10.出会い
翌朝、早くに目が覚めた俺は早速、朝食の準備に取り掛かる。
丁度、料理が出来上がった頃にエリーナが起きてきた。
「あっ、おはようございます師匠!」
「ぬしは朝が早いようじゃのぅ……」
まだ寝ぼけ眼のエリーナは普段の凛とした雰囲気とはまた違った別の可愛さがあった。
「時間が惜しいですからね。食べたら直ぐに森に行っていいですか?」
「別に構わんが、ぬしは本当に全て採取出来ると思っておるのか? この辺りで採取出来るのは間違い無いが、そんな簡単に採れるもんでも無いぞ」
「分かってますよ、だから早くに行きたいんです。ずっと師匠と一緒に居たいですからね」
「ぬっ、ぬしは朝からようそんな事、恥ずかしげも無く言えるの……」
「恥ずかしがる事なんて無いですからね。ささっ、食べましょ!」
そう言って二人で食事をとり始めた。
「師匠は俺が探せない方がいいと思ってます?」
「い、いや、そう言う訳ではないが……、昨夜わっちが風呂に入っておる間に図鑑を読んだだけであろう? どこからそんな自信が出てくるのか不思議での」
「まぁ、この身体に多少の薬草採取の記憶はありますから」
「なるほどのう……じゃがそれだけで上手く行くとも思えんがのう」
「心配してくれるなんてやっぱり師匠は優しいですね。それより師匠、忘れないで下さいよ、ご褒美の件っ!!」
エリーナなハッとした顔になり
「おっ、覚えておるわ! じゃがぬしこそ忘れるなよ! 失敗すればこの家から出ていく約束を! ぬしが出て行けば安心してゆっくり風呂にも入れるようになるし、清々するわい!」
俺はちょっと可笑しくなった。
「師匠は嘘をつくのが下手っすね」
食べ終えた食器を片付けながらそう言うと、エリーナはムキになったようで
「嘘では無い! ぬしの顔など見とうない! はよう採取に行けっ!」
そう言って家から追い出されるような形で採取に向かう事となった。
(本当に素直じゃないなぁ……でも、そこもまた可愛いとこなんだけどね)
そんな事を考えながら森の奥へと入って行った。
薬草の採取は順調に進んでいた。読んだ図鑑にはそれぞれの植物が生息しやすい場所なんかもちゃんと記載されていたので、活力草、目覚まし草、解毒の実は結構早い段階で見付ける事が出来た。
「夢見草って確か綺麗な水辺に自生してるって書いてあったよなぁ……」
図鑑に書かれていた事を思い出しながら歩いていると小さな小川が流れている場所を見付けた。
探索してもうかなりの時間が経っていた。森中を歩き回っていたため、身体中ヘロヘロではあったが、日暮れまでという時間制限がある為、ゆっくり休んでいる暇は無かった。
水辺に着き、注意深く辺りを見渡すと
「あった! 夢見草だっ! これであと一つ、幻想茸だけだ」
残り一種類だけになり少し心に余裕も出来、少しだけこの水辺で休憩する事にした。
小川の綺麗な水を飲んでいると
「きゃーーーっ!! 助けてぇーー!」
とどこからともなく女性の声が聞こえてきたっ。急なイベント発生である! 声の主は女性! ここで俺が助けに入ってのハーレムコース確定演出じゃねーか! なんとしてでもこのイベントをクリアしなければっ!
そう思い急いで声がした方向へ向かい辺りを見回してみるが、どこにも人影が見当たら無い。
「どこだっ!」
「うそっ!? 来ないでぇー!」
との声。ん? 行かない方がいいのか? 行くと実は不味かったりする? どうするのが正解なんだ?
「お願いー!! 助けてーー!」
畜生っ! どっちだよっ! 助けて欲しいのか、来て欲しくないのかハッキリしろっ!!
しかも声はすれど姿が見えない。
「嫌ぁああっ! 来ないでーっ!」
と更に声が聞こえてくる。声がしてきた方向は上からだった。そして俺が上を向くとそこには蜘蛛の巣に絡まり、今にも蜘蛛に食べられそうになっている手の平サイズ位の妖精の姿があった。
「ちょっと、君っ! お願い!! 助けてぇー」
妖精も俺に気付いたようで助けを求めて来た。蜘蛛の巣は俺の手が届く場所であったために腰からナイフを抜き
「ていっ!」
と今にも妖精を食べようとしていた蜘蛛をあっさりと真っ二つにした。
「ありがとう! とても助かったよっ! 出来ればボクをこの糸から引き離してくれない?」
俺はかなりテンションが下がった。薄緑色の肩まで伸びた髪の毛、可愛らしい顔立ちで背中には羽も生えてファンタジー要素は十分なのだが……
十分なのだが、こんな小っせい妖精なんかとはニャンニャン出来ないじゃないか!
「お願い! この糸、ボクの魔力を吸収しちゃってこのままだと全然動けないんだ。だからお願い、助けてっ」
昨日ちょっとだけ読んだ昆虫図鑑に載ってた『デッドスパイダー』だったかな? 確かその糸は魔力を吸収して魔道具の材料にもなるとかなんとか……
どうしたものかと蜘蛛の糸に絡まれてる妖精を見上げながら考えていると
(ん? あれは……?)
〈ピコーン! またまた余計な事を考えた!〉
「よし、助けてやる代わりにお前、俺と隷属の契約を結べっ!」
昨日、エリーナとの会話でそう言う契約を結ぶ魔法がある事を思い出した。
「なっ! 何言ってるの? そんなの嫌だよぉー! 他に出来る事ならなんでもするからぁー」
「ほう? じゃお前、何が出来るんだ?」
「ボク、風魔法が使える!」
風魔法は自分も使えるし特に必要性が無い。というか俺が求めてる答えはそういう事じゃない!
「他には?」
「えーっと、えーっと、そうだっ!! お花を咲かせたり出来るよっ」
クッソ使えねーな、オイッ! てかそう言う事じゃねーし!
「よし、分かった! お前はやっぱり俺と隷属の契約結べ」
「いやーっ! お願い! それだけは勘弁してっ!! あっそうだっ、回復魔法っ! ボク、回復魔法も使えるからっ」
「あいにくと今、俺はどこも怪我して無い。だから隷属契約して俺が怪我した時にそれを使え」
「そんなぁー」
妖精は涙目になっていた。
「ちなみに上見てみ」
俺は上空を指差す。そこにはトンビがグルグルと旋回していた。
そして、俺は先程切り捨てた蜘蛛の残骸を空高く放り投げた。
シュバババッ!
トンビは素早い動きで急降下して来、俺が放り投げだ蜘蛛の残骸をタイミング良く嘴でキャッチした。
「ヒャッ! えっ? 嘘っ? まさかっ! 嘘でしょ?」
俺は妖精を摘み、更に残っている蜘蛛の糸で妖精を巻き付け動けないようにする。
「最後のチャンスだ、契約結ぶか? どうする? トンビはまだ満足してないようだぞ?」
俺は上空を指差す。トンビはまだ上空を旋回していた。
俺は蜘蛛の糸でグルグル巻きにした妖精を空に投げる体勢に入る
「分かったっ!! 分かったよ! 契約結ぶから投げないでぇー!」
「よし、交渉成立だなっ! 俺はクライドだ。お前、名前あるのか?」
「ボクはシルフィーだよぉー、ふえぇぇぇん、変な人に助けられちゃたよぉぉぉ」
「そりゃとんだ災難だったなっ!」
幻想茸の採取がまだ残っていたが、ここはシルフィーの気が変わらないうちに契約を結んでおこうと考え、一度家に帰りエリーナに隷属の契約を結んで貰おうと思い急いで家に向かった。
面白かったら『いいね』よろしくお願いします!
寒い……




