13話
許さない。許さない。許さない。
爪を齧りながら眉を歪めるのは霧島永人だった。
父親から言い渡された言葉に、憤りを感じていたから
だった。
『お前は今、どんな連中と一緒にいるんだ?ゴミダメ
で満足する気なのだとしたら、家からすぐに出て行
け!私の息子にそんなクズはいらん。雅人はギリギリ
合格点だな……兄と言っても血がやっぱり違うと、そ
の分腐敗してしまっていたようだな……』
永人だけの事を言っているのではない。
母親の事も言っているようだった。
雅人が殺したような同然の母親。
いきなり雅人を殺しにかかったと思いきや、自分で窓か
ら飛び降りた人。
なぜそのような奇怪な行動に出たのか?
誰も知らない。
ただ、飛び降りる寸前、振り向いて確かに言ったのだ。
『助けて……』
と。
永人にはそう聞こえた。
だったら、どうして身を投げたのか?
それは雅人に何か言われたからと考えた方が正しい気
がする。
そう思えば、思うほどに弟が憎く感じた。
雅人の中から、あの時の記憶は薄れているようだと感
じた。
新しい母親ともうまくやっているように見える。
「今日は遅かったのね?食事はどうする?」
キャサリンが聞いてくる。
まだ若く、化粧が濃い。
水商売の独特な匂いがする。
「くせぇ〜よ。どこの男を咥えてきたんだ?」
「嫌だわ〜、そんな事してないわよ?永人くんった
ら〜」
「その汚ねー口で名前を呼ぶなよ?気色悪りぃ〜な」
「……」
キッチンには食事の用意がされていた。
お手伝いさんが並べてくれたのだろう。
気に入らない!
こんな女が家にいるのも、弟が何食わぬ顔で家庭教師の
講義を受けているのも。
全部が、気に入らない。
いっそぶち壊してやりたくなる。
この家も。財産も。
全部、自分には何一つ入らないと思うと、使えるものは
今のうちに使ってもいいだろう。
家にある装飾品を持ち出すと、質屋に入れる事を何度も
した。
家にあまりいないキャサリンは多分気づかないだろう。
永人が何を持ち出して売っていても、さほど変わらない。
そう思うに違いなかったからだ。
今日もまた。別の男のところに行くのだろう。
父がいる時だけ家に頻繁に帰ってくるが、それも今だけ。
父だって、多分気づいている。
永人の事ですら、知っていたのだから…。
大学受験も余裕だと言ったが、そんなわけはない。
遊び呆けていた分、取り戻す事などできないほどに、学力
は遠ざかっている。
今から取り戻すのも無理だろう。
別に自由に使えるお金さえあればそれでいい。
そう、思っていた。
だが、それも厳しくなるのは本当に困る。
なら……いっそ、息子が一人しかいなければ済む話ではない
のか?
「そうだよ………俺だけしかいなければいいんだよ………父親
がなんだってゆーんだよ。息子は俺一人でいい………明日
にはそうなるんだよ……」
不適な笑いを浮かべると部屋に籠ってどこかへと電話をかけ
ると、ネットへと書き込みをしたのだった。
……たまたま偶然、この道を通る車がこの写真の人物を轢き
逃げしてしてしまったら………
1千万を差し上げます。弁護士も一流の人間を、こちらで手
配もします。




