16話
なぜ今日に限って、暴走族風の連中が多いのか?
その原因がネットでの呟きにあるとは、まだ誰も気づ
いていなかった。
顔写真と一緒に載せられた懸賞金の額に、我先にとこ
ぞって人生を棒に振る若者が集まったのだった。
「おい、これ、見てみろよ!」
「なんだ?何かあったのか?」
クラスの一人がネットに上がっている記事を見て気づ
いたらしい。
そこには、『賞金一千万円で写真の生徒を轢き殺せ』
と書かれていた。
そこに乗っていたのは紛れもなく、霧島雅人だった。
「おい、霧島っ!絶対に外に顔見せるなよ!」
「上田?何があったんだ?」
「それは……いや、知ってた方がいいな…これを見て
みろよ」
「……なっ……」
スマホの記事を見て、言葉を無くしていた。
それもそうだろう。
別に何かやったわけでもなく、ただ普通に生活してい
るだけなのに、こんな騒動に巻き込まれるのだ。
まるで、命を金で売買しているような気分だった。
「誰がこんな出鱈目を……誰が払うってんだよっ!」
確かにそうだ。
もし誰かが実行してしまったら、お金を出さないわ
けにはいかなくなる。
いっそ、この呟きの相手を突き止めれれば……。
と思いハッと顔を上げた。
今、霧島から抜け出て行く影が向かう先に、いるの
ではないか?
だが、今霧島から離れてもいいのだろうか?
今度のは一人から狙われているのとは違うのだ。
数十人から狙われているのを回避できるのだろうか?
不安になってくる。
「霧島、絶対に俺が帰ってくるまで教室から出るな
よ!」
「上田?おいっ……。」
一方的に言うと走って出ていってしまう。
霧島にも訳がわからない。
が、今日は悠長に構えてもいられなかった。ホール
ルームが終わり次第すぐに下駄箱に向かわなければ
電車に間に合わない。
これを逃すと、また家庭教師の先生を待たせる事に
なってしまう。
わかってはいる。
危険だと言う事は、見れば誰にだって分かる。
わかっていても、親には逆らえないのだ。
上田が戻るよりも早く先生が来てホームルームを終え
てお辞儀をした。
霧島は荷物をまとめると鞄を持ってそのまま出て行く。
まだ上田は帰ってこない。
「なぁ〜、もうちょっと待ったらどうかな?」
「いくら待っても一緒でしょ?僕は時間があるから行く
よ。上田にも伝えておいてくれるかな?」
「あぁ……まぁ、分かったよ、気をつけろよ?」
「うん、ありがとう」
久しぶりのクラスメイトとの会話だった気がする。
いつもは上田を介して話していたので、少し新鮮だった。
校門を避けて裏口から出てみると意外と人がいなかった。
そこから駅までちょっと遠回りだが、走れば間に合う。
小走りに走ると、急にこちらへとバイクの音が近づいて
きていた。
多分学校の周りを回っている人がいたのだろう。
避けるように脇道に隠れると、やり過ごしてから再び走
り出した。
ようやく駅に辿りついた時、後ろから大きな声が聞こえ
てきた。
「おい!アイツだ!殺せば一千万は俺のもんだぁっーー」
大声で叫びながら走るバイクに跨り鉄パイプを振り回して
きていた。
霧島は運動神経がいいわけではないし、強いわけでもない。
一般人程度で、全て平均…並程度なのだ。
軽くかわす事も簡単ではない。
振りかぶった鉄パイプが振り下ろされる直前、車輪が歩道
の段差に突っかかってハンドルがグリッと横を向いた。
勢いよく走っていたバイクは横転し滑るように交差点の中
まで滑っていく。
その後ろからきた大型車に押し潰されるように下に滑って
いった。
「助かったのか……」
「ここで死ねよっ……雅人…お前が死ねば親父が俺を認める
んだよ」
後ろから聞き慣れた声がしてふと振り返った瞬間。
目の前に包丁を持った永人が立っていたのだった。




