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吸血鬼バンは今日も眠れない

作者: しゅうらい
掲載日:2023/03/13

 私は吸血鬼のバン。今はこのボロボロの洋館に住んでいる。ここは誰も近寄らないし、私の眠りを妨げる者もいない。今日も朝が来たので、棺で寝ようと開けてみると、もうすでに誰か入っていた。

「これは一体どういうことだ・・・」

 意味が分からず戸惑っていると、中の者と目が合った。

「お前ここで何をしている」

 私の問いに目の前の人物は口に人さし指を当ててしーっと言った。

「静かにして、見つかっちゃうじゃない」

「お前の他にも誰か来ているのか?」

「いいえ。私だけよ。かくれんぼをしているの」

「・・・楽しいか?」

「いえ、全然」

 こいつは何がしたいんだろう。早くそこから出て行ってほしいのだが。

「あ、私まだ名前言ってなかったわね。私はマナよ」

 マナという者は棺から身を起こすと、私の前に立った。よく見ると、まだ幼い五歳くらいの少女だった。

「私は吸血鬼のバン。マナよ、早くここから立ち去れ」

「なんで? 私まだ遊び足りないわ」

「ここは私の館だ。人の家に勝手に入るなと教わらなかったのか?」

「わかってるよ。でも、あなた人じゃないじゃない」

 確かに言われてみればそうだが、ここは引き下がる訳にはいかない。私はキッとマナを睨むと、低音で威嚇した。

「つべこべ言わずに早くここから立ち去れ!」

 さすがにマナもひるんだが、じっと私を見つめてきた。

「私行くところがないの。お願いここにいさせて!」

 私は威嚇をやめ、はぁーとため息をついた。

「お前には何を言っても無駄だな。私は寝たいから早くそこをどきなさい」

 するとマナはぱぁっと明るい笑顔になって、私に抱き着いてきた。

「ありがとう! バン、これからよろしくね!」

 いきなり呼び捨てか。私はお前より何百年も年上だというのに。まぁいい、これでようやく寝られる。私は棺の中に入り眠りについた。

 少したって棺をドンドン叩く音がして、私は目を覚ました。そして棺を開けると、マナと目が合った。

「なんだ、私はまだ眠いんだが・・・」

「だって退屈だし、私お腹空いちゃったわ」

「なら帰れば・・・。あぁお前は行くところがなかったな。ちょっと待ちなさい。今何か作ろう」

「本当! なら私も手伝うわ」

「お前は危ないから部屋で待ってなさい」

「・・・あなた意外に親切ね」

 私がまたキッと睨むとマナは、きゃぁと笑いながら別の部屋へと向かった。

「全く、どうしてこうなった・・・」

 私の呟きを聞くものは、そこかしこにいたコウモリだけだった。私が料理を作っていると、マナが入ってきた。

「こら、部屋で待っていろと言っただろう。なぜ待てない」

「だって部屋の中何もなくてつまんないんだもの。ココにいた方があなたともおしゃべりできて楽しいわ」

「私は邪魔されたくないんだがな。まぁいいだろう。そこに座っていなさい」

 私が椅子を指さすと、マナは大人しく従った。一応聞きわけはいいようだ。

「バン、料理は何を作ってるの?」

「一応簡単なスープだが?」

「えー! 私はオムライスが食べたいわ!」

「文句を言うなら食べなくていいぞ。幸い一人分しかないからな」

「ごめんなさい! 私はいい子です! ちゃんとなんでも食べます!」

「ふんっ。最初からそうしてればいいのだ。ほら出来たぞ」

 机に料理を並べると、マナはわくわくしたような顔で、スープを見ていた。

「いただきます!」

 そう言うと、マナはスープを一口食べた。

「おいしい! バンこれおいしいわ! あなたレストランでも出せるんじゃない?」

「大げさだな。しゃべってないで早く食べなさい」

「えー、他のみんなは楽しくおしゃべりするわよ?」

「そんなの知らん。私は静かに食べたいんだ」

 私がそう言うと、マナは少ししゅんとなって黙々と食べ始めた。少し言い過ぎただろうか。しかし、人間の言う事はわからんな。それからはお互い何もしゃべらずに食事が終わった。

「ごちそうさまでした」

 マナはそう言うと、さっさと食器を片付け始めた。

「・・・何をしている?」

「洗い物は私がするわ。それくらい出来るもの」

 それからキッチンの洗い場に持っていき、ガチャガチャと洗い出した。おいおい、もう少し静かに洗えないのか。私ははらはらしながら見ていると、案の定ガチャンと音がした。マナが食器を落としたのである。

「ご、ごめんなさい! すぐ片付けるから!」

「待ちなさい。欠片を素手で触るつもりか。ここは私がやるから、もう部屋で待ってなさい」

 マナはまたしゅんとなって、とぼとぼと出ていった。全く、余計な仕事を増やしてくれたものだな。私は、はぁーとため息をついた。そして、全部片づけ終わると、私もマナのいる部屋まで戻った。ドアを開けると、マナが泣いていた。なぜだ。私がドアの付近で固まっていると、マナがこちらに気づいた。

「あ、おかえりなさい」

「・・・なぜ泣いている」

 マナは、はっと気づいて慌てて涙をぬぐった。

「こ、これはなんでもないの!」

「もしかして先ほどのことか?」

「だってちゃんとしないと追い出されると思ったんだもの」

「ふんっ。私の眠りを邪魔しなければ追い出したりはせんよ」

「・・・本当?」

「あぁ。だが、それを守らない時は問答無用で追い出すからな」

 私がそう言うと、マナは笑顔になりまた私に抱き着いた。

「ありがとう、バン! 大好きよ!」

 その言葉に私はどこかくすぐったい気持ちになったが、これからもこの少女が私とともにいてくれることを、少しうれしく思ったのはこの少女には内緒だ。


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