25.余計な思い付き
魔力操作の扱いを教わるとエリーナとシルフィーに見守られながら再び薬品の調合に挑戦する。
集中し先程教わった魔力操作を思い出し、容器の薬品を混ぜ合わせてみる。
「魔力量が少なすぎじゃ、もう少し魔力を込めよ」
「はい!」
言われた通りに魔力を込めてみると「ボンッ!!」と爆発音と共に容器から煙が上がる
「魔力を流し過ぎじゃ、だがまぁ最初はこんなもんじゃろ」
いや、なにこれ? 魔力の調節めっちゃムズいんですけど……
「魔力の扱いに慣れた者でも一つの薬品作れるようになるまで最低半年はかかるのじゃ、筋の良い者でも三〜四ヶ月はかかる。焦らずやる事じゃの」
確かに焦る必要は無いのだが、このままだとエリーナとの進展も見込めない。あと少しという感触はあるのだが、関係がもう一歩進む様な何かが欲しいのだ……と、ここに来て余計な事を思いついた!
「師匠っ! もし薬品作り、ひと月で出来たらご褒美下さい!」
「断るっ!」
「早っ!!」
「今言うたであろう? 焦る必要は無いと。ぬしが一人前になる迄じっくり教えてやるから安心せい。それにぬしとの勝負は嫌な予感しかせんしの」
おいおい……おいおいおいおい、それじゃ話がまたクソ進まないじゃないのさ!
仕方ない、ならば味方を付けて引き受けさせるか……
「そこをなんとか!今回はもし失敗したらシルフィーとの隷属の契約を破棄します」
そう言うとそれまで俺達の会話を全く興味無さげに聞いていたシルフィーの目が急に輝き出す
「えっ? ホントっ!? エリーナっ!受けてっ! クライドとの勝負受けてよっ!!」
クククッ、チョロい妖精だぜっ
「そんな物わっちには関係の無い話じゃ、引き受ける道理にはならん」
「そんな事言わないでっ、ぼくが少しでも可哀想だと思うならぼくを助ける為だと思って」
「こやつは欲が絡むと一見無理な様な事でもやってのけるような男なのじゃぞ、そんな物受けとうない」
ん? それは褒めてるのか貶してるのか……?
「そんなの簡単だよ! 絶対無理な条件にしたらいいじゃんっ!」
おいっ! クソ妖精っ! 余計な事言うんじゃねーっ!!
「確かにそうではあるんじゃが……」
「あっ、そうだ! クライド、ご褒美って何? それが分からないとエリーナも勝負受けてくれないよっ」
「あぁ、そうだったな。今回俺が師匠に求めるご褒美は一晩だけでいいから師匠と一緒のお布団で寝る事です!」
「なっ……」
「えっ? それだけ? 全然大した事無いじゃんエリーナ、受けてよっ」
「冗談では無いっ!! そんな事すればこやつに何をされるか分かったもんじゃ無い!」
「いやいやいや、何もしませんから! 本当に一晩寝るだけですから」
「エリーナ強いんだからクライドが何かしてきたら燃やしちゃえばいいじゃん」
なんて物騒な事を言う子だい!
「それに……あの日の事クライドに知られたくないんでしょ……?」
「うっ……」
おいおい……この子『破滅の魔女』を脅し始めたぞ……
「お願いっ、エリーナ! ぼくを助ける為だと思って」
ふんっ! アホ妖精めっ、ひと月以内に薬を作れば隷属の契約は継続なんだよっ
「仕方ないの……引き受けよう……」
キタキタキタキタキターーーーー!!! でかしたシルフィーっ!!
「但し、課題とする薬品は五つ。活力剤、傷薬、解毒薬、眠り薬、痺れ薬じゃ。これをひと月で完成させれば合格じゃ」
うはっ! クソ妖精のせいで条件めっちゃ厳しくなってますやん
「分かりました、ひと月でそれら五種類の薬品を作って見せます。失敗すればシルフィーとの契約解除します」
ともあれエリーナが勝負を受けてくれたのだ。やるしか無い!
「ねー、ねー、エリーナどうなの? 難しいの? 簡単に出来ちゃったりしない?」
「先にも言うたであろう? 筋の良い者でも時間がかかる、ましてやクライドは魔力操作を覚えたばかりでひと月でこれら薬品を作るのはほぼ不可能なはずなのじゃが……」
「じゃ、大丈夫だね! これでぼくも自由の身になれるぅー!! ひゃっほーいっ!」
浮かれはしゃぎ部屋中を飛び回っているシルフィーに
「おいっ! シルフィーっ! あとひと月は俺の隷属なんだ、薬品作り手伝って貰うからなっ!」
「げっ……」
「師匠、いいですよね? 薬草採取にシルフィー力を借りたいのですが。それと活力剤以外の薬品作りのために本を読む事も許可して欲しいです」
「まぁ、良かろう。本を読まねば作り方も分からんじゃろうしの。ただ、わっちは何も教えぬし、助言もせんがそれで良いか?」
「はい! 問題ありません」
よし、上手く行ったぞ! これでひと月て薬品作ればエリーナと一緒のお布団で……ムフフフ……
俺が妄想に浸っている様子を見てシルフィーは急に不安になった様で
「エリーナ、本当に無理なんだよね?」
と聞くと
「己の欲の為には無理と思える事もやりかねんと言うたであろう?」
とエリーナは諦めた様な表情で答えていた。
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