29.激痛
魔獣を見ると既にこちらに突進して来る様な構えを取っていた。
ここだっ! 次の攻撃を躱した後、反撃に移る。
先程と同じ様に突進して来る様であれば先ずはその攻撃を躱す。攻撃を躱された魔獣は勢いのまま俺の横を通り過ぎ、そして必ず再び俺と向き合う為に方向変換するはずだ。
確かに魔獣の動きは速く、俺はそのスピードに付いて行くのは無理だ。だが、方向変換する時は必ず一度止まら無ければならない。その瞬間を狙って一撃を喰らわせてやる!
魔獣は俺の予想通りに猛スピードで暴走するトラックが如く真っ直ぐにこちらに向かい突進して来た。
集中力を高め、向かって来る魔獣の突進をギリギリの所で躱す!
ここまでは予想通りっ! 通り過ぎた魔獣を追撃し方向変換の為に動きが止まった所に一撃を与える……
はずだった……
通り過ぎた魔獣を追撃しようと振り返ったその場所に魔獣は背を向けたまま立ち止まっていた……
「!!?、しくったっ……!!」
予想外の出来事に一瞬身が固まった。そしてその一瞬は致命的であった……
蹴り上げられた魔獣の後脚が目の前に迫っていた……
メリメリ……メキッ……
その音は耳からでは無く、身体の内側から聞こえてきた。
「ぐなぁぁぁぁああああっ!!」
やっちまった……やっちまった! マズイ、マズイ、マズイ!!
咄嗟に最初の攻撃を躱した時の様に自分自身に突風の魔法を放ったが、一瞬の判断の遅れの為に攻撃を躱しきれなかった。
ガードした右腕と肋骨辺りに激痛が走る……
攻撃を読まれたのか? それとも野生の勘と言うやつか? ここに来て漸く気付く……
この魔獣……強い……
いや、強いと言うのは最初から分かっていた。この魔獣、戦闘センスというか、戦いに関しての勘が馬鹿みたいに高いのだ。
考えが甘かった……エリーナが魔獣を簡単に倒したという話を聞いていたし、自分の記憶にある青年も少女を連れて魔獣を倒していた。
ならば自分にもと思っていたがとんだお門違いだ。エリーナにしても、その記憶の青年にしても人の枠を超えた力があったからこそ倒せたのだ。
逃げるべきだった……
しかし、その事に気付くのが余りにも遅過ぎた。深手を負った今、逃げる事すらも不可能となってしまった……
「ヒュー……ヒュー……さて……どうしたもんかね……」
呼吸するだけで脇腹に激痛が走る……
面白いと思って……(以下略




