「ここの経営状況の改善から、他の会社が取った対応
と、その結果かな……」
「それなら、俺も手伝ってやるよっ、ほら、貸してよ」
「別に……自分でも……」
「いいって、ほら、貸してって!」
書類の束をひったくると、軽く読む。
食事を食べながら状況を説明していく。
一人で考えるよりも、二人の方が考えの幅が広がる事
を知った。
行き詰まった時に、違う視点からの考えは非常に効率
がいい。
「あ……なるほど……それ、もあるのか」
「だろ?一人でやるよりいいだろ?」
「確かに……ここの会社でも、社員に創意工夫を出し
てもらってってあるし……」
「ならさ、俺の話も聞いてよ?」
「……」
さっきまでずっと書類を見ていた霧島がやっと上田
の方を見たのだった。
「俺さ、親父さんを殺した犯人知ってるんだ。」
「…!?」
「でも、警察には言わない。言ってもきっと信じない
から。だから、霧島には俺の事を思い出して欲しい
んだ。入院する前に何があったのかをさ……」
「………全く思い出せないんだ……大事な事を忘れてる
気はするけど、きっと、思い出しちゃいけないって
思うんだ。秘書の人が誰とも関わるなって……」
「そうだよな〜、あいつに取っては会社の存続が一番
大事だしな〜。昔からそう言う奴なんだよ〜。俺ら
が小さい時から仕えてた奴だし」
「…?」
きょとんとした顔で眺めて来たので、上田は秘書の事
を話した。
秘書の男の父親が今の雅人の父親の先輩だったとかで、
自分の子供を秘書に雇ってくれと頼んだらしい事。
そして、病気で亡くなったその先輩に変わって、まだ幼
かったその子を秘書にと教育させた事。
ゆくゆくは雅人の秘書になる予定だった事。
年は10歳くらい離れている。
若いとは思っていたが、そう言う理由があったとは思いも
しなかった。
「そうだったんだ……」
「あぁ、だから俺の事も昔から知ってるはずだぜ?」
「昔から?」
「だから言ったじゃん?俺ら小さい時から一緒だったって。
前に背中の傷見ただろ?見覚えないか?」
ハッとなると、学校の着替えの時に見えた大きな切り傷を
思い出したのだった。




