18話
一体目の前で何が起きていたのだろう?
霧島自身、訳がわからなかった。
ただ、目の前で起こる事故の現場や、兄の永人が自分を
殺そうとしてきた事にショックを隠せなかった。
多分父に勘当されたのだろう。
永人が言っていた母を殺したのは自分というのはどうい
う事なのだろう。
そんな記憶は全くない。
ただ、叫ぶと自分から飛び降りて行ったという事実だけ
だった。
お手伝いさんからの話でも、そう言っていた。
自分を庇ったあの少年は……、また上田に庇われてしま
った。
ちがう……、あの時の彼も……。
思い出した少年の顔が、幼い上田に似ている気がする。
あぁ、やっぱり彼なんだ……。
昔、近くの家に住んでいた少年。
よく遊んでいた、あの唯一人を信じれていた時の子が
上田だと分かると、なぜか納得してしまった気がする。
まだ話たい事がいっぱいあるのに…。
上田の後ろに自分そっくりな人影を見た気がした。
その瞬間目の前が暗くなった。
ここは一体……。
上田と話たい事がいっぱいあるんだ。
早く戻らないと、今僕はどうなっているんだろう。
ただ思考だけが、回るが答えは浮かばなかったのだっ
た。
病院へと運ばれてから検査が行われた。
どこを調べても異常はない。
ただ眠っているだけだと診断された。
が、一向に目覚める気配すらない。
「これはどうなってるんですか?」
「それは、こっちが知りたいくらいだよ。いきなり倒
れたと聞いたけど、その状況をもっと詳しくいいか
い?」
「はい………いきなり刃物を持った…………」
上田はさっきの状況を詳しく説明した。
影以外を省略して話して行った。
そういえば、最後に霧島が言った言葉。
あれは、影を見て言った事だと思う。
なら、影が見えていたのだろうか?
病室に入っているが、影が出てくる気配もない。
いつもなら、同時に横にいるような感じだったのに、
今日はそれすらない。
もう出てこないのだろうか?
上田の記憶もはっきり思い出せた今、昔自分が庇った
相手が霧島だったと今ならはっきり分かる。
あの時負った傷が原因で、しばらく療養することにな
った。
元気になって退院した時には、彼はもう屋敷にはいな
かった。
そのまま会えないうちに顔すら忘れていった。
事故の時のショックで一時的に記憶障害を起こしてい
た上田にとって雅人の存在はあやふやで、不安定なも
のだった。
それから、記憶を探るように、何度か転校し彼を探し
たのだった。
きっと会えば分かる。
そう思いながら、あの日雅人と出会った。
きっとどこかで知っている気がした。
彼も、どこか引っかかる気がしたのも、お互い微かな
記憶のせいだったのだろう。




