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17.エリーナの憂鬱

エリーナ視点のお話です


「妙な男を拾ってしまったもんじゃ……」


エリーナは後悔していた。


この男と出会ったのは薬草採取の帰りであった。山道で冒険者らしき少年が行き倒れている所を通りかかった。

魔力を感知してみたが反応は無い。完全に死んでいるようだった。


「まぁ、残念じゃが手遅れじゃったの」


そう思いその場を立ち去ろうとした。


その時だった。


完全に死んだと思ったその男に魔力が宿ったのだ。

有り得ない事だった。つい先程確認した際は確かに男に魔力は感じられず完全に死んでいた。


この世界で死んだ人間を生き返らせる手段は無い。いや、一つだけ教会が持つ神具だったか? 大量の魔力と引き換えに死者蘇生が確か可能だったはず。

しかしそんな物はここには無いし自分以外に人はいない。何が起こったのか理解出来ずにいた。


頭の整理をしていると、その男が僅かに動いた。そして近くに自生してした『一殺草』

を手に取り口に入れようとしていたのだ。


『何をしておる? これは毒草じゃ、食えばしぬぞ』


思わず駆け寄り、彼の手から毒草を取り上げる。

死霊でも取り憑いたのかとも思ったがそんな様子も無く、確かに人間として生きていた。400年以上生きてきた中でこの様な出来事は初めてであった。


男は衰弱仕切っており再び宿った命は今にも尽きそうであった。

とりあえず水を飲ませ食料を与える。そして持参していた栄養剤を飲ませると、一命は取り留めた様であった。


その行為はほんの気まぐれ。確かに死んだ者に再び命が宿ったことに驚きはあったが、一命を取り留めたこの男がこの後、再び野垂れ死のうがどうなろうが興味が無かった。


男が何か話しかけようとしていた。礼を言っている様だった。

ただ、礼など言われた所で自分が出来る事はここまで。それ以上この男に関わるつもりは無かった。


そして男と目があった時、彼から発せられた言葉は予想外の言葉であった。


『美しい……』


このような言葉をかけられたのはいつ以来だろうか? 不老不死の体となり、また膨大な魔力を持つ自分は人々からは恐れられる存在であった。


中にはその力を利用しようと近寄って来る者もいたが、いずれもその目は濁った目をしてその魂胆が透けて見えた。そういった人間ばかりを見てきた。


しかし、この男は真っ直ぐな目で「美しい」と言い放ったのだ。そしてこの男の心も透けて見えた……


この男は単純に思ったままを口にしたのだ。


動揺した。


これ以上関わりたくなかった。その場を立ち去ろうと思った時、男は名前を聞いて来た。


『わっちはエリーナじゃ、あの破滅の魔女と呼ばれ恐れられておる魔女エリーナじゃ。分かったなら早々に立ち去れっ』


こう言えばこれ迄誰しもが青い顔となり逃げ去って行った。そしてこの男も同様に立ち去って行くだろうと思った。


それなのに、この男はそれを聞いても恐れる様子が無く、それどころか弟子にと志願してきたのだ。この男の正気を疑った。

弟子の件は断り、この場を立ち去ろうと思った。この男との会話はどうも調子が狂う。


だが男は必死に食い下がる。ならば一晩だけと。


断るつもりだった。こんな素性も分からぬ男を招くつもりなど無かった。

しかしあまりにも必死に見つめる視線に根負けしてしまった。


『一晩だけじゃぞ……』


彼の名は『クライド』と言った。その若者は異世界より転生したとの事だった。にわかには信じられない話だったが、死んだはずの体が再び命が宿った事に一応の説明がつく。


だがその話を聞いた所で特にそれ以上の興味は無かった。一晩経てば相手は出て行く。そういう約束だった……はずだった……


それなのにクライドはもう暫くこの家に居させてくれと言ってきた。薬の知識を教えて欲しいと。その間、家事や雑用何でもするからと頼み込んでくる。


断るつもりだった。一晩だけ泊めた後は彼には出て行ってもらい翌日からはいつもの生活に戻る。


いつもの様に一人で起き、一人で食事をし、一人で薬草採取や薬品の調合。一人で風呂に入り、一人で寝る。そんないつもの生活に戻るはずだった。200年以上そうしてきた。そんないつもの生活に戻るだけ……


なのに自分の口から出た言葉は


『何でもするんじゃな……?』


と彼がここで暫く暮らす事を認める様な言葉だった。どうも彼との会話は調子が狂う。こんなはずでは無かった。助けたのはほんの気まぐれ。それで終わりのはずだった。

なのにいつの間にか彼と暫く一緒に暮らす流れになってしまった。


面白かったら『いいね』よろしくお願いします!


正月も終わりやー

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