11話
今から危害を加えようとしている生徒も粛清のうちに
入るのだと知った。
本人の知らないところで、勝手に起こる事はどうしよ
うもないと言いたいところだが、実際にはそうもいか
ない。
警察などの国の機関では名前が上がった生徒も捜査の
対象になり得るからだった。
「霧島雅人という生徒は今どこに?」
「それでしたら……確か一年の教室なので、案内しま
すね」
教職員は笑顔で案内すると言い出す。
多分今頃は保健室で眠っているだろう。
さっき上田と入れ違いに養護教諭が帰ってきていたし、
アリバイもある。
何か手を加えたとかは思われる事もないだろう。
あとは、もう一人の彼が見えている生徒が他にいるか
どうかだった。
今は上田のみのような気もする。
観察という名の霧島との友情計画が上田の中で着実に
進行していった。
どうにも気になるのだ。
背中にできた大きな傷。
この傷と共に忘れてしまった記憶を思い出したかった。
いつも夢に出る少年も影が二重に見えた。
たまに勝手に歩き出す影は本人には見えてない。
口うるさく話し出すと、同時に二人分の会話を聞くこと
になる。
「綾くん?聞いてるの?」
『綾、綾、あっちに行こう』
「ごめん、一人ずつ話して?」
「一人づつって、僕は一人だよ?」
『何言ってるの!それより向こうであそぼ、きっと面白
い事が起きるよ』
いつも影が話すと、何かが起きる。
事故だったり、爆発だったり。
いきなり階段から何かが落ちてきたりと、多分影が引き
起こしているのだろう。
それでも、彼のそばに居たいと思えた。
変わった気はしたけど、それでも一緒にいると楽しかっ
た。
でも…それも長く続かなかった。
彼の母親が凶器を持って、すごい形相で向かってきてい
たから。
逃す為に庇ったところまでは覚えている。
それなのに、彼の顔を思い出せないでいる。
今も、まだ、わからない。
上田綾はそれからというもの、身体が治ってからは筋肉
を鍛える事に精をだした。
今度はあんな無様な事がないように。
もし次があったのなら、きっと今度は彼のそばにいられ
るように。
「まずは彼の事を知らないとな……」
霧島雅人。
彼に詳しいだろう人物といえば、兄の永人だ。
だが、永人は三年で、素行も悪い。
怪しげな連中ともつるんでいるという噂まである。
先日から立て続けに亡くなっているのは彼の取り巻きの
生徒達だった。
何かあるのかもしれない。
きっと雅人をはめようとしているのは永人なのではない
だろうか?
そうなれば、影が狙う相手は………。
家族にまで手を出すだろうか?
無意識と言っても、血のつながった兄弟を手にかける
か…。
多分、見張れるのも上田だけだろう。
見えているのも、直接話したのも、今は上田だけなのだ
から…。




