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9.優しさに包まれて

夕食をとりながら俺はエリーナに他の色々な事を聞いた。どんな薬が作れるのか? 薬の種類はどれだけあるのか、魔法についても色々と聞いた


「あっ、明日の予定は何かあるんですか?」


食事を終え、食器を片付けながらエリーナに聞いてみた。


「明日は薬草採取かの、また薬品を作らねばならんでな」


「ご一緒させて頂いても?」


「まだ無理じゃな、足でまといになるだけじゃ。ぬしはこの本を持ってこの辺りに生えとる植物でも調べておれ」


と一冊の本のを本棚から抜き俺に渡したてくれた。それは植物図鑑だった。


「まずは植物の種類を覚えねば話にならん。そしてどの植物がなんの薬になるかを知る所からじゃな」


「はい!分かりました!」


俺は渡された本を開き読んで見る。植物の名前とその絵が書かれていて、俺にも十分理解出来る内容であった。


「では、わっちは風呂に入って来る……が! 昨日の様な事をするでないぞっ!! 次は本気で殺すからな……」


「はははっ、流石にもうやりません……まだ死にたくないんで……」


エリーナの目が座っていた。あの目は確実に人を殺す時の目だ。冗談が通じないやつだ!


「絶対じゃぞ! 脱衣場にも入ってくるなよ!わしには魔力探知で主の行動は見えておるからなっ!」


なんと! 魔力探知とな!昨日タイミング良く現れたのはその為だったか!


「本当に大丈夫ですってば! 大人しくこの本読んでますからっ」


疑いの目で俺を睨みながらエリーナは脱衣場へと消えて行った。

ここで覗いたり昨日と同じ様なことをしてしまえば本当に命の危険に関わると俺の本能が警告を鳴らしていたので、大人しく先程渡された植物図鑑を読むことにした。


図鑑の中には前世では見た事無い様な植物が沢山の載っていた。

活力草や眠り草、忘れな草や目覚まし草。草花だけでは無く、痺れ茸や幻想茸などのキノコ類、他に誘惑の実や解毒の実なんかの木の実まで様々な種類の植物が載っている。


俺はこの本を夢中で読んだ。

俺は一度ハマればとことんハマるタイプの人間だ。前世もそれで二次元の世界にどっぷりハマり命を落した。


更に記憶力もある方だと思ってる。アニメキャラの登場人物の名前を一度見て覚える事なんて朝飯前。

日曜の朝方に放送されてた変身幼女シリーズの一作目からの登場人物を全員言える位は当然の嗜みのように覚えた。


途中からは本棚から昆虫図鑑を取り出し読んでいるとエリーナがお風呂から出てきた。


「ほう、どうやら本当に大人しくしておったようじゃな」


「いやー、なかなか興味深くて読みいっちゃいましたよ」


「どうだかのぅ、本を読んでる振りしてまた良からぬ事を考えておったんでは無いか?」


「失礼ですねっ、俺だって真面目に本を読む事ぐらいありますよっ!」


「ほう、ならば明日わっちが指定した植物を採取してこれるか?」


「高い山の上に咲く幻の花とかは無理ですよ」


「安心せい、この近くで採取出来る物にするわい」


〈ピコーン!! 余計な事を思いついた!〉


「じゃ、師匠!! もし師匠が指定する物を採取出来たらご褒美下さい!」


「何か欲しい物でもあるのか?」


「物ではありません! 師匠の足を舐めたいですっ!!」


「は……? やっぱり、ぬしはただの阿呆じゃったか……。却下じゃ」


「足が駄目なら手でもいいです! ご褒美があった方が俺もやる気が出ますし」


「ぬしがやる気を出した所でわっちにはなんの得にもならんじゃろ」


「えっ? やる気が出て薬の知識を早く覚えればその分、俺はここから早く出て行けますよ? 師匠は俺が早く薬の知識を覚えてこの家から巣立って欲しいんじゃないですか?」


「いや、まぁ、確かにそうじゃが……」


よし!ちょっと言葉に詰まったぞ!! あと一息だっ!! 押せっ! ここで一気に攻め落とすんだっ!


「もし、指定した物を採取出来なかったら、その時点で俺はこの家から出ていきます!」


どうだっ!?


「…………ほう? そこまで言うのであれば良いじゃろう」


受けた!! この勝負受けおったぞ!! エリーナの手を舐められるぞぉい!


自信はある。この世界の植物は全体的に特徴があったし、図鑑も集中して読んだので頭の中にしっかりインプットされてる。


不安があるとすれば図鑑に載ってるのは写真では無く手描きの絵だったので実物との見分けが付くかどうかであるが、この身体も元は冒険者で薬草採取の経験はあったのでなんとかなりそうだと思った。


「では採取する植物はなんにされます?」


「そうじゃな……活力草、夢見草、目覚まし草、幻想茸、解毒の実じゃ。それを明日の朝から日暮れまでの間に採取してくる事。あと今から図鑑を見るのは禁止とする。どうじゃ?」


大丈夫、覚えてる! この身体の記憶の中で薬草採取の経験がある物もある。五種類とは予想外だが何とかなりそうだ。


「確認ですが、それ等はこの辺りで採取出来る植物なんですよね? あと季節外れで今は採取不可能な植物とかもないですよね?」


「無論じゃ。全て今の時期にこの辺りで採取可能な物ばかりじゃ」


「やりましょう」


なんと言うか、決して楽な条件では無いが真剣にやればちゃんと採取出来そうな物を選んでるあたりがエリーナらしいなと思った。


その後、俺はエリーナに風呂に入る許可を貰い入浴した。風呂から出るとエリーナは何か飲みながら本を読んでいた。


「何を飲んでるんです?」


「ん? ただの紅茶じゃ。ぬしも飲むか?」


「はいっ! 頂きますっ!」


そう返事をするとエリーナは俺の分の紅茶を

淹れてくれた。一口飲むと茶葉の甘みと香りが口いっぱいに広がり至福の一時を味わえた。前世においても高級な部類に入る程の紅茶だと思える。


「香り豊かで凄く美味しいですね! これも今日買って来たんですか?」


「いや、これはわっちが裏庭で育てた茶木から葉を摘んで薬品作りの合間に自分で作ったものじゃ。街の紅茶は香りがせんでの」


「凄い!! こんな物まで作れるんですね! 作り方教えて下さい」


「明日、わっちの言うた植物の採取をして来れたらじゃな」


ohっ!! そうだった! 明日採取に失敗すればこの家を出ていくと言ってしまったんだった! これはなんとしても明日の試験は成功させねばっ! 負けられない戦いがここにあった。


「さて、飲んだら寝るぞっ。 ぬしの寝床を作っておいたでそこで寝るが良い」


そう言ってエリーナが指を差した先には確かに人が寝れるようなスペースが部屋の隅に作られていた。藁の束の上に布が敷かれただけの簡易的なベットであったが床に寝るよりかは遥かに快適だ。


感激のあまり泣きそうになる。


「あの……師匠……」


「なんじゃ? 床よりマシであろう?」


「大好きです……」


心からそう思った。エリーナの優しさに本気で惚れた。確かに最初は見た目の美しさで好きになったが、今は違う。内面的な優しさに心から好きになった。


「きっ、き、貴様は何を突然言うておる! わっちはもう寝るぞっ!!」


エリーナは顔を真っ赤にして怒りながら寝室へ入って行った。


意外とウブなんだな……


そんなエリーナと一緒に暮らすためにも明日は何としてでも指定の薬草を採取しなきゃ……

そう思いながらその日はエリーナの優しさに包まれながら眠ることにした。



面白かったら『いいね』よろしくお願いします!


Twitterてさ、怖いね……いや、何があったって訳でも無いんだけどさ

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