21話
目の前で人が死ぬのは何度も見てきた。
だが、どれも事故という形であって、こんな怪異的な
死に方じゃない。
今、まさに目の前で父親の手足があらぬ方向へと曲が
っていく。
泣き叫ぶ声が部屋中に響き渡っている。
さっきまでいた秘書はもう階段上に上がって行った後
だった。
事きれた人形のように動かなくなると、やっと身体が
自由に動いた。
父は目を見開いたまま、驚愕するように亡くなってい
た。
せめてと目を閉じるとその場を離れた。
家ではお手伝いさんが夕食の準備に取り掛かっている。
もうそんな時間なのだろう。
真横を通り過ぎても気づかれない。
いつもなら挨拶くらいはされるはずだが、本当に見えて
いないのかもしれない。
そのまま外に出ると、街をぶらつく。
こんな時間に出歩くのは、本当に久しぶりな気がした。
いつもなら学校と家の往復でどこにもいく余裕もないし、
時間すらない。
公園を横切ると、砂場で遊んでいる子どもを見つけた。
懐かしい気がする。
自分も昔はこんな風に……。
「霧島っ!」
「えっ………上田?どうして、見えて……」
他人には見えないはずだった。
なのに、上田はこちらをしっかりと見ているのだ。
「霧島、どこに行ってたんだ?いや…、どこで何をする
気なんだ?」
「上田………どうして?」
「霧島?本物の霧島なのか?」
「本物って…なに?」
話が噛み合わない。
だが、わかるのは上田は今の霧島雅人が見えていると言
う事だった。
駆け寄ってくると、目の前まで来た。
そう、すぐに触れそうに距離まできたのだ。
真っ直ぐに見つめると、少し動揺したように慌てていた
が、落ち着くと、ベンチに座った。
「霧島座らないか?」
「あ……うん……」
「やっぱり本物の霧島なんだな?今の状況分かるか?」
上田の言っている事が理解できていなかった。
多分、今ここにいるのが僕なのに、僕ではない。
そう言いたいのだろうか?
「僕はどうなったの?」
率直に聞くと、上田は悩みながら話してくれた。
霧島自身は病院のベッドの上で眠ったままであるのだと。
そして、いつも霧島を助けていたのが、今雅人が入って
いるこの擬似的な身体である事。
そして、それは誰にも見えてない事だった。
「多分、あいつ……霧島の影は誰かを殺そうとしてるん
だと思うんだだから、探してたんだが………霧島?」
「多分…………それ、父さんかもしれない。さっき家の
地下で………」
「………見たのか?」
「………」
霧島の反応から、すでに終わったのだと察した。
「僕は…どうしたらいいんだろう。あんな事望んでない…
僕はただ、父さんに認めて欲しくて……それで……」
「分かってる…そんな事するはずないって。だから自分の
身体に戻るんだ」
「上田?………どうしたらいい?」
自分でもどうやってこうなったのかわからない。
だから、戻り方も分からなかった。
上田に手を取られるとそのまま病院へと向かった。
自分の病室へと向かうとそこには、横たわる自分の姿があ
った。
手を伸ばすと、ひんやりとした感触があって触れられた。
死んではいないが、あまりいい状態ではないらしい。
ゆっくり心臓に触れると、グニュっと身体を貫通する。
そしてそのまま引き込まれるように中へと引き摺られてい
ったのだった。




